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淡々史記  作者: ンバ
第八十六 刺客列伝
16/274

聶政 六、姉もまた烈婦

15.

政姊榮聞人有刺殺韓相者,賊不得,國不知其名姓,暴其尸而縣之千金,乃於邑曰:「其是吾弟與?嗟乎,嚴仲子知吾弟!」立起,如韓,之市,而死者果政也,伏尸哭極哀,曰:「是軹深井里所謂聶政者也。」市行者諸眾人皆曰:「此人暴虐吾國相,王縣購其名姓千金,夫人不聞與?何敢來識之也?」榮應之曰:「聞之。然政所以蒙污辱自棄於市販之閒者,為老母幸無恙,妾未嫁也。親既以天年下世,妾已嫁夫,嚴仲子乃察舉吾弟困污之中而交之,澤厚矣,可柰何!士固為知己者死,今乃以妾尚在之故,重自刑以絕從,妾其柰何畏歿身之誅,終滅賢弟之名!」大驚韓市人。乃大呼天者三,卒於邑悲哀而死政之旁。


(訳)

聶政の姉の聶栄じょうえいは、

韓の宰相を刺殺した者がおり

国が賊の身許や姓名を承知できずに

その尸を曝して

千金を懸けている事を聞くと、

憂悶して言った。


「それは、我が弟ではあるまいか?

ああ厳仲子よ、我が弟を知るか」


聶栄は立ち上がり、すぐに韓へと向かった。


市へと辿り着けば

死体は果たせるかな聶政であったので

聶栄は尸に縋り付いて慟哭し、

深く哀しみながら、こう述べた。


「この者は、深井里しんせいり

聶政と申す者にございます」


市を行き交う人々、

諸々の衆人は口を揃えて


「この男が我が国相に暴虐を働き、

王がその姓名に千金を懸けている事を

ご夫人は聞いておらぬのか!?


どうしてわざわざやって来て、

識っているなどと申されるか」


と言った。


聶栄はこれに応じて言った。


「その事は聞き及んでおります。


しかし、政が汚辱を蒙りながら

市井の商人の間に身を窶していたのは

老母が幸いにも恙無つつがなく、

わらわが嫁に行っていなかったからなのです。


母は既に天寿によって世を去り、

妾も已に夫に嫁ぎ、

そこで厳仲子は我が弟を

困窮の汚濁の中から察挙して

交際するに至りました。


恩沢は厚く、

如何にすべきでしょうか。

(厳仲子の厚恩に、死を賭して報いる以外に

どんな道があるというのか)


士は固く、己を知る者の為に死すといいます。


今、妾がなお健在であるが故に

弟は自らを深く傷つけて

累が及ぶのを避けようとしたのです。


妾はどうして

我が身の誅滅を畏れて

賢弟の名を滅ぼしたままに

しておけましょうか!!」


市にいた韓の人々は大いに驚いた。


聶栄は大声で天を三たび呼ばわると

ついには憂いと悲哀によって

聶政の傍らで死んだ(自決した)。



(註釈)

弟が、自分を守るために

面皮を剥ぎ、腹をかっ捌いた事を

悟った姉の聶栄。


「妾其柰何畏歿身之誅,終滅賢弟之名!」


どうして我が身可愛さに

賢弟の名を滅ぼしたままにできようか!

と、絶叫して果てました。


烈士の姉は烈婦です。


お母様、どんな育て方をしたら

こんな高潔な人格になるのか

教えていただきたい。


さりげなく「黒幕は厳仲子」と

言ってしまっていますが……

どうかこの姉弟の

覚悟と仁義を汲んであげて欲しい、

というのはワガママでしょうか。

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