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35話―超の力―

「そう、この世界は理不尽だらけだ。というか神様は差別をしている。人間は差別されていいものなのか?憲法にまでこと細かく書かれているというのに何でなのだろうか? というかまず一番最初にリア充は爆死してもいいと思う。いや、むしろ爆死して欲しい。そして裏切りという名の傷を負った者はどうすればいいのだろうか。あぁ、目から涙が出てきたね。泣いているのか? 僕は泣いているのかい?」

「とりあえずうるさいからな、須川。黙ってろ」

竜児の呪文のような呟きを破ったのは部長だった。確かにうるさかった。

というか新たな宗派を作り上げそうな勢いだった。

「部長! これが黙っていられますか!? リア充ですよ、僕たちの敵ですよ!?」

「僕たち・・ってなんだ。勝手に私たちを巻き込むな」

「………」

部長と竜児の会話の中、水原は黙々と宿題を片付けている。

「ほんと許せねぇよ! なんなんだよ、仲間じゃないのかよ!」

「何に興奮しているんだこいつは………」

ついに耐えれなくなった部長は冷たい目をして竜児から遠ざかる。

それが正しい判断です。つか、何をそんなに竜児は言ってんだ?

ガチャリ、と音がして部室のドアが開けられる。入ってきたのは愁兎だった。

「きやがった! 俺の敵ぃ!」

すぐさま竜児が反応する。獣のような勢いで愁兎に迫り、掴みかかろうとする。

「わ、何だこいつ」

片腕を払うだけで地面に潰れる竜児。愁兎が強すぎるのではない、竜児が弱すぎるのだ。

「そういうことね………」

俺はようやく理解する。つまり、愁兎が大槻さんと付き合いだしたから気が立ってるのか。

「あら? 愁兎、大槻と帰らなくていいのか? というか遊びに行ったりしないのか?」

「ああ、大丈夫だ。大槻とはクラスで話してるし、大槻だって部活だからな」

そう語る愁兎は嬉しそうだった。これが竜児をダークサイドに落とすのか。

「それに姉貴だって好きだしな!」

「き、気持ち悪い!」

そういう部長も嫌そうではなかった。………本当の反応としてはおかしいのだが。

「早速不倫ですか。流石にやばくないですか?」

水原は宿題から顔を上げてそう言った。

「なぁっ!? そんな人聞きの悪いこというなよっ、なんかすげえ悪い奴みたいじゃん!」

「ふふふふふ………悪い奴、でしょう?」

水原は謎の笑みを浮かべる。表面上に少しだけだが。

「な、なんか怖いな………ってなんで竜児は泣いてんの?」

「それはそっとしておいてあげて。愁兎が話し掛けちゃ駄目だよ」

「うん………意味が分かった」

最近愁兎はいろいろなところで成長したと思う。俺が言うのもなんだけど。

本当にそう思うのだ。強くなった、んだと思う。

「うお、………寒いな。窓閉めよ」

部長が体を震わせてそう言った。そういえばもう秋だな………。

「秋………か」

「うん? どうしたハル」

「いや、この間クーラーをゲットしたって言うのにもう使わないなぁって思って」

「な、………確かにそうだ。しかし、私たちには部費がある。これで暖房を買うも良し!」

「いきなりの出費ですね」

「そのお金で夜通し飲み尽くせー、そして一文無しになれ………と鳴川春希の心が言ってます」

「言ってねぇ! というか心覗けるのか!?」

そんな会話をしている間も竜児は悲しみから復活しなかった。






「さて、最近はなにやら忙しかったからな。依頼箱の中身を確認しよう」

そういって依頼箱の裏面を開き、中身を取り出す。

ゴミ、ゴミ、ゴミ………手紙……ゴミゴミゴミ……

「ふざ、ける、なぁぁぁぁぁぁぁっ!」

部長がキレた!?

