初めての看病
ある日
朝食を準備して待ってると、いつもの時間になっても栄仁が現れなかった。
どうしたのか、様子を見に行こうかと立ち上がったら栄仁が入ってきた。
「遅かったじゃない〜!今朝はゆで卵とお隣のヨンスンさんから貰ったパンと...って栄仁!?顔真っ赤だよ!?」
栄仁は顔が赤く、フラフラとしていた。
まさかと思って近づき、おでこに手をつける。
「あつっ!熱があるよ!」
「問題ない。今日は島のものと祭りについての会議があるんだ。」
フラフラしながら出かけようとする栄仁さんの腕を掴む。
「今日は休んで!熱があるのに働いちゃダメよ!ほらお布団へ行きますよ!会議のことは私がなんとか...うーん...来儀さんに伝えてなんとかしておくから!」
嫌がる栄仁の腕に抱きつき、無理やり布団に寝かせた。
「いつも思うが...お前は距離が近すぎる。他のやつにもそうなのかよ......」
他のやつって何の話だろう。
「どういう意味?」
「い、いやなんでもない。......さっきまで寝てたから寝れん。」
なんだかさっきより顔が赤くなってしまっていた。熱が上がったのかもしれない。
「寝ないと治らないよ!そーだ!子守唄歌ってあげるよ」
「子守唄?」
「うん。こども……じゃなくて、えーと大人も子供も、眠れない時に聞くとぐーっすり眠れちゃう歌があるの!」
栄仁さんは相変わらず眉間にシワは寄せてるが、気になるみたいでこっちを見てきた。
ふふっ、前は分かりづらいなんて思ったけど、意外と顔に出やすいんだな〜
『♪』
私はゆっくりと優しく歌を歌った。
小学校の時習った故郷を懐かしむ曲なんだけど、なんだかこの島にぴったりだって思ってたのよね。
「こんな風に、誰かに看病してもらったのは久しぶりだ.........お前の歌は.........お前の優しさが、滲み出ている」
そう言って栄仁は、すぅすぅ寝息を立てて寝てしまった。
え、お前の優しさが滲み出てって.........
顔中に熱が集まってきたのが分かる。
綺麗とか好きだとか、そういう言葉じゃないのに、栄仁がそんなふうに思ってると考えただけで恥ずかしくなってしまった。