25話―会議で過去―
「さて、最近はなんだか部室で話し合いをしていないと思わないか?」
ビーチバレーボール大会で勝ち取ったクーラーの設置も終え、快適な空間で涼んでいた
部員に急に問い掛けた部長。
いつも通り何を考えているか分からない水原は一度部長に目をやっただけで、すぐに読んでいた
ハードカバーの本に目を戻してしまった。
竜児はプラモデルを組み立てている様子で、話なんて聞いていないだろうし、愁兎に限っては
布団まで持ち出して床で寝ている。
当然この場合返事を返すのは僕になるわけで。
「で、それがどうかしたんですか?」
「いや、どうもこうも久しぶりにミーティングを行おうかと思ってな」
………俺と部長が話しているだけでこんなのがミーティングになるわけがない。
誰も参加する気なんてないだろう。
「おら! お前ら、しっかりとミーティングに参加しろよ!」
まぁ、それでも反応する奴はいないわけで。愁兎のもう食べられない………、といったベタな寝言
が聞こえてくるだけだった。
「部長、無理ですよ。この暑い中でここがどれだけ快適空間か分かるでしょう、誰もがだらけてくるんですよ」
「なんだとぉ………。まぁ無理もないのかもしれないが、でもミーティングするぞ!」
「やりますか………というか議題は決まってるんですか?」
「いや、まだだ。だからハル、決めてくれ」
基本的にこれは駄目だった………。
「いや、部長。議題決まってないってミーティングする必要なんてないでしょ」
「だって暇だろ? 以来もきてないわけだし、そう思わないか?」
「暇だからって巻き込まないでくださいよ………」
「よっし、完成だ!」
竜児がいきなり叫びながら立ち上がった。
どうやらプラモデルが完成したらしい。
「ああ、完成したのか。ならミーティングに参加しやがれ」
命令口調だった。
「ミーティング………ですか? いや! それよりこの出来上がりはどうですか!?」
竜児にとってもどうでもよかったらしい。
「ああ、良いな。それ少し貸してくれないか」
「おっ、部長も良さが分かりますか~ どうぞ」
部長が笑っているのに俺は気づいた。
プラモデルを受け取った部長は一秒もためらわずにそれを窓の外に投げた。
「ぎゃぁぁぁっ! 僕のプラモがぁぁぁっ!」
まぁ、なんとなくは予想してたけど………。
「さーて、ミーティングだ」
部長は窓を閉めながらそう言った。もうなんかグダグダだな……。
「部長! 何かいい案出したら取りに行ってきてもいいですかっ!」
「おー、良いな。案出せ」
「僕はこの部の名前を改名したいと思います!」
「ほぉ、なんて言う名前にするんだ?」
「聞いて驚け!生徒全員を 大いに盛り上げる 須川竜児のための団。略して────」
「「略せるかボケぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」
部長と俺が同調した瞬間だった。
「お前は馬鹿か! 本当に驚いたわ!」
「マジで止めろや! 死ぬ気かお前は!」
「だ、だって…………俺は団長に憧れて………」
「「お前はもうしゃべるなぁぁぁぁぁっ!」」
部長の右腕と俺の左腕が竜児の顎を貫いた。
「あぶん………」
竜児は白目をむいて倒れた。
「さて、気を取り直して会議を進めようか」
「気を取り直すどころかさっきの破壊力が強すぎて俺は疲れましたよ………というかこれ捕まりません?」
「大丈夫だ。………たぶん」
何かと不安が残った。
「そうですね………」
水原がハードカバーの本にしおりを挟みながら言った。
「須川 竜児は何故この部活に入ったのか? という議題でどうでしょうか」
「なんかその議題は酷くないか………?」
「そういうことではなくてですね。私がこの部活に入ったのは部長が誘ってくれたからなのです。
では須川 竜児も部長が必要として誘ったのか、というところに私としては疑問がいくのです」
あー。なるほどね。
「そうか……昔話もいいかもな」
そういって部長は遠い目で言った。
春、そう、春だ。
桜が舞い散るなかで、一つの集団を見つける。男子の集団だ。
一人の男が中心で、周りから攻撃を受けている。これはいわゆる、いじめ。
おい、金出せよ
存在が意味なし
サンドバック!
聞き慣れたかのような台詞。どこか僕は他人事だった。
傷は、増えていく一方なのに。
他人事。そうすれば、痛くは無いから。気がつかずに済むから。
「よう、少年。なかなかワイルドな格好をしているな」
桜の木の下、芝生の上に僕は横になっていた。
そして隣には、綺麗ないや、美人な………人がいた。
「ずいぶんと派手にやられてんじゃないか。大丈夫か?」
「何が──ですか?」
「え?」
彼女は、そう。怪訝そうな顔をした。
「ああ、もうすぐ昼休憩が終わりますね………戻った方がいいと思いますよ。教室」
「君は何を言っているんだ? 私とは同じクラスだろう?」
そう………だっただろうか。
年上………というのは失礼かもしれないが、姉さん的な人だったから2年生かとおもった。
「じゃあ帰るとしようか。私とな」
「………そうですね」
何か色々と、抜けているような気がした。
久しぶりの更新となりました。
なんせ受験せいですから・・・