海の見える駅で待ってる
短編、1話完結です。
海がみたい季節だな。っと思い、書いてみました。
「美月?」
ガードレールにもたれ掛かり、海を見ていた私に誰かが声をかけた。
声がする方を向くと、私の心臓が速さを変えた。
「やっ…やすひろ君?」
「久しぶり。成人式以来?」
同級生の康博だ。私の初恋の人…。
「うん。そうだね…どうしてこんなとこに?」
「ばあちゃんの墓参り。もうすぐ命日だから。美月こそ、結婚して隣の県にいるってきいたけど」
「お盆休みもらって、少し帰ってきたの。来週にはまた戻るんだ。」
「そっか……。美月…何かあった?」
「えっ?どうして…」
「何か…泣きそうな顔に見えたから…」
美月は海を見ながらぼんやりと言った。
「私…離婚したんだ。仕事もあるから、すぐには引っ越しできないんだけど、年明けたらこっちに帰ってくるつもり」
「どうして…」
「旦那が出張先で女作ってたの。出張がないときも嘘ついて、女のとこに行ってたの。その子は料理上手で、専業主婦になるのが夢だとかいってる子なんだって…。女が仕事して何が悪いの?共働きの何がいけないの?私はただ、今の仕事が好きなだけなのに……。」
「美月は悪くないよ。」
「…ありがとう…」
「美月…今から飲みに行かないか?気分転換に。」
「えっ…でも、康博君もうすぐ日が暮れるし、奥さん心配するんじゃあ…」
「俺がいつ結婚したって言った?」
「してないの!?」
「悪かったな。三十路で未だ独身で。」
「あっ、いや…ごめん…。じゃあお言葉に甘えて…」
「後、その呼び方やめてくれる?他人行儀で嫌なんだけど。」
康博は不機嫌そうに頭をポリポリとかいた。
「えっ?やっ…ちゃん?」
「そうそう!あ~何か嬉しい!」
照れながら笑う康博の顔にまた心臓が変な動きをしだした。
「行こう!」
グイッと美月の手を引っ張って康博は歩き出した。
「美月?」
「何?」
「早くこっちに帰ってこいよ。俺、待ってるから…」
そう言った康博の顔が赤くなっていたのは、夕日のせいだろうか。
そうだ。きっとそうだ。だって私の顔も赤くなってるもん…。
読んでいただいてありがとうございました。