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28話―無茶な話―

「今何と言った?」

速吹生徒会長はたんたんとそう言った。

しかしそれには怒気が含まれているように感じた。

「会長っ!落ち着いてください。たかが部の部長ですから」

そういったのは生徒会副会長の(ながし) (くちる)。奇抜な名前だったから覚えていた。

彼は、黒髪ツンツンの男子生徒だ。ワックスを使っているわけではなさそうだ。

「ただの、ではない救部の部長だ!」

声を張り上げて言う部長。いや、大きな声ださなくても……。

視界の端に明らかにイライラしている生徒会長の顔があった。

「霧谷小冬あなた本当になにをしにきたのですか話し合う気などさらさらないのでしょう?」

「あー、そんなことはないんだけどなぁ」

悪びれた様子もないように部長は言う。

「で、どうしてくれる?逢香?」

「………?」

いきなりふられたにもかかわらず冷静に(?)首を傾げる逢香さん。何というか流石だ。

「その顔最高です!逢香さん!」

竜児が目を輝かせて言う。もうなんか親衛隊みたいだな……。

嘆息している俺を置いて話しは進んでいく。

「私と逢香は友達だ」

だからどうだっていうみんなの感想。

「逢香は生徒会会計だだから逢香に部費の交渉をする」

「私が任意しないと意味がないでしょう」

バシッと突っ込んだ速吹会長。

でしょうね…っていうか普通分かるよな?

「ま、まぁ今のは冗談だ」

絶対ウソだな…だってさっき自信満々の顔してたし。

「と…とりあえず部費上げろ!」

もうやけくそ!?

「そんなに言ったって無駄ですよ」

言ったのは、逢香さんの隣に座っていたずいぶんとイケメンの男だった。

名前は確か樫木かしき 水城(みずき)だった気がする。

「は、樫木水城だったか?両方苗字みたいな名前しやがって」

「部長、それただの悪口…」

「な゛、あ逢香さんに近づくなあ!」

叫んだのは竜児だった。見れば、樫木は逢香さんの肩に手を置いていた。

なるほど、そういうやつなのか。

「ふうん?君は逢香のなんなんだ?」

挑発的な視線を竜児に向ける樫木。それだけでも格好がつく。

「よ、呼び捨て……あぁぁぁ、あなたこそなんなんだぁ?」

竜児がうろたえている。

「オレは逢香の彼氏だぜ?」

「いいえ、違いますよ……?」

またもさらっと言う逢香さん。おしとやかの極か。

「なーんだよ、つれないな。オレの彼女って嬉しくねぇ?」

「あームカつくな、殴りつけたい気分だ」

部長がいつになくムカついていた。ああいうタイプ部長嫌いだからなぁ……。

「そこのところは私が許可します殴って結構」

速吹会長はさらりとそんなことを言う。

「お、さんきゅー。ブッキー」

そう言って指の関節を鳴らし始める部長。そんなにもやる気だったのか。

「ブッキーはやめなさい」

「ちぉわ! 会長、なんで許可だしちゃう!?」


「「目障りだから」」


会長と部長のシンクロだ………。

樫木は、あぅぅ……とうなだれている。

「なぁなぁ、部長と生徒会長っていつからの知り合いだ?」

ぼーっと突っ立っていた愁兎に聞いてみる。

「いや、俺もあんまり知らないんだけどな。なんだか入学時からなんか色々とあったって聞いてたんだが」

ということは、俺らは今2年生だから1年からの付き合いなのか?

