職探しをはじめよう
栄仁が焦っていたように見えたのもつかの間、洋服屋につくころには元の無表情に戻っていた。
ただ、お店に入る時にエスコートしてくれたりと少し優しくなった気がする。
異世界っていうのを信じてくれたのかもしれない。
連れてきてもらった洋服屋は、こじんまりしていたが、綺麗な生地が壁に沢山かかっていた。
「わーー!すごい...!どの服も素敵だわ。韓流ドラマで見たやつみたい!」
思わず店内をキョロキョロ見渡していたら奥からお店の人が出てきた。
「いらっしゃいま……、ってあれ栄仁じゃん!久しぶりだな。……その子は?」
「ちょっとな。来儀、服を何着か適当に見繕ってくれ」
「はいはい。すぐ仕上げるよ。ただ、栄仁が女の子を連れてくるだなんて……ああ、涙が出そうだ」
「うるさい。さっさと見繕ってくれ」
知り合いなのかな。
「こんにちは。栄仁の昔からの友達の来儀です。」
差し出してくれた手を握った。ちょっとチャラそうで、栄仁とは違うタイプのイケメンだった。
「初めまして!朱里といいます。栄仁に拾ってもらって今は一緒に住んでます!」
来儀さんが吹き出して笑っている。
「何この子超おもしろいね。ツボなんだけど!というか同棲してるんだ!」
「いいから早くしろ。同棲じゃない同居だ。あとそれ離せ。」
栄仁は来儀さんと繋いでいる私の手をぐっと引っ張った。
あれ、馴れ馴れしすぎたかな。
そんな失礼な態度にもかかわらず
来儀さんは、へ〜といいながらニヤニヤしていた。
栄仁は相変わらず冷たいけれど、来儀さんと話しているときは、穏やかな表情をしていて2人は本当に仲が良さそうだった。
無事何着か購入でき帰宅した。
さすがに全て買ってもらうことに気が引けた私は、次の日から職探しをはじめることにした。
栄仁は家事をやってくれているから、働く必要はないと言ってくれたけれど、労働してないと落ち着かないのよね。
それにやっぱり生きるにはお金!お金が必要よ!
読んでいただきありがとうございます。
次回洋服屋の話の後、職を見つけます。