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お祭りがはじまった


ついにお祭りの日がやってきた。

栄仁さんはというと、あの時のキ、キスがまるでなかったかのように、あれからいつも通りだった。

夢だったんじゃないかと何度も思ったが、妙にリアル

で混乱していた。


島には初日から多くの人が来ていて、大賑わいしていた。

いつも空いている喫茶店もお昼時は満席のようだった。

あのレストランの件から私は、栄仁をいつも以上に意識してしまっていた。

少しでも可愛く見られたいなんて柄にも無いことを思ってしまい、今日は髪をお団子に纏めてみた。

工場勤務の時は、なるべく邪魔にならないようにキツく縛っていただけだったのに、恋の力は偉大だ。


合唱練習まで暇だった私は栄仁がいる警察署へ向かっていた。

「あ! 栄仁だ!」

はあ、相変わらず今日もかっこいい。

遠くからでも分かる抜群のプロポーションに胸が高鳴る。

ウキウキと近づいて行ったが、隣にいる人をみて思わず足を止めた。

サラサラの髪の毛に切れ長の瞳。おまけにピッチリとしたミニ丈のチャイナドレスからスタイルの良さが滲み出ている。

モデルみたいな美女が隣に並んでいたのだ。


呆気にとられて物陰から暫く見ていると

「あれはシャンオンだよ。栄仁の幼なじみで、雪島一の美女。親が金持ちのお嬢様で、成績優秀、スポーツ万能、おまけに昔から栄仁にベッタリ。あれは強敵だぞ」

「お、幼なじみ......!?」

突然上から声がして、はっ顔をあげると来儀さんがいた。

「びっくりした、来儀さんか〜!」

「久しぶり、アカリちゃん。」

シャンオンさんは栄仁の腕に絡まってなにやら2人で話し込んでいた。背丈も同じくらいで顔と顔の距離が近かった。

女の子に慣れてないはずの栄仁さんは、私といる時と違い、緊張している感じも、目を泳がせたりもしてなかった。

「強敵も何も......勝てるところが見当たらないのですが......!!」

来儀さんはケラケラ笑って言った。

「アカリちゃんの良いところは、その前向きさと一生懸命さと、おっちょこちょいで子供みたいなところでしょ。がんばりな!」

あれ、褒められてるのか......まあいいか。

「がんばりますっ! 突撃していきます!」

頑張れという来儀さんの言葉が聞こえる中、

私は栄仁のもとへ走り出した。


「栄仁! お疲れ様! あの、こ、こちらは?」

「あら〜〜〜? この子が噂のルームメイトかしら?」

シャンオンさんは私を上から下までじっくりと見たあと鼻で笑って言った。

「こんなお子ちゃまの保護者をしなきゃいけないなんて、栄仁も大変ねえ」

お、お子ちゃま......!?

「俺の幼なじみのシャンオンだ。雪島に住んでいる。」

「あらやだ、私たちの関係はそれだけじゃないでしょ?」

「シャンオン、余計なことを言うなよ。」

「はぁーい。さあ栄仁、1年ぶりの桜島案内してよ。行きましょ。」

シャンオンさんは栄仁を連れて行ってしまった。


「それだけじゃない関係って何......?」

ショーウィンドウにお団子が少し崩れていている自分の姿が映っていて、惨めで恥ずかしかった。


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