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21話―初夏―

初夏。そう、ついに夏がやってきた。残念ながら救部の部室には扇風機しか備え付けていないため、部室内の温度はすさまじいことになっている。

それも、部長だけが占領しているものだから困ったものだ。

それにしても…………暑い。

「あ゛あ゛あ゛あ゛~」

「部長、扇風機で遊んでるんならこっちに回してください」

今、部室にはみんな集合しているが、会話はほとんどない。

みんな暑さでくたばっているのだ。

「いやだあ゛あ゛~。ならハル、一緒に当たろうか?」

「えぇぇ!?」

「それなら俺がぁ! 」

一瞬にして竜児復活する。

「い、い、今部長と一緒に扇風機に当たるだって!? そんな夏服で肌との間がただ一枚の危険

 極まりない天国にしかも相手が部長!? 最コーだ! 扇風機どころじゃねぇ!」

暑さで頭がやられてしまっているのか、竜児はリミッターが外れているようだ。

確かに部長の体のラインは危険極まりないけど。

「須川は却下な。犯罪臭がするから」

「それについては、否定できません!」

そこは否定しろよ。

「だけど、この青春時代! 夏にこんなことがあってもいいんじゃないかと思います!」

「お前が言うとものすごく怪しく聞こえるのは何でだろう」

「なぁ!? ハル君は味方だと思っていたけど!」

「そんな仲間になりたくない!」

「分かった、姉貴! 俺と当たろうぜ!」

愁兎も復活した。

「姉弟なら大丈夫だろ? 久しぶりに姉貴と………」

「死ねこのシスコンがぁ!」

瞬きよりも速い速度で部長は愁兎との距離を詰め、拳を突き出した。

「なっ、がっはぁぁぁぁ!」

捻りを加えられた拳は、威力が倍増し愁兎を吹き飛ばした。

ドゴーン、と部室の角まで飛ばされていった。


そんな中、水原が立ち上がった。

「暑さをしのぐ、という点ではいい考えがありますよ」

珍しく水原からの提案だった。

「それは大丈夫なんだろうな」

「なんですか、鳴川 春希。そんなに私が怪しいですか?」

まぁ、いつもの行動からしたら………そう思うだろう。

「で、その考えってのは?」

いつの間にか再び扇風機の前に戻っていた部長はそう訊いた。

「海にでも行きませんか?」

その提案に、気絶している愁兎以外の全員が賛成した。









幸いにも次の日が休みの日だったので、すぐに計画が実行できた。

部長が、それならいい所がある! と言っていたので、どこに行くかは部長に任せたが………。

「遅いですね」

そう水原が言った。

今は、学校の校門の前にいる。そこには俺と水原しか集まっていなかった。

俺は集合時間5分前にきたのだが、水原はもうすでにそこに立っていた。

ちら、と水原の姿を見る。白色のワンピースに麦藁帽子。片手にはバスケットを持っていて、

なんとも清楚な感じだった。水原の私服姿はなんとも新鮮な感じだった。

「何ジロジロ見てるんですか? その目は潰すべきなのでしょうか」

いつもと変わらないトーンでそんなことを言われては怖すぎて動くことも出来ない。

「い、いやぁ……似合ってるなぁ、と思って」

「セクハラですか?」

「違うって! ほんとに思ってるから」

「………そうですか。褒めていると受け取っておきましょう」

褒めているんだけどね。まぁ、そんな水原が見れただけでも竜児は悶え死ぬだろう。

「うわぁぁぁぁ! 水原がワンピースだとぉ!?」

うるさい奴がきた………。

「やべぇ、やばすぎる。眼福じゃぁぁぁぁぁぁっ!」

いつもに増してテンションが何割増かしている。この調子で今日一日は持つのだろうか。

「ふふふ………似合ってるよ(キラリ)」

「なんで須川 竜児が言うとこうも気持ち悪くなるのでしょうか。もはや言動が犯罪的ですね」

前半は俺も思った。

「何で!? もう、水原! すきだぁぁぁ!」

「うわ、ついにぶっ壊れた!」

「土に還ってください」

バチィッ! という音とともに竜児は倒れ、痙攣を起こし始めた。

「ちょ、水原! それスタンガンだろ!」

「そうですね、もうワサビームでは効かないと思いまして」

「だからってこれは殺傷能力高すぎでしょ!」

「土に還るためにはまず死ななければ話にならないでしょう?」

そんなこと、真顔で言うな真顔で。

「おお~~い」

向こう側から部長と愁兎が走ってきた。

「悪りぃな。姉貴が水着をどれにするかなんて選んでるんだから」

「いっ、言うなぁ! それは言っちゃ駄目だって!」

初っ端から部長のキャラ変更が………そんなもの気にしない人かと思ってた。

「な、何だハルっ!その目は!」

「いや、何でもないですけど………」

そういえば部長はメイド服とかそういう系のときは嫌がったりしてたな。

「部長の水着!?」

途端、竜児が復活した。今回はめちゃくちゃ復活するなこいつ。

「俺の残り残起ざんきは5だ!」

「マ○オかお前はっ!」

「というか漢字はそれであってるのか………?」

久しぶりに部長が突っ込んだ。

「さて、バス停に向かいましょうか。もう少しでバスが来ますよ」

水原がそう促した。











バスの中はクーラーが効いていて、涼しかった。

休日の朝ということで、そんなにも混んでいなかった。

「空いていてよかったですね」

「そうだなー、快適だ。部室にもクーラーが欲しい」

「部長、それは頼んでなんとかならないんですか?」

「それは生徒会に申し込まないとなぁ。部費をくれって」

「生徒会だと!? あのハーレムがどうとかいう奴か!?」

「そこまでにしてくれ竜児………なんか怒られそうな気がしてならない」

前の席から身を乗り出す竜児はそんな危険を考えていないらしい。

ちなみに俺の横には愁兎が、後ろの席には水原と部長が座っている。

「そういえばどのくらいで着くんですか?」

俺は後ろの席に座っている部長に訊いた。

「そーだな。小一時間ってところかな。それまでまぁ、話でもしよう」




大きな太陽が照らす中、救部一行が乗ったバスは海へ行く。













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