一〜三、伍挙の裔
一 伯夷(叔斉)
二 管仲 晏嬰
三 李耳 荘周 申不害 韓非
四 司馬穰苴
五 孫武 孫臏 呉起
列伝の六は「死人に鞭打つ」の伍子胥。
生き様も死に様も峻烈な御仁です。
1.
伍子胥者,楚人也,名員。員父曰伍奢。員兄曰伍尚。其先曰伍舉,以直諫事楚莊王,有顯,故其後世有名於楚。
(訳)
伍子胥は楚の人で、名を員という。
伍員の父は伍奢、伍員の兄は伍尚といった。
その祖先は伍挙といい、
直諫によって楚の荘王に事えて
顕明となったため、
その後世でも楚に於いて名声があった。
2.
楚平王有太子名曰建,使伍奢為太傅,費無忌為少傅。無忌不忠於太子建。平王使無忌為太子取婦於秦,秦女好,無忌馳歸報平王曰:「秦女絕美,王可自取,而更為太子取婦。」平王遂自取秦女而絕愛幸之,生子軫。更為太子取婦。
(訳)
楚の平王には建という名の太子がおり
伍奢を太傅、費無忌を少傅としていたが、
費無忌は太子建に不忠であった。
平王は、太子の為に婦人を娶らんと
費無忌を秦に遣わした。
秦の(王)女はたいへんな美貌であり
費無忌は馳せ帰って
平王に報せて言った。
「秦の王女は絶世の美女でございまして
王がおん自ら娶られるべきかと存じます。
改めて太子の為に婦人を娶りましょう」
平王は遂に自ら秦の王女を娶り、
彼女をこの上もなく寵愛したため
子の軫が生まれた。
改めて、太子の為に婦人を娶った。
3.
無忌既以秦女自媚於平王,因去太子而事平王。恐一旦平王卒而太子立,殺己,乃因讒太子建。建母,蔡女也,無寵於平王。平王稍益疏建,使建守城父,備邊兵。
費無忌は秦の王女を以て
自ずから平王に媚び、
この事から太子のもとを去って
平王に事えたのであった。
(費無忌は)
一旦平王が卒して太子が立てば
自分を殺すのではないかと恐れ、
そこで、太子建を讒構した。
太子建の母親は蔡の娘であり
平王の寵愛を失っていた。
平王は稍稍に建を疎んじるようになり
建に城父を守らせ、辺境の兵難に備えさせた。
(註釈)
前の巻に登場した孫武とともに
呉を強国にのし上げた伍子胥は
もともと楚の人。
先祖に荘王に仕えた伍挙。
「鳴かず飛ばす」の語源です。
(じっくりと機を窺う荘王を
鳥に例えた言葉)
楚の名族として知られた
伍氏だったが、突如
国家の内訌に巻き込まれてしまう。
【その祖先は伍挙といい、直諫によって楚の荘王に事え…】
〈【索隱】按:舉直諫,見左氏、楚系家。〉
索隠によると、調べるに
伍挙の直諫は左氏にみえる、
楚系の家。
【費無忌】
〈【索隱】按:左傳作「費無極」。〉
索隠によると、左伝は「費無極」と作す。
【建に城父を守らせ……】
〈【集解】地理志潁川有城父縣。【索隱】本陳邑,楚伐陳而有之。地理志潁川有城父縣。〉
地理志では、穎川に城父県がある。
索隠によると、本来は陳邑、
楚が陳を伐ち、この地を有した。
地理志では、穎川に城父県がある。
穎川の父城のことかしら。
馮異がおったとこやね。




