表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/38

6話―次の依頼―

放課後、いつものごとく部室へと向かう。

廊下ですれ違う人々は、ユニフォームを着たもの、柔道着を着たもの、

スケッチブックを持ったもの、メイド服を着たもの……などがいる。

……?ちょっと待て、おかしいぞ、変なものが混ざってた気がする!

振り返って見るが、そこにはもうメイドらしきものはいなかった。

「幻覚………かな?」

確かにいた気がするのだけれども……まぁ、そんな気にするようなことでもないだろう。

竜児だったら真っ先にカメラを構えているだろうが。


中庭には、桜が咲き誇っている。

その下では復活したらしい演劇部員と、映画部員の人たちが演出を始めていた。

「救部の皆さんは最高のものを作った!私たちも負けていられないよ!」

「分かってますとも映画部部長!私も演劇に力を上げますわっ!」

かなり気合いが入っていた。

活気が戻ったのはいいことだろう。良い事をしたのだと思う。

こっちの視線に気がついたのか、映画部部長が手を振ってくる。

「おうっ!鳴川君だよ、この間はありがとー。ナイス演技だったよ!」

ちなみに僕は今3階にいる。窓から中庭を覗く形になっている。

そんなだから、映画部部長は声を張り上げている。

「あ、うん。こちらこそ頼ってくれてありがとー!」

声を張らなくても会話は可能なのだが、なんとなく大きくなる。

「また倒れた時はよろしくねー!」

僕はその返答に、軽く手を振って答えた。



救部の部室は、3階の文化部部室棟というところにある。

この学校は、かなり大きいのだ。だからこそ新しく部活を作っても、部室に困ることは無い。

校舎は横に4つ並んでおり、それぞれ文化部部室棟、特別教室棟、教員棟、

そして教室棟となっている。

我らが救部があるのが文化部部室棟。

理科室や、家庭科室などがあるのは特別教室棟。

教員棟には、3年生の教室と、職員室がある。ちなみに校長室も教員棟にある。

最後に教室棟とは、その名の通り、僕らが普段暮らしている教室がある。

「うぉーーーーい!ハルっ!」

ドドドドドド、と迫ってくるのは霧谷 愁兎。

いつものようにさわやかスマイル+茶髪である。

「愁兎か。今日は居残りはなかったの?」

「なかったぜ!姉貴に宿題写させてもらったからな!」

姉貴とは、霧谷 小冬のことである。

容姿端麗、頭脳成績、そして何でもこなせるといったパーフェクト超人。

背も高く、モデル体型である彼女は、救部部長なのである。

男子からの人気は絶大で、校内美少女ランキング1位らしい。

(これは表向きに発表されているものではない)

「っていうかそれ小冬部長に頼ってるだけじゃん!」

「いやぁ、マジで姉貴がいてよかったわ。宿題なんて意味をなさねぇからな。」

「それは多分、愁兎限定でしか使えない言葉だと思う。」

そんなくだらない会話をしていたら、いつの間にか部室についていた。


ガチャ


「よーーっす!」

「おっす。」

2人で元気よく挨拶をして部室内へ。

いつ見ても会議室そのものの部室。

長机がいくつかと、パイプ椅子が数脚。

部屋の端には水原がいて、パイプ椅子に座っている。

一方、部屋の真ん中には須川がパイプ椅子に座り、小説(?)らしき物を読んでいた。

会話をしていた気配はまったくなかった。

それはそうだろう。なぜなら水原は須川を嫌っているからである。

「助かりました。危うく変態生物との空気に汚染されるところでした。」

水原が無表情のままいった。

この子は黙っていれば、人形のような可愛さを持っているというのに、

口を開いたら毒のある言葉が飛び出す。

「ふへっ、ふへへへへへ………」

急に不気味な笑い声が部室内に響いた。

水原の言う変態だ。これは変態の声だ。

「気持ち悪いです。小説を読んでニヤニヤしている人間なんて死ねばいいのです。」

「何を言うか!文句を言うのはこの小説を読んでからにしろっ!」

変態=須川竜児 が立ち上り言った。

片手には小説。しかしブックカバーがついている。KAWAKAMISYOTENと書かれている。

「どこの書店だよそれ……」

俺の突込みを軽く流し、水原はその本をとる。

「……ウミニャ文庫……?なんですかこれ?聞いたことありません。」

「いいから読んでみろって!マジ面白いから!」

水原は、適当なページを開き、声に出して読んだ。

もちろん棒読みで。

「おれのめは、あおいろなんだ。なぜかって?そんなものしらねぇよ。

 おれのおんなにふれたらころすぞ。うつびょうみたいだって?

 そうですおれはうつびょうなんです………」

急に水原が読むのをやめる。ここまで読んだのが不思議なくらいの

意味不明な物語だ。

どうした? と水原の持っている小説を覗き込む愁兎。

「何故に濡れ場……?」

小さく言った。

「面白いだろ!?」

馬鹿みたいに竜児は叫ぶ。

いや、濡れ場てなんだよ……あの文からどういったらそうなるんだよ!

「こんな小説はこの世から抹消すべきです。とりあえずこの手にあるものから」

そういって水原は容赦なく、窓の外へ放り投げる。

それは、弧を描いて焼却炉の中へと収まった。

「イヤァァァァ!僕の小説がぁ!」

これこそ変態みたいに喚きだす。迷惑極まりない。

「ちょ、竜児は落ち着いて!ってあぶなっ、物を投げるな!

 というか水原!この状況絶対楽しんでんだろ!」

水原は、長机を横に倒して、盾を作っていた。

「空襲です。いろんなものが飛んできます。」

そう言いながらもタバスコをぴゅんぴゅん飛ばしてくる。

「やめぃ!制服が変な色になるだろうが!愁兎は竜児止めてー!」

「おっけい!竜野朗まってろよ!」

散々な状態。何故にこんなことになっているのか。

それは、部長がいないからだろう。

まとめ役が不足するこの状態で俺はここまでしかできない……

すいません部長。部室がやばいことになってます……















今日は遅くなってしまった。日直だったからだ。

教室を掃除していたらこんなにも遅くなるのか。

教室にはもう誰もいなかった。

みんなはもう部室にいるだろうか?

いるだろう。私も部長なのだから早く行かないといけない。

と、依頼箱が目に入った。

「一応……確認しておくか。」

木で作られた小さな箱の裏側。そこに取り出し口がある。

かさ、と紙のすれる音がした。

1枚。紙が入っている。

『放送部』 そう書かれた手紙だった。

「依頼……第二号だ!」




手紙を片手に走っていた。部室へと向かって。

部室のドアを勢いよく開ける。


バキッ、


「おーい!依頼第二号が来たぞっ!……あれ?」

そこには目を押さえてのた打ち回る須川。

黒い笑みを浮かべている水原。

そしてドア付近に倒れている2人。

どうやら自分がドアを開けたときに一緒に飛ばしたのかもしれない。

まぁ、そんなことはいいだろう!

「みんな!依頼第二号!次は放送部からだっ!」

そんな声が部室内に響いた。




「ど、どうでもよくない……よ。」

そこで俺の視界は黒く塗りつぶされた。














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