救部が結成されたのは今年の春だから………。

その前の1年間部長は何をしていたのだろう? ちなみに速吹会長も今2年生。

「そこのところは私の情報網を頼ってくれるといいです」

いつも通りの無表情で水原はそう言った。

「確か、一年生の時は部長は、何もしてなかったですね。部活にも入らず、普通に学校生活をしていたらしいです。でもそのころから頭脳明晰、運動神経抜群だったらしいです」

「そんな姉貴だからいろんな部に勧誘されてたんだよ」

自慢げに愁兎は言った。俺はじみじみシスコンだなぁと思った。

「俺はまぁ、野球部に入ってたんだけどな」

「なるほど、だから愁兎は度々野球部の練習に借り出されるのか」

「そういうこと、だから大智とのバッテリーも組めたんだぜ? 別に俺はキャッチャーだったわけじゃないけどな」

なかなか面白い具合に分かってきた。

「たぶん部長はそこで思ったのでしょう。どこからも勧誘されるならどこでもかけつけられるようにしたい、と。そこが救部の結成の原点だと思いますよ」

水原流推理。なかなか筋が通っているように思える。

「さて、この両方苗字は放っておいて、部費の件に話に来たんだ。どうする?ブッキー」

「だからブッキーはやめてくれます? それに私たちもその件について話をしていたんですよ。他の部からも要望がそれはもう腐るほどにやってくるんですからねまったく言われなくても分かっているというのに」

「会長、少し落ち着きましょう。紅茶などはいかがですか?」

「大丈夫。流 朽気遣いどうもありがとう」

なんか主従関係でも結ばれてそうだった。

「会長とくちるんは出来てるんだよね~」

奥の資料室と書かれた部屋から出てきたのは背の低い女の子だった。明らかに小学生といった感じの。

こんな子、同学年にいたっけなぁ………?

「馬鹿なことを言わないで結縞むすじま 久遠くおん

「にっははー。会長さん照れてる? 赤面してるぅ?」

こいつ誰だ、と思っているのはどうやら俺と愁兎だけらしかった。っていうか何で竜児は知っている感バリバリ出しているの?

「あれは一年生ですね。結縞 久遠、一年生から生徒会に所属するほどの仕事の手際などがいいらしいですよ」

「これで生徒会メンバー全員か?」

部長が速吹生徒会長に向かってそう言った。

「そうですよ? これで全部です」

「我らが生徒会長・速吹 智衣、そして生徒会副会長・この僕、流 朽。生徒会会計の東界 逢香、情報処理担当の樫木 水城と結縞 久遠、これで全員です」

朽くんはもう執事よろしく説明してくれる。

尽くすタイプなのかなぁ………?

「ちなみに、オレが情報の収集係で、久遠ちゃんが処理担当なんだよな」

樫木がそう付け加えをする。

「もぅー。そうなんですよぉ、ミズっちが余計な情報まで持ってくるから私は仕事が大変でぇ……」

なんか苦悩らしきものが見てとれた。

「いや、話が脱線しているから戻すがな、部費の件については話し合っていたのか?」

「だからそう言ってるでしょう霧谷 小冬」

「ふうん。それでも、だ。私の部に部費が少しでも回ってくるようにしたいしな。それに、このままいけば救部へ配布される部費はほぼ0に近いのだろう?」

「当たり前ですだってあなた方は特に目的も無く活動しているのでしょう?いや、目的は分かってますよ?他の部を助けるという目的がありましたね。それらの報告は聞いていますしかしあなた方には大会など無いそれに依頼が来ないことには始まらないのでしょう?そんな活動する日がまばらな部には部費を渡せないと言うのが私の考えですかね」

「あー、いつもにも増して句点が無さすぎて読みに………いや、聞きにくいわ」

「部長、今危なかったでしょう………」

軽く突っ込んでおいた。

「どうしても、っていうのならオレがいい考えを持ってますよ」

きらりと歯を輝かせながらにこやかに笑う樫木がいた。

「それは何ですか」

速吹生徒会長が即座に反応した。

「オレの得た情報なんだけどな? この学校にもついに不登校の生徒が現れたそうだ」

「「そんなこと知ってるよ(ますよ)」」

またもや部長と会長の声がかぶった。

「な、なんだ…………知ってたんですか」

「当たり前です。私は生徒会長ですよ?」

「当たり前だろ。私は救部部長なんだぞ?」

いや、意味わからないですから部長。

「そういうことですか。確かにその事態はいただけませんね。分かりました」


「あなた方何とかしてくれるかしら?」


かなりの無茶問題だろ………。










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