俺はもう勝手に生きる!
「いきるって、だるいな...」
今俺が一人ベットの上でつぶやいた言葉こそ、
俺が38年生きてきてたどり着いた最終的な結論であった。
今までいろんなことをしてきた、冒険者、医者、王都の警備兵、奴隷商人の助手 etc...
どの職も続いて数年だったが、あれもこれもやりがいがあり、俺も職に全力で向かっていったつもりだ。
おかげで大体の職はある程度の地位まで上り詰めることはできたが、俺は気の合わないやつとは立場が自分より上だろうと下だろうと対立してしまう性格。最後には問題を起こして解雇になった。
今は一応冒険者という職に就いていることになっているが、もう依頼は1年ほど受けておらず、ただのニ-ト状態。ギリギリ貯金を切り崩して生きている、といったところか。
正直なところ、もう仕事をやる気はない。だが、このままだと宝くじでも当てない限り、数年のうちに貯金が底をつくことは火を見るよりも明らかであった。
そして何よりもだるいのが、人。
俺が住んでいるところはこのギニー大陸にある4つの国の左上にある王国、リンガ王国のちょうど真ん中に位置する都市、ダンダリ。
ここは昔から貿易の中継地点として栄えていて、今も他の国々やリンガの人たちで街は騒がしさを失うことはない。
そしてここは、俺が生まれ育った故郷なのである。
俺は、ダンダリの中ではそこそこ、というかダンダリを統治している領主の直属の部下の四人兄弟の長男として生まれた。
そのため、俺の顔はダンダリの人々になかなか知られていて、正直、ダンダリの中で少しでも羽目を外すとすぐにバレ、親とか領主とかに軽く咎められる。
何よりおれは38だ。親がもういい年なんだから結婚しろ、早く仕事を継げ、大人になれ、子供を作れとうるさい。
俺はこどもはそこそこ好きだが、欲しいとは思わない。広場のベンチでくつろいでいるときに目に映るくらいで十分だ。
この抱えた問題のことを考えた俺はとあることを思いついた。
親のしがらみや、ダンダリの人々を抜け出すために、どこかに引っ越す。そして、親の相続権とかその辺の色々を全部弟たちに譲渡する。これしかない。
弟たちは俺とは違ってとても真面目でいい子だ。親の仕事を継ぐには俺よりも圧倒的に適任だと思う。
そうと決まれば即実行だ。俺はその日から二日後までには準備をすべて終わらせ、最後に実家や弟たちに手紙を出し、出発する。これで行こう。
こうして俺、アドルフ・キースのバルバラでの生活が決定されたのであった。
‘‘ ...私、アドルフ・キースは、今後、両親の一切の相続権を4人の弟妹達に譲渡します。
最後に、私はしばらく旅に出ようと思っています。そのうち帰ってきます。ではその日まで。‘‘
アドルフ・キース
アドルフが実家に送った手紙より一部抜粋