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第48話 迷宮読解(アリアドネ)


 街を出てダンジョンのある丘まで来た。

 入り口を見張っている衛兵に挨拶しながら中へ入る。


 一階はごつごつした岩肌の洞窟。

 ひんやりした空気の中、僕は立ち止まって呟く。


「さて。アリアドネってどうすれば――うわっ!?」


 アリアドネと呟いた途端、目の前に半透明の黒い立方体が現れた。縦横一メートルほど。

 よく見てみると、立方体は50層に分かれていた。

 ――ダンジョンと同じ階層だ。


 そして、青い線が一番上から一番下へと複雑に上り下りしながら続いている。

 これが、ボス部屋までの最短経路かな?

 経路の周囲だけ通路や部屋が表示されていた。

 全体まではわからないようだ。


 また各層に赤い点や黄色い点、白い点が表示されている。


「この点はなんだろ……ん。赤はモンスターか」


 散らばった赤い点の一つに注目すると、マッスルラットだった。

 また下の階層の赤い点に注目するとオーガがいた。

 しかもそのオーガまで行く青い矢印の経路が自動的に設定される。経路に接する通路と階段、部屋だけは表示される。


 また経路の途中にある黄色い点はトラップだった。解除方法まで表示されている。

 白い点は宝箱のようだった。


「す、すごい……これは迷わないや」


「なに?」


 ミーニャが首をかしげて尋ねてきたので、僕は立方体を指さしながら言った。


「アリアドネの能力だよ。この立方体に魔物、罠、宝箱など、ダンジョンの情報が表示されてるんだ」


「私には見えない」


「そっか。僕だけなんだ……それでも、すごい」


「ゴミは?」


「あー、どうだろ? 表示できるのかな、ゴミの表示は――あ」



 ゴミを表示と考えると、ダンジョン全体に茶色い点が出た。

 折れた剣、穴の開いた鎧、曲がった盾、ちぎれた袋など。

 ゴミまで全部表示されたようだった。


「すごい! ゴミも表示された――あ、一階にまだ拾ってない短剣がある! こっち!」


 僕は指さして歩き出す。

 ミーニャは赤い着物の短い裾を揺らして颯爽と前に出た。


 僕はついていきつつ、立方体を見ながら言う。


「次の岩を左に曲がって……その先にねずみが2体いる」


「りょうかい」


 ミーニャが左右の腰に差した剣の柄に手を添える。

 そして知らせた通りに敵がいて、ミーニャが瞬殺。


 さらに進むと、奥の壁際に錆びた短剣が落ちていた。岩と岩壁の間に挟まっててわかりにくかった。

 回収してバッグに入れつつ言う。


「これ、効率めちゃくちゃいいかも」


「ん。歩き回らなくて済む――次は?」


「えっと、逆方向、来た道を戻って今度は右の洞窟に入ると外套が落ちてる」


「ん、りょかい」


 ミーニャがすらりとした脚を伸ばして歩いていく。

 僕も慌てて、あとを追った。



 ――こうして、ゴミの位置と魔物の位置、トラップの位置がすべてわかったので、今までの3倍から5倍は効率よくダンジョンを巡った。

 上階層は何度も入ってるから古いゴミは拾いつくしたと思っていたのに、まだまだ多かった。

 苔むして岩かと思っていた兜や、崩れた壁の下敷きになっていた背負い袋を拾った。


 超効率的にダンジョンでゴミ拾いしていった。


       ◇  ◇  ◇


 昼過ぎのダンジョン入り口。

 僕らは地下5階まで回っただけで帰ってきた。


 すでに拾いつくしたと思っていたのに、かなりの収穫があった。

 武器防具道具合わせて100個以上。

 宝箱も残さず拾えた。


 まあ、まだまだダンジョンには宝箱が多いけど。

 特に地下10階より下に、大量の宝箱があった。


 ただ、他の冒険者は緑の点で表示されていたが、みんな地下10階より上にいたので、当分それらは取られないと考えた。

 まあここは初心者の街だし。

 ダンジョンが深くなったからと言って急に潜れたりはしないだろう。



 僕はマジックバッグをぽんぽんと叩きつつ言う。


「アリアドネってすごいね。これがあればどこのダンジョンでもゴミ拾いできそう」


 するとミーニャがジトっとした目で僕を見た。


「ゴミ拾い限定……レアスキルが泣く」


「なんかごめんっ――じゃあ今度は宝箱や強いモンスター倒そう」


「ん。楽しみ」



 それからミーニャが入り口を出て日差しを浴びつつ伸びをした。

 僕は隣に立ちながら尋ねる。


「ねえ、まだ日は高いけど今日はもう終わりでいい? だいぶ拾ったし」


「ん。問題ない」


「ありがと。リノといろいろ話し合いたいんだ」


 婚姻届けのこと、結婚式のこと、その他もろもろ。

 指輪も治さなきゃ。

 素敵な指輪になったらいいなと思う。



「わかった」


 無表情のままこくっと頷くと、ミーニャは尻尾をゆらゆら動かしつつ街へと続く小道を降り始めた。

 僕も続く。


 それから冒険者ギルドによって魔物の素材を売ると、店へ帰った。

 リノの笑顔を楽しみに思うと、自然と足が早くなる。


 しかし店は予想外に、大変なことになっていた。


ブクマと★評価ありがとうございます!

ポイントが5万5000、ブクマが1万4000越えてました!

月間ジャンル別も3位! 応援ありがとうございます!


次話は明日更新

→第49話 ドン引きの宣伝効果

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作者の別作品もよろしく!
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おっさん勇者の劣等生!~勇者をクビになったので自由に生きたらすべてが手に入った~最強だと再確認したから戻って来いと言われても、今さらもう遅い!
 結果を出してたのに評価されなくて追放されたおっさん勇者が、再評価されるお話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一章がいい終わりだった。 短い中にも、人物像がよく浮かび上がっていると思った。 [気になる点] 二章からラストプリンセスを巡って世界巡礼かと思ったら、いきなりヒールで終了って、何だこりゃ…
[気になる点] チート過ぎて、なんでもあり。 ドキドキ、ハラハラ感がまったくなくなりました。
[良い点] 登場人物(キャラ)が良いと思った 特にミーニャが凄くいい味出している 宿屋や武器屋の人も好感が持てた [気になる点] 主人公がヒールで治る事を前提とした自己犠牲特攻バトルは物語の趣旨から外…
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