7話―ON AIR―
意識が戻った後すぐに聞かされた話。
放送部からの依頼の内容は、放送を一日持ってくれ、というものであった。
いつも放送部は、昼休みにラジオトークをしていて、
それを代わってくれという話だった。
「というかなんで、そんな面倒くさいことを……」
長机にもたれかかれながら、ニコニコしている部長に問いかける。
本当にうれしそうだ。確かに立て続けに依頼が来てるもんな。
「面倒くさいことなんて無いぞ? ラジオトークって面白そうじゃないか」
ニコニコ顔のままで答える。
「んでも、姉貴。台本とかどうするんだ? また水原に作ってもらうのか? 」
愁兎がシップを貼ったおでこをさすりながら言った。
すると、部長はチッチッと指を振って答えた。
「今回は……アドリブ全開で行こう! 放送事故? そんなものは知らん!
気合いで何とかしろ! みんな、ミスするなよ。」
何故にプレッシャーを与えたのか今の僕には理解できない。
いや、いつもの僕でも理解できない。
「とりあえず、明日の昼だからな! 一発ギャグでも作っておけよ!」
そう言い残して、部室から出て行った。
部室には沈黙が訪れる。それはそうだ、いきなり明日なんていわれても
よし、気合い入れていこう! なんてことにはならないだろう。
「ハル君。俺のこれを見てくれ。」
そういって竜児が立ち上がった。
「見よ!俺の邪眼!」
そういって目を充血させる。
何がしたいのかわからない、本当に壊れてんなぁ と思ったとき。
「どうだった?俺の一発ギャグ!」
「ってぇぇぇ! 一発ギャグ考えてたのかよ! しかも考えてそれかよ!
ついでに言うと、ラジオだから意味ねーよそれ!」
全力で突っ込んだ。別に明日のラジオの突っ込み練習をしているわけではない。
「そうだった! 」
その一言で、終る竜児。
このままで明日のラジオ大丈夫なのか……
どっ と不安感が襲い掛かってきた。別に俺が気にすることでも無いのに。
次の日の昼休み。ついにこの時が来てしまった。
みんな緊張しているだろう。何か犯せば、学校中の話題になってしまう。
なるべく軽口は、叩かないようにしよう。
「ついに来ましたね。この時が。」
いつもどうりの無表情で水原が言った。そこからは緊張の色が読みよれない。
「水原は緊張しないの?」
「いいえ。かなり緊張してますよ。」
そう答えた声は、かなり楽しそうだったが。
「おーし、みんなそろったな。放送室に行くぞ!」
部長が向こうからやってきて、そう呼びかけた。
さて、向かうことにしよう。
放送室。
部長がスピーカーの電源を入れ、スイッチを操作し始める。
「さて、はじめるぞっ!」
小冬「救部の!昼休み校内放送〜〜〜!」
春希「ってかいきなりテンション高っ!」
愁兎「始まりは意外としっかりしてんだな。」
小冬「何を言ってるお前ら。もう始まってるんだぞ?」
愁兎・竜児・春希「まじっすか!」
小冬「まぁ、ついていけてないこの3人はほっておいて、まずはじめのコーナー!
春希「そんなモンまで用意してんのかよ!」
水原「はじめはお便りのコーナーです。ラジオネーム、ぐっさん(男) さんからです。
『須川 竜児くんが僕のこと好きみたいで困っています。どうしたら
いいでしょうか?僕には他に好きな男の子がいるんです!』」
春希「なんか最初っからぶっ飛ばしてねぇ!? というか突っ込みどころ満載だぞこれ!
他に好きな男の子がいるから無理ってなんだ!お前もホモなのか!」
竜児「まて!何故に僕!?というかなんでハル君はそこ突っ込んでくれないの!?
これは意図的なのか!?」
愁兎「お前この間、あの子いいよな。 とか言って男見てたじゃねぇか。」
竜児「それ違う!なんか違う!俺が好きなのは幼女だっ!」
小冬「お前今、自爆してるからな。校内放送なんだが……」
春希「ちょっと待って! 今かなりグダグダだからね!」
水原「次のお便りです。」
春希「もう次いっちゃうの!? 解決どころか余計うやむやになったよ!?」
水原「ラジオネーム、うつ病(男) さん。『エミリーという外国人の女の子が好きなんですが、
僕は英語が苦手で、話しかけることができません。どうしたらいいでしょうか?』」
春希「なんで恋愛系の話しか来てないの!? 」
愁兎「さっきのアレは恋愛に分類されるのな……」
竜児「歪んだ愛は必要ないよ! 俺はまだ弁解するぞ!」
小冬「おい、真面目に答えてやろうじゃんか。英語ができないんだって?
それなら話は簡単だろう、あきらめろ。」
春希「真面目に答えるんじゃなかったの!?」
小冬「私は真面目に答えたが?」
春希「間違いなく適当だよ! もっと英語を勉強してからチャレンジしようとか
アドバイスあるでしょ!」
小冬「私はあるがままの現実を突きつけてやっただけだ悪いことなどしてない。」
愁兎「姉貴マジで遠慮ねぇな……こええよ。」
竜児「待って!同性愛について語り合おう!」
水原「そんなに同性が好きならブラジルとかにでも行くといいです。同性で結婚が
可能らしいですよ。よかったですねそんな国があって。」
竜児「そんなことは言っていない!俺の弁解をさせろといっている!
まちがった解釈をするなぁぁぁ!」
小冬「じゃあ次のコーナーいってみよー!」
春希「これ放置!? だんだん泥沼化していってる……」
小冬「次のコーナーは、『ずばり言ってみよー!』です。普段言えないことを
私たちが代わって言いましょう! というコーナーです。」
愁兎「えっと、この紙読めばいいんだな?……ラジオネーム、しょうたろん(男)さんからです。
『おい! 俺はロリコンじゃねぇよ! あんまり調子のるなよ!』」
春希「……誰に対して言ったのかは全然わかんないんだけど……とりあえず読めばいいんだろ?
ラジオネーム、みずの(女)さんからです。『友達の弟が小学三年生なのに金髪で
チャラチャラしてる!マジで今の小学生はレヴェル高いな!』……なにこれ。」
水原「ラジオネーム、須川竜児(男)さんからです。『ぐっさん君!僕は君の事を忘れられ
ないんだ!やっぱり好きなんだよ!………好きなものはどうしようもないんだよっ!』」
竜児「タイム、おかしい! 俺はそんなもの書いた覚えは無いぞ! 間違いなく仕組んだだろ!」
愁兎「もうお前が男好きだって分かったから。あと、今度からはあんまり近づかないように
してくれると俺はありがたいんだが。」
竜児「うわぁぁぁぁぁ! 俺の株が格段に下がったぁぁぁぁぁ!」
小冬「お前の株なんていつも地面スレスレだったろ。」
………そんなこんなで放送は終了した。
放送後に一つ変わったのは、竜児の株価だけだった。
これはこれで成功……なのかな?