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極めたヒールがすべてを癒す!~村で無用になった僕は、 拾ったゴミを激レアアイテムに修繕して成り上がる!~【書籍化決定!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第一章 ラース生存編

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第32話 囚われの姫の懐柔

 深夜の地下室。

 僕がイフリースに「どうしてこんなところにいたのか」と問いかけると、彼女は長い赤髪を無造作に手で掻き上げた。


「召喚師に一定時間働くだけの契約で召喚されたのに、石に閉じ込められて。ここで延々使役されたわ。――契約違反よっ!」


「そうだったんだ……なんだか、ごめんね」


「まあ、いいわよ。あんた、アタシとは直接関係ないんでしょ?」


「うん、この家、今日買ったばかりだからね」



 僕が答えると、イフリースは赤い瞳に好奇心の光を宿して尋ねてきた。


「ねえ、あんた、名前は?」


「僕はラース。後ろにいる猫耳がミーニャで、金髪で世界一可愛い美少女がリノ」


「ふんっ……まあいいけど。――んで、アタシを治してどうする気なの?」


「えっ……そこまで考えてなかった。えっと、無理に召喚されて働かされたなら、戻る場所があるなら戻ってくれていいよ?」


 イフリースが、ふっくらした赤い唇を舐める。妙な色気が発散された。


「それはちょっと、もったいないわねぇ? アタシをもっと使ってくれていいのよ? ここでも、ベッドの上でも――あんたなら、ヒール唱えつつアタシの身体を楽しめるんじゃないかしら?」


 大きな腰を振りつつ、妖艶に近寄って来る。赤い瞳は女豹のような眼光を放っていた。



 しかし、後ろからリノが金髪を乱して叫んだ。


「な、なにを言ってるんですかっ! ラースさんをベッドの上で相手するのは、あたし――はっ!」


 言い終えたリノの顔がみるみる赤くなっていく。


 イフリースは、すらりとした手をリノに向ける。凝縮された灼熱の炎が燃え上がった。


「あらそう? あなたが邪魔みたいね。――アタシのために消えてくれないかしら?」



 だが僕は、彼女の伸ばした手を掴んだ。

 燃える手を握り締めると、しゅうしゅうと焼ける音がした。


 ヒールを唱えつつ、イフリースを睨む。


「ヒール……イフリース、一つだけ言っておく。僕が世界で一番大切だと思っているリノに手を上げたら、僕は君を絶対に許さない」


「おお、怖っ! ――冗談に決まってるじゃない」


 イフリースは火を消して手を降ろした。

 安全を確認した僕はうなずく。


「わかってくれたならいいよ。……そこで、提案なんだけど」


「なによ?」


「この地下室で地下水をあっためてお湯として使ってるんだ。報酬は払うから、その仕事続けてもらえないかな?」


 イフリースは悪巧みするような笑みを浮かべた。


「くくくっ……じゃあ、毎日50回、今のヒールをアタシにしなさい。そうしたら――」


「うん、いいよ」


「え?」


「ヒールヒールヒール……」


 全快してるように見えるけど、ヒールして欲しいそうなので僕は50回唱えた。

 見た目はほとんど変わらなかったけど、髪や肌の色つやが良くなった気がした。


 イフリースは口をポカーンと開けて、されるがままにヒールを受けていた。

 終わってから、赤い唇を震わせる。


「い、いや……あんたなんでそんな簡単に、大量の魔力分け与えてるの!? 嬉しいけどっ、すっごく嬉しいけど! ――ばっかじゃないのっ!?」


「いや、ただのヒールだし。少しでも役に立てるなら、いくらでもしてあげるよ」


「……なんなの、この人」


 イフリースは憑き物が落ちたかのように、肩を落として呆れていた。



 後ろからボソッとミーニャが言う。


「たぶん、自分で何をやってるか、全然わかってない人」


「そうみたいね……いいわ。お湯沸かしだっけ? ヒールくれるなら毎日やってあげるわよ」


 呆れたように赤い髪を手で梳きながらイフリースは言った。


「とても助かるよ、ありがとう」


 僕が笑顔で言うと、イフリースは困ったように頬を染めて視線を逸らした。



 その後、話し合ってイフリースは地下室で寝起きすることになった。


 帰り際、一つ気になったことがあったので尋ねる。


「……出てきたのは、今回が初めて? それとも前に出たことない?」


「そうね。前にも一度、ちょっと力が溜まったから燃やしてやったわ。反動ですぐにまた眠りについちゃったけど」


「ああ……やっぱりそうなんだ」


 ここの火事って、イフリースの仕業か。


 ――絶対に、他人には言えない。

 黙っていようと思った。



 イフリースと別れて、僕らは一階へと続く階段を上った。

 僕の後ろにリノとミーニャが続く。


「まさか、炎の精霊を使ってお湯沸かししてたなんてね。びっくりしたよ」


「ラースさんが無事でよかったですっ――本当に、よかったですっ」


 僕の腰に、リノが後ろから華奢な全身で抱き着いてくる。

 少し涙声だった。心配してくれていたらしい。


 ――その気持ちが嬉しかった。



 僕は照れつつ頬を掻く。


「うん……ヒールで何とかなる相手で良かったよ……ミーニャも大丈夫だった?」


「私は何ともない――けど、一つ言っていい?」


「なに?」


 肩越しに振り返ると、ミーニャがジトっとした半目で見上げていた。


「ラースはすごい。でも、すごくダメ」


「えっ、なんで!?」


「私ならイフリースをソロで倒せた」


「ええっ!? 彼女、めっちゃ強かったよ!?」



 ミーニャは着ている赤い衣装を引っ張った。紅の模様が美しい。


「確かに全快ならAランクレイド級、弱っててもBランクレイド級はあった……でも、この服たぶん、火の攻撃通らない」


「あっ! そうだった! 紅乙女戦装束は【火抵抗:100%】だった! 忘れてた!」


 ――って、そうか!

 だから僕とリノが遅れて到着した時、ミーニャは平然と戦えていたんだ!



 ミーニャが淡々とした声で言う。しかし尻尾は怒ったように、ぶわっと膨れていた。


「……パーティーメンバーの能力を覚えて戦いに生かすのは、パーティー戦闘の基本」


「ご、ごめんなさい」


 僕がしおれていると、腰に抱き着いたリノが笑顔を弾けさせた。


「どんまいっ、ラースさん! ですっ! 地道に一歩一歩、知っていけばいいんですよっ。――それに倒したらお湯が使えなくなっちゃうところでしたっ。やっぱりラースさんはすごいですっ」


「そうだね。ありがとうリノ。やっぱり、リノは可愛いよ」


「ふぇぇ……」


 リノは顔を真っ赤にして、しがみつく細腕に力を込めた。


 僕は手を後ろに伸ばしてリノの金髪を撫でつつ、愛おしさを噛みしめる。

 ――絶対に、この小さな可愛いさを守り抜こうと思った。

ブクマと★評価ありがとうございます!


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次話は明日更新

→第33話 僕の城

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作者の別作品もよろしく!
日間1位! 週間1位! 書籍化!
おっさん勇者の劣等生!~勇者をクビになったので自由に生きたらすべてが手に入った~最強だと再確認したから戻って来いと言われても、今さらもう遅い!
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― 新着の感想 ―
[良い点] ひだるま [一言] うおすげえ 耐久しながらヒールとか根性ありすぎる。 これだけで勇者の資格あるわ
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