豫讓 二、天下後生よ、義士とはかくあるべし
8.
居頃之,豫讓又漆身為厲,吞炭為啞,使形狀不可知,行乞於市。其妻不識也。行見其友,其友識之,曰:「汝非豫讓邪?」曰:「我是也。」其友為泣曰:「以子之才,委質而臣事襄子,襄子必近幸子。近幸子,乃為所欲,顧不易邪?何乃殘身苦形,欲以求報襄子,不亦難乎!」豫讓曰:「既已委質臣事人,而求殺之,是懷二心以事其君也。且吾所為者極難耳!然所以為此者,將以愧天下後世之為人臣懷二心以事其君者也。」
(訳)
それからしばらくして
豫讓はまたも(復讐を為さんと)
身に漆を塗って病気を装い、
炭を呑んで口を利けなくして
形状(声や見た目)で
本人だと悟られぬようにしてから
市に行き、乞食のふりをした。
豫讓の妻ですら
この事を知らされていなかったという。
が、豫讓は行く先で友人と出くわして
正体を見破られてしまった。
「汝は豫讓ではないのか?」
と友人が訊ねたので、
豫讓は「いかにも、私だ」と答えた。
友人は豫讓の為に涙ながらに述べた。
「子《君》の才を以ってすれば、
質を委ねて(贈物を捧げて)
趙襄子に臣従を申し出れば、彼は
必ずや子を近づけて寵愛するだろう。
そうなれば、欲しいままに
(復讐を)為すことができるだろうに。
その方が容易いのではないか?
どうしてかくも
身を損ない、苦しめてまで
趙襄子に報讐しようとするのだ。
却って(復讐を)困難に
しているではないか!!」
豫讓は言った。
「質を委ねて人に事えておきながら
それを殺そうとしては、
事える君に二心を抱くという事だ。
吾の為さんとしている事は極めて難しい。
それでも、こうする事によって、
天下や後生において、人臣となりながらも
二心を抱いて主君に事える者たちに
愧赧の念(恥じ入る気持ち)を
抱かせてやりたいのだ」
(註釈)
かっけぇえええ!!!!
復讐する相手に対しても
不義理な真似はできないんですね。
趙高や梁冀や笮融や秦檜に
豫讓の爪の垢を煎じて飲ませたい。