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5話―優秀な―

おかしかった。絶対に。

今、夜の学校には、自分以外に誰もいるはずか無いのに。

なのに。どうして悲鳴が聞こえる?


うわぁぁぁぁぁぁっ!


確かに聞こえた。それも、よく知った人の声で。

僕はただ立ち尽くしていた。三階の階段の踊り場で。

「ハル君……じゃないよな。絶対違う……」

自分に言い聞かせていた。

そうでもしないと────平静を保っていられなかったから。

「やめてくれよ……冗談じゃない。」

そういいつつも声のした方向へと向かう。

真実を確かめに。






いた。そこには確かにいた。

死体となった鳴川・・・・・・ 春希が・・・────。

「なんだって……どういうことだよぉぉぉぉぉ!」

後ずさりした時。何かを踏んだ。


ぐに、


「う、う………」

声にならない。何かはすぐに判断できた。

「し、愁兎……君!」


「オ、オオオオ。オマエガ、コロシタ?」

頭の中に流れ込んでくる。

「そう、僕が………?あぁ…?」


早送りにしたような映像が流れ込んでくる。

自分視点で────2人を殺す場面が。

「ち、ちがうっ、僕じゃない……!違う……」

頭がガンガンする。視界が揺らぐ。

「ぼ、ぼくっ……ちが……っ!うぅ………」

頭を抱えしゃがみこむ。

再び立ち上がりよろよろと壁にもたれかかる。

「ぅぅ……っ!……僕か・・。」

それは乾いた声で。確信したように。

「ふふっ………くくく……あっははは!あはははははは!」

上体を反らし、甲高く、狂ったように叫ぶ。

「僕だよ、僕か、僕だった!」


あっはっはぁぁぁ!


そう言いながら駆け出す。下へ向かうのではなく上へと。

階段を2段飛ばしで駆け上がる。

乾いた声で笑いつつ。


────バァン!


屋上の扉を叩くようにあける。

「ふふ………。」

屋上には月が出ていた。それは赫く、赫く。

見るものを狂わせるような宝石のよう。

そして彼は、飛んだ・・・

屋上から地へ向けて飛んだ。

そうしたのは、狂った彼なのか。それとも────、

本当の彼が自分自身を止めるためにか………。


















「ぃよし!カットォ────!」

響き渡る小冬部長の声。

「よくやりましたね、変態さん。これからは、私の半径1000000000km以上に

 入ることを許可します。」

水原は真面目な顔で。

「マジやばいって!ぼく本当に死ぬかと思った……3階のベランダに

 降りれてなかったら……」

ブルルル、と身体を震わせる。

いつの間に戻ってきたのだろう。すぐ隣にいた。

「しかしなんだって、この部の男どもは演技がうまいのかね。」

俺と愁兎は顔を見合わせるが、竜児は、

「僕は、毎年とあるグループで演劇をやったりするから!」

と、なんだか変なものを漂わせる雰囲気で言った。

とあるグループ、ねぇ?

「とりあえずこれで全部撮り終ったのか?」

水原に尋ねる。

「そうです。終わりました。後はこの映像をつなぎ合わせれば、完成です。

 私は、機械とかはそんな使えないほうなので、誰かがやってくれると助かります。」

「それなら、須川がやればいいだろう。コミケやらに行っているのであれば

 機械とかは使えるのではないのか?……関係なかったりするか?」

部長が知らない空間に戸惑っている。

何でもこなせる人だが、できる限り部員にやってもらいたいらしい。

自分だけが何かをするのではないということ。

「甘いですな、部長。」

「なに?もっとすごいことができるというのか?」

「逆です。パソコンは使ったことあるけど、アニメ見るぐらいだし!」


…………。


とりあえず自慢することではない。

「超使えないです。」

ざくっ と一言。

「そんなことだろうと思った。」

予想通りだ、というように部長が言った。















≪結果発表をします。≫

アナウンスの声がホールいっぱいに広がる。

映画コンクールの会場だ。

ここで、最優秀賞作品が発表される。

「お、おい……ハル!どうなると思う!?」

「そんなこと俺にわからないよ。」

「私が作った台本です。決まってます。」

「ぼ、僕の演技力……」

「お前ら静かにしろー!そろそろ発表されるぞ!」

シン、と会場が静まり返る。

数秒たったあと、ドラムロールが鳴り─────


ドゥルルルルルルルルル────


≪最優秀賞!『恐怖!学校の十戒』!≫

「やっ………た。」

「うぉぉぉぉぉ!姉貴!これ夢じゃないよな!」

「うむ、私が監督を務めたからだな」

「僕の演技力ー!」

「私の台本のよさに決まってます。」


≪題名は、何の捻りもなかったのですが、内容がすばらしいといった点、

 そして編集の仕方、撮影の仕方などがよかったです。≫

「な、なにを……題名はシンプルだからこそいいのです。」

「まぁまぁ水原、とりあえずこれでよかった。」

「鳴川 春希。何も分かっていませんね。私がこれから台本の極意を……」

後ろから変なオーラが……

「じゃあ、代わりに僕が教えてもらいましょう!水原の家で!じっくり!」

目が危ないよ、目が。

竜児が立ち上がって水原の手をとっていた。

「私に障ることは万死に値します!」

「漢字間違ってな、ぎぃぃぃぃぃぃぃ!」

ゼロ距離射撃だった。


「お前達うるさいぞっ!!!」


部長の咆哮でドタバタは止まった。




そしてその次の日には──────お礼の手紙が来た。















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