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島の王子様


朝、朝食の片付けをしていると戸をノックする音が聞こえた。

玄関の扉を開けると見知らぬイケメンが立っていた。金色の瞳にサラサラの髪、整った顔……キラキラしたオーラが出ていた。


「初めまして、歌姫様。君が扉を開けた途端、まるで天使が舞い降りてきたのかと思ったよ。」

ニコリと微笑んでいた。臭いセリフであるが、目の前にいるのが王子様のようなひとであるため、違和感が全然なかった。あまりのキラキラオーラに倒れそうになっていると、横から声が聞こえてきた。


「リューク兄ちゃん。おねえちゃんに変なこと言わないで」

「ねえちゃん、助けてくれよー」

「え!?リュンくんとリンユウちゃん!?王子様がお兄ちゃん!?」

リュンくんと、リンユウちゃんも一緒だった。


「王子様とは嬉しいね。かわいい弟の頼みで来てみたらこんなにも美しい姫に会えるなんて。」

そういうと王子様は私の手の甲にキスをした。

「おいっ!リュークさん!」

いつの間にか起きてきた栄仁が鬼の形相で立っていた。

「ふっ、安心してくれたまえ、君のかわいい歌姫様にご挨拶をしただけさ。今日はお邪魔するね」

そういってスタスタと部屋に入っていってしまった。


殺風景の畳の部屋に王子様は浮いていたが、何度も来たことがあるのか慣れたようにくつろいでいた。

「僕のかわいい弟の要望に答えるため、歌姫様に会いにきたところ、天使のような美貌にやられたということだ。歌姫様には僕だけのお姫様になってもらうこととは別にお願いがあるのさ」


「つまり、リュンがアカリおねえちゃんに会いたがってて、リューク兄ちゃんも興味本位で着いてきたの。リュンはおねえちゃんに頼みがあるんだって」

リンユウちゃんが解説してくれる。


「その前に歌姫様には僕のことを知って貰いたいな。僕は島中のお姫様を幸せにするために日々尽くし、悪と戦っているのさ。歌姫様の話は子鳥のさえずりから知り、会いたいと思っていたのさ。僕のかわいいリュンも姫の魔法にかかったと聞いたからさ」

すかさずリンユウちゃんが補足する。

「まず自己紹介をすると、リューク兄ちゃんはお医者さんだよ。島中の人の病気を治してる。お姉ちゃんのことは噂で聞いていて、リュンくんもお世話になってる事だし、会ってみたかったんだって」

「医者!?というかリンユウちゃんすごいな」

キャラ濃いな〜。

「リューク兄ちゃんには私がいないとダメなのよ、ふふ」


リンユウちゃんは嬉しそうに目を細めていた。王子様を見つめる瞳が熱っぽくて、昔から鈍感だと言われている私ですらその意味に気づくことができた。リンユウちゃん、かわいいっ!

「リュークさんはこれでも、天才といわれる名医なんだ。女性に対しては軽いけど……リュークさんの治療を求めて島外から来る人も多いんだ。リュンのお兄さんで、リンユウとは家が近所で幼なじみなんだ」

栄仁が教えてくれた。


そして栄仁は仕事に向かっていったが、最後まで王子様に「絶対に手出さないで下さいね」としきりに言っていた。家のものを勝手に触るなということかな。


「今日はおねえちゃんに魔法で助けてもらいたくてきたんだ」

リュンくんがそう言い、ランドセルから教科書やノートを取り出した。

「明日テストがあるんだけど、全然覚えられないんだっ!おねえちゃん、お願い魔法でなんとかしてくれ!」

そこには、歴史のようで何やら地名や人物名が書いてあった。


「申し訳ないんだけどリュンくん、私魔法が使えるわけじゃないんだ。魔法で助けてあげることはできないの。だけど……」

私はプリントを確認した。そうだ……!

「京都の……えっと、私が前居た世界の京都って場所では通りの名を歌にして覚えたりしてたの。だから、これも歌にして覚えるのはどうかな?」

「歌にする?」

私はプリントに書かれてる文字を見て考えた。うん、できそう!


『♪』


人物名と地名を順番にリズムを付けて歌った。

3人とも身を乗り出して聞いているのが分かった。

「す、すげえっ!」

「じゃあ、私の後に一緒に歌ってみて」

それから何回か歌ったリュンくんはすぐに覚えることができた。

「やっぱりすごいよお姉ちゃん、こんなに楽しく勉強ができるなんて、やっぱり魔法使いだな!」

リンユウちゃんも「私も学校の課題、これでやってみようかな」と言ってくれた。

「そんなことないよ。ありがとう。リュンくんはお兄さんのように将来お医者さんになりたいの?」

物覚えも早いし、勉強に対するやる気もある賢い子だからな。

「……オレには無理だよ。兄ちゃんみたいに天才じゃないもん。兄ちゃんは天才だから、勉強もスポーツも何でも簡単にこなせちゃうんだ。でもオレは兄ちゃんと違ってダメなんだ……」

リュンくんは俯いていてしまった。


「リュンくん、それは違うよ。王子……じゃなくてリュークさんは天才だから何でも出来たわけじゃない、何でも頑張って努力して出来るようになったから天才って言われてるんだよ。リュンくんは、明日のテストの為に一生懸命努力できてるんだから、ダメなんかじゃない」

リュンくんの手を力強く握った。

「それじゃあ、オレも頑張ってれば兄ちゃんみたいに、兄ちゃんみたいなカッコイイお医者さんになれる?」

「うん!なれるよ絶対!」

「リュン……!!!!」

王子様は感動のあまりリュンくんを抱きしめていた。

それから私たちはすっかり仲良くなり、夕方まで遊んでいた。


皆 が帰る頃には暗くなっており、ちょうど栄仁さんが何故か汗だくで帰ってきたところだった。

「はぁ、はぁ、まだ居たんですかリュークさん、もちろん何もしてませんよね?」

「走って帰ってくるだなんて、栄仁くんらしくないねえ、ふっ、まだ歌姫様には僕のハートは盗まれてないさ。だがしかし、それも時の旅人、必然事項、そう地球がまわっているようにね」

「はぁぁ!?いくらリュークさんだってダメです」

王子様と栄仁さんは言い争いをしていた。


いや、地球が回ってるってなんの話だよ!しかも栄仁さんは意味を分かっているようだった。何故。

助けを求めてリンユウちゃんを見たが、リンユウちゃんは俯いてしまっていて解説をしてくれなかった。

「それでは歌姫様、運命のイタズラで近いうちに会おうね。あとそれから……」

そういって王子様は私に近づき、

「リュンに言ってたあの言葉、本当に嬉しかった」と耳打ちした。


私は突然でドキドキしてしまって、栄仁さんは何故か怒っていて、その日はお開きになった。


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