「お、落ち着いてください部長! 手紙入ってますから!」

「ふう……む? 超能力研究会?」

また胡散臭いのが出てきてしまった。つうかハズレを引いた。

「こんな部活まで存在することを認められているのか………正直この学校にはびっくりだ」

素直な感想を述べてみる。しかし、賛同するものは少ない。

「そうだよなぁ………超能力なんてあるの?」

と愁兎。

竜児はまだ隅の方で丸くなっている。

「そうか? なかなか楽しそうな部活だと思うぞ? 行ってみるのも悪くはないかも……」

「昼休みによく、グラウンドでUFO呼んでますよね」

危ない香りがぷんぷんする。というか異常者の集まりでしかないと思うんだが!

「ちなみに一度やりすぎた行為で、部停くらったことがあるみたいですよ」

「なかなかエキサイティングな部活だな………ってそこじゃないだろ!?」

「………おぉ、ハルがノリ突込みを」

「止めてください部長。何気に恥ずかしいです」

久しぶりにミスった感が………。

「とりあえず行ってみないことには始まらんだろ。依頼なんだし」

「これは作者のネタが尽きたと見るべきでしょうか。適当に流すつもりでしょうね」

「水原………?なんの話をしているんだ?」

「この世の在り方についてですよ」

相変わらず水原は何考えているか分からなかったが、何故かすぐに気にならなくなった。

隅で丸まっている竜児を引っ張り出して、超能力研究会へと向かうのであった。






「そう、この世の中に超能力と言うものは存在する。そもそも超能力とは何か。それはこの世界に意識をアクセスし、世界的な自然現象、この世の定理を捻じ曲げて新たな現象を引き起こすことだ。数字で表すことの出来ないもの、漠然的な何かでとらえるしかない。それはどこか愛に似たところがある。我々の考えでは、愛も超能力の一種ではないかと考えている。無意識のうちにこの世界にアクセスする。当然、相手も思うことで愛というものが存在するというのであれば、その想いは二重となり、シンクロする。そう、完璧なる謎。今回の議題はこれで決定か?」

部室に入るなり理解不能な思想について聞かされた。

超能力研究会は屋上にあるいくつかのプレハブの一つを部室としている。

広さは、教室の半分程度。カーテンは黒く、閉め切っているおかげで室内は暗い。もちろん電気をつけているわけでもないので、光源となるのは超能力研究会部長と思われる人の目の前に置かれたパソコンのみだ。

部員、わずか4名。しかもその中に女子がいたことが驚きだ。

「お、おい………何を話しているのか理解不能なんだが。依頼の内容は一体なんなのだ?」

部長が冷や汗をかきながら聞いた。

超能力研究会部長は眼鏡をクイッと押し上げ、レンズの奥で目を鋭く光らせた。

ぞわっ……と背中に寒気が走る。なんだこれは……。

「そうですね………あなた方の魔力を借りたいと言ったらどうしますか?」

室内が静まり返る。冗談ではない、こいつは本気で言っている。

「この人はイカれているのですか? 堕眼鏡さんは」

この雰囲気の中でも水原は容赦なかった。

「ふぅん……なかなか面白い子がいるんだね。ぜひ僕のものにしたい」

ぞわわわわわわっ! と鳥肌が立つ。自分に向けられたものではないと解っていても立ってしまったのだから本人、水原はさらに酷いだろう。

「な、ななな、なんなんだよ、お前らは! 冷やかしか? 救部を冷やかしたのか?」

部長が空気に耐えかねて早口になった。

水原は固まったままだった。

「まぁ、………お話しましょうか。 この区域には大きな樹が立っている公園があるでしょう? そこで精霊を呼び出そうってのが僕達の今回の議題です」

先ほどまでの愛とかナントカの話し合いはなんだったのだろう、と思ったのだが突っ込まないでいた。

「それで?」

部長はだんだんといつもの調子を取り戻していた。

「だから、力を貸して欲しいんですよ。力を。………あぁ、自己紹介ってまだでしたっけ。三鍵 熔みかぎようです。」

「あ、ああ?」

繋がりのない変則的な会話に部長がたじろぐ。

なんか、謎だな。三鍵 熔………。



それが救部全員の彼に対しての第一印象だった。







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