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淡々史記  作者: ンバ
第八十六 刺客列伝
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聶政 二、濮陽の厳仲子と孝子聶政

11.

久之,濮陽嚴仲子事韓哀侯,與韓相俠累有卻。嚴仲子恐誅,亡去,游求人可以報俠累者。至齊,齊人或言聶政勇敢士也,避仇隱於屠者之閒。嚴仲子至門請,數反,然後具酒自暢聶政母前。酒酣,嚴仲子奉黃金百溢,前為聶政母壽。聶政驚怪其厚,固謝嚴仲子。嚴仲子固進,而聶政謝曰:「臣幸有老母,家貧,客游以為狗屠,可以旦夕得甘毳以養親。親供養備,不敢當仲子之賜。」嚴仲子辟人,因為聶政言曰:「臣有仇,而行游諸侯眾矣;然至齊,竊聞足下義甚高,故進百金者,將用為大人麤糲之費,得以交足下之驩,豈敢以有求望邪!」聶政曰:「臣所以降志辱身居市井屠者,徒幸以養老母;老母在,政身未敢以許人也。」嚴仲子固讓,聶政竟不肯受也。然嚴仲子卒備賓主之禮而去。


(訳)

それからしばらくのち、

濮陽ぼくようの厳仲子がかん哀侯あいこうに事え、

韓の宰相の俠累きょうるいとの間に諍いを起こした。


誅殺されることを恐れた厳仲子は亡命し、

俠累に報復の出来る人物を求めて

遊歴したすえに斉へと至った。


斉人の中には

「聶政という勇敢の士が、報仇を避けて

屠殺人の間に身を潜めている」

と述べる者がいた。


厳仲子は聶政の門戸を訪って

(交歓を)請い、何度か往来したのちに

酒をそなえて(宴会を開いて)

自ら聶政の母の前にて酒を注いだ。


酒宴がたけなわとなると、

厳仲子は黄金百(いつ)を奉じて

聶政の母の長寿を祝おうとした。


聶政はその厚情に驚愕するとともに

怪しさを覚え、受け取りを固く断ったが、

厳仲子が頑なに進呈しようとするので

聶政は謝絶の意を口にした。


わたくしには幸いにも老母が有りまして

家は貧しいために遊歴して(斉に)客寓し

屠殺業など致しておりますが

(そのお陰で)旦夕には

甘く柔らかき(美味・芳醇な肉)を得て

母を養う事が出来ております。


親への孝養の備えがありますからには

恐れ入りますが、仲子《あなた様》からの

賜り物はお受けできません」


すると、厳仲子は人払いをさせてから

聶政にこう述べた。


「臣には仇敵がおります。

しかして諸侯国を遊歴して斉へと至り、

密かに足下の高義について聞き及びましてね。


百金を進呈しようと致しましたのは

まさに大人の麤糲それい(玄米)の費用を為し、

(ご母堂に美味しいものを食べて欲しい)

足下との交驩こうかんを得ようと考えたのです。


他意はございませんぞ」


聶政は言った。


「臣が志を曲げ、身を辱めて

屠殺夫として市井に居りますのは

ただ、老母への孝養を

幸甚に考えておるからなのです。


老母の在る限り、我が身を敢えて

人に捧げるつもりはありません」


厳仲子はそれでも引き下がらなかったが

聶政はついに受け取る事をがえんじなかった。


しかし、厳仲子は最後まで

賓主の礼を尽くして去って行った。


(註釈)

韓の厳仲子げんちゅうし俠累きょうるい

詳しい経緯は語られませんが

仇敵同士です。


俠累に殺される事を恐れた仲子は

諸国を放浪して、復讐に

手を貸してくれる義士を捜します。


そんな彼の目に留まったのが

斉に隠遁していた聶政。



大金を積んで誼を求める仲子でしたが

聶政は


「あたしゃ屠殺業やってるんで

カーチャンを食わしていくには

困らないんすよ。


それに、老いたカーチャンを放って

人に仕えたりなんてできないっす」


として、金を受け取らず。



見事に振られてしまった仲子ですが

最後まで礼を尽くした振る舞いは

聶政の胸を感銘ちました。


身分が全然違うのに

遠路はるばるやって来ては

対等の付き合いを示しているのが

なかなかに粋だと思います。

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