今日から勇者
001
「おはようございます。」
誰かが僕を起こしている。まだ眠たい目を開けると、そこには、エプロン姿のメイドさんがいた。
「???」
僕は、まだ夢を見ているんだ。と、思っていた。
「勇者様。今日は、宮殿のパーティーにご招待されてます。」
「!!」
僕が、いつも寝てる布団と違う。それに、僕の部屋の天井とも違うぞ。
「!!。」
僕は、何が起きたのかわからなくなった。布団の中から、慌てて飛び起きた。
「なんだ?これは?」
僕は、夢だと思っていたが夢じゃなかった。
僕は、昨日の夜の事を思い出していた。
「ただいま。」
と、お母さんに声を掛け二階の部屋に駆け込む。
「遥人、宿題を先にしなさいよ。」
階段を上がっている僕の後ろから母の声がする。
「はーい。」
僕は、中学三年生だ。今年は、高校の受験を控えている。
僕は受験生なのに、親戚の叔父さんに貰ったゲームに嵌まっていた。主人公が、勇者になって、魔王を倒しに行くゲームだ。
「やった!裏ステージを発見したぞ。」
ゲームには、隠れキャラや裏ステージが有ることがある。
「何?このステージは危険です?」
画面に現れたテロップの意味がわからない。
僕は、気合いを入れて裏ステージをクリアした。
「よし、今日は終わろう。」
遥人は、眠くなったので寝ることにした。一つだけ、忘れていることがある。それは、ゲーム本体の電源を消し忘れたことだ。
「むにゃ、むにゃ。」
遥人が、寝ているとゲーム機の本体が怪しく光だした。
何処でどうなったのか、遥人は気付いていなかった。
「勇者様。こちらに、お着替えを準備しています。あと、朝食のご準備も出来ております。」
メイド達は、テキパキと朝の仕事をこなしている。
「勇者?僕が?」
これは、誰かのいたずらか?それとも、まだ夢の中か?
「すみません。僕は、いつから勇者なんですか?」
メイド達は、最初はキョトンとしていたけど、
「アハハハ、」
と、笑いだした。
「勇者様。朝からご冗談が好きですね。」
カーテンを開け、窓を開けながら笑顔で答えた。
僕は、メイドに促されて一階に降りた。部屋を出て、改めて驚くことばかり。
「物凄い豪邸だ。いや、豪邸と言うより宮殿か?」
メイドに案内されたのは、テニスコートの三つ分くらいあるだろうか?物凄く広い部屋。天井には、豪華なシャンデリアが三個。部屋の真ん中には、大勢が座れるくらいの豪華なテーブル。目を疑うことばかりだ。
僕は、テーブルの端に一人で座っている。
「ちょっと、僕だけなの?他には?」
一人のメイドが、目の前のグラスに水を注いでいる。
「何をおっしゃいますか?昔から、一人ですよ。」
メイドが、水を注ぎ終わると部屋の奥の扉が開いた。
「!!」
何人ものメイド達が料理を運んでくる。僕の目の前には、いくつもの料理が並べられていく。今までに見たことのない豪華な料理ばかりだ。
「こんなに、朝からは食べれないけど。」
メイドは、賑やかに
「残されてもよろしいですよ。」
理由はわからないけど、僕の勇者生活が始まってしまった。