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月光の下、大陸の東  作者: wildgun
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 約3週間前のあの日、不意に異変がこの世界に襲来してきた。



 大震災の後に、最初に直面するのは絶叫ではなく、人々は死ぬほど沈黙に包まれるのだろうか。〈エルダー・テイル〉の〈真穿事件〉が起こった後も、このような状態になったと言えるだろう。三秒、五秒、半分、鼻息する音でも聞こえるほど静かさの後、人込みの間では様々な咆哮が急に噴出した。これがパニックによるごく本能的な反応だろう。理性が残っている人でも、他人の狂乱に刺激されて、一緒に喚き叫んできた。非難、仰天、さらに罵詈雑言も放っていった。ただの咆哮と比べ、少なくとも、理性が戻って、激しい気持ちを人間の言葉で表すのができた。



 賽博の反応は、他の人と比べて少し遅かった。何か原因というと、彼の視野が大きくて赤い何かに遮られた。目の前ぼやけて見える三つの小さい孔の中に、何か白斑がさっと縦に消えた。まもなく、頭の大きさよりすこしだけ広い閉鎖空間の中に、響いてきたのは人の騒々しい声だった。


 頭から正体不明の何かを脱いで、それは南瓜仮面だった。下の大きな穴から頭を包んでいた。ハロウィン時期よく見える仮装で、見慣れるデザインで、上からの蔓の末端に一つライトがぶら下がっていて、ほの明るかった。南瓜仮面に掘られた笑い口は、なんか栄光の象徴とか、古参の象徴とか?財力のある象徴のようだった?



 なるほど!これは〈エルダー・テイル〉ゲーム時代の賽博·卡雷庫特というキャラクターが被っていたハロウィンイベントの南瓜仮面で、何年前のハロウィンイベントでの課金アイテム、しかもある確率でランダム型アイテムだと思い出した。さらに、期間限定で復刻しなかった超レアのアイテムとも言える。そのため、単なる性能を見れば、レベル10ぐらいのプレイヤーの〈製作級〉〈補助装備〉のアイテムに等しい。にも関わらず、ゲーム時代の賽博はずっと被っていて、古参課金ユーザーである存在感をそっと誇示していた。


 最古参者ではないけど、やや古参プレイヤーである賽博·卡雷庫特。このキャラクターの名前、実は英語「Cyber Character」(仮想人物)の発音を中国語で表記するものだ。つまり、これは「名前」とは言えないだろう。しかし、中学時代の彼にとって、これななんかめっちゃかっこよくて、ファンタジー感溢れる名前だったけど、「中二病すぎる!!!!!」と、大学時代の彼がそう覚えてきた。もし今後のゲームの遊ぶ習慣でしたら、絶対その前にいろいろゲームの情報を集めたりして、ゲームの世界観や名前の当て字の「翻訳感」に合うように名付けるだろう。さらに、それぞれのキャラクターの名前もシリーズにするだろう。何年あとの将来、ゲームの運営し続けられれば、現時点の自分を振り返すと、同じく「中二病すぎる!」と評価するだろう。いままで二十年以上に運営された〈エルダー・テイル〉は、確かに、彼の学生時代からの人生と共に歩んできて、人生の変化もゲーム内に刻んだ。かつ、ゲーム業界の利益モデルについての考えや、ゲームの従業員やプレイヤーさんに対する世間評判の移り変わりも、そこに刻んでいた。


 ただいま、この南瓜仮面は、まさに手に持っている。


 大騒ぎになる周りの状況を見て、一つの事実を確認した。彼が〈エルダー・テイル〉の世界に入って、ゲームキャラクターだった〈冒険者〉賽博·卡雷庫特になった。



 次の瞬間、いくつのファンタジー小説やSF作品の設定を脳裏に浮かんだ。ワームホールか?マトリックスか?バーチャル・リアリティか?しかし、どちらの仮説も、目の前の状況を把握に役立たないだ。緩やかな弦楽に抑揚のある木管楽器のあるリズムが思い浮かんできて、だんだんとはっきり聞こえるようだ。これはゲームのログイン画面に流れるオープニング曲であって、記憶の中に蘇ってきて、まるでこの世界の呼び掛けのようだ。目の前の事態は、異変ではなく、大災害出なく、これはユーララの女神様の導きと贈り物に違いない。今、この親切な世界を抱擁したい、と〈施療神官〉賽博·卡雷庫特がこういう感情が沸いている。今まで注目しているのはまさにこの世界だろう。 接触しよう、探索しよう、抱擁しよう、没入しよう——この〈エルダー・テイル〉世界に。



 賽博·卡雷庫特、天啓を得たようだ。


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