表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/26

3 図書館

 イザベルが、今後の行動方針を立てて決意を固めた頃、授業はとうに始まっていた。


 中途半端な時間に教室に入る気にはなれなくて、イザベルは学園の敷地内にある図書館に向かった。


 ちなみに、図書館は読む本の選択で上がるステータスを選べるので、授業をさぼって図書館に行くというのは、まんべんなくステータスを上げたい時には有益な選択の1つだ。


 他ステータスの減少はないが、授業と比較すると増える数値が低い。そして、内部パラメーターの『幸運』が下がるらしい。


 とはいえ、今のイザベルは各種ステータスに興味がなかった。学園のルールブックが置いてそうなコーナーに向かい見つける。


(これがあるということは、やっぱりここはゲームの中なのね)


『知力を上げるには』など各種ステータスや『幸運について』などのヒントが1冊ずつ本になっていた。


 学園内でもこれらの単語は使われているから、図書館に置いている本として不自然ではないけれど……例の乙女ゲームの中で繰り返し読み込んだ、各種ヒントと同じタイトルだ。


 イザベルは背表紙を指でなぞりながらタイトルを目で追っていく。知っている内容しかないならそれで良し。でももしも知らない情報があるのなら、この棚に見慣れない表題の本があるはずだ。


「……あった」


『サポートアイテム集《追加システム第2版》』という本を手に取り、イザベルはテーブル席に移動した。



 どうやら、スマホ移植版が出ていたらしい。そしてその際に難易度調整がされた。課金アイテムだ。


『幸運』パラメーターが見えるようになるアイテムや、各種ステータスを少しだけアップさせるアイテム、好感度を上げるようなものまである。


(各種アイテムの効果は微々たるものだけれど、アイテムで上げたパラメーターは下がりにくいのね……)


 使用時に他のパラメーターが下がることはなく上げられるのは想定通りだけれど、通常の方法でパラメーターを上げる時の劣としての下げ幅についても、アイテムで上げたステータスの場合は0~30%しかなかった。


 課金して上げても簡単に下がるのでは旨味がなくて、購入者がつかないからだろう。


 こうしたアイテムを使えるのなら、使い方によっては逆ハーレムも可能なのかもしれない。


(でも1日1アイテムといった使用制限がある。それに、平民がそういくつも購入できないはずだけど……)


 かといって、イザベル自身はこれらのアイテムを使用したところで、効果を得られる感じがしなかった。そして、今日まで『アイテム』という存在そのものに気づきもしなかった。


 本がここに存在するのに、アイテムの話題が出たことはこれまでの記憶に一切ない。


 それはたぶん、アイテムが特殊効果として作用するのが、主人公だけだからなのだと思う。


 最悪というほどではないけれど、嫌な予想が当たってしまったな、と気落ちするような収穫だった。


(でもまあ、シーナさんも知らない可能性があるわけだし……これからは、両パターンを想定して動こう)


 とりあえず、本は目につきにくい位置に収納した。『幸運』はさらに下がっただろうけれど、背に腹は変えられない。



 そして。


 どうやらイザベルの『幸運』は、思った以上に下がってしまっていたらしい。


 図書館から教室に向かう途中の渡り廊下で、イザベルはくだんの女子生徒と鉢合わせた。


 カラメルソースのような(つや)やかな髪が、肩のあたりで切りそろえられていた。


 保身的な貴族社会ではありえないヘアスタイルだけれど、そうした先入観を抜きにして見れば、彼女の天真爛漫な雰囲気に、とても似合っている。


「シーナ・リーファース……」


 イザベルは思わず呟いてしまって、それを聞いたシーナは、宝石のようなエメラルドの瞳を丸くして……すぐに、花が咲いたように笑う。


 カラメル色の髪の毛がシーナの動きの1つ1つに合わせてキラキラと揺れる。口の前で、両手を打ちならすように左右の指先を合わせた。


「わあ、イザベル・クンツァイト様に、名前を覚えていただいていたなんて嬉しい! 同い年なのに、とっても綺麗で素敵な方だなって、憧れていたんです。……あの、これもなにかの縁ですし、もしイザベル様のご都合がよかったら、今からお茶をしませんか?」


 そうして、シーナは「ちょうどクッキーを焼いてきたんです」と笑顔で続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] メタ発言!!?? (これがあるということは、やっぱりここはゲームの中なのね) 『知力を上げるには』など各種ステータスや『幸運について』などのヒントが1冊ずつ本になっていた。
2021/09/30 21:36 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