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栄仁の気持ち


栄仁は仕事の合間を縫って、来儀の洋服屋へ来ていた。

「それで朱里ちゃんを元の世界に帰す方法は見つかったの?」

「ああ。おそらくだが。北の山の婆さんの話と、過去の文献、外の島からの情報を調べた結果だから確かだと思う」

「まじか! すごいじゃん! というかいつの間にそこまで調べてたんだね……朱里ちゃん、元の世界に帰りたいって言ってるの?」

「いや、まだ話してない」

「え? 話してないの!?」


伝えなければ行けないことは分かっているのだが、自分勝手と分かっていても伝えたくなかった。

「へ〜〜、言葉足らずな栄仁に、優しい俺からアドバイスするけど.........大事なことは言葉にして伝えないとダメだぞ。行動じゃなくて、言葉が先だ」

栄仁は目を逸らした。


「まさかもう何かしちゃったわけ?」

「言葉にしなきゃいけないことは分かってるよ」


最初会った時は変な服を着ていて、生意気な子供だと思ったが、一緒に過ごしていくうちにどんどん朱里に惹かれていった。

何事にも一生懸命で、子供みたいに無邪気なのに、ときどき大人びた顔をしているところ、歌を歌っている時の笑顔、今では家に帰るのが楽しみになった。


もしも、元の世界に帰りたいと言ったら俺はどうするんだろう……。


さっきまで晴れていた空からは雨が降り出していた。

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