『悪ガキ帝国』からのお誘い
桜が舞う春、私は通学路を歩いて帰っていた。
桜は地面に積もっていく。
「おらおら、里奈さんよお。ぼけーっと何みてやがる?」
学年一の悪、染谷拓海だ。
自転車のかごには、コーラが三本置かれていた。
「別に、ただアスファルト見てるだけですが。」
「ちっ、それだけか。つまんねえの。」
拓海は舌打ちすると、自転車に乗ってどこかへ行ってしまった。数人のお供と共に。
お供っていうのは鈴木拓真たちのこと。
だいたい拓海がいる場所には必ず拓真がいるのだ。
「ねえ、里奈。」
竜馬のお供の1人、松井綾香が話しかけてきた。
「少し、話があるの。」
綾香は私を公園のベンチに座らせると、炭酸系のジュースを買ってくれた。
「話って何?」
「お願いがあるの。拓海率いる『悪ガキ帝国』に所属してほしい。」
「えっ。それって悪ガキになれってことでしょ。いやだよ。」
「お願い。メンバーが不足してるのよ。悪ガキって悪いヤツばかりってイメージがあるけどそうじゃない。拓真は遊びまくるだけじゃなくて、大悪党を撲滅するのに身を粉にしているのよ。」
「どうやって?」
「町中を見回って、悪事を働くヤツがいたらこらしめるのよ。」
「でも暴力はいけないでしょ。」
「私、空手習ってるのよ。師匠からはね、技は道場意外では使うなって言われてる。でも、悪をこらしめるためには、いたしかたないこと。」
「・・・分かった。そこまで言うなら、入ってあげる。」
「ありがとう、里奈。この恩は一生忘れないからね。何かあったら相談してね。話を聞いてあげるから。」
「う、うん。」
それが、恋愛に発展するなんて・・・
この時私は何も知らなかった。