悪魔の願い
私の名前はs太郎。今ビルの屋上で柵をまたぎ人生を振り返っている。
あぁ、それにしてもひどい人生だった。幼い頃母親が死に、父親の借金を背負わされ、一生懸命働いた会社は倒産し、なけなしのお金を貸した奴には逃げられ……挙げたらきりがない。まぁ、「神様」に見捨てられたのだろう。きっと世界から死ねと言われている。
私は深呼吸をしてから歩きだそうとした……その時、目の前にこの世のものとは思えないひどいナニカがいた。私があっけにとられている内に、ナニカは自分を「アクマ」と名乗り話しかけてきた。
「おい、お前死ぬのか?」
「ま、まぁ見ればわかるだろ。」
「ならば……」
「ちょ、ちょっと待て、『願いを三回叶える代わりに命をくれ。』なんてごめんだ。死んでまで命を他人に使われるのは嫌なんだ。」
「おい、そんないつの時代の話だよ」
アクマは嘲笑いながら言う。
「お前は死ぬまで願いを叶え続ける。ただそれだれ。」
「は?何言っているんだ。そんなうまい話があるか。」
「お前は私に選ばれた。お前は死ぬまで好きなように願いを叶え続けたら、私も幸せになるんだ。つまり、ウィンウィンってことだ。」
「本当か?まぁ、いいや。最後の最後に信用してみるか。別に騙されてもどうでもいいし。」
「はっはっはっ、ずいぶん人生を悲観しているんだな。まあ良い。では、手を出せ。」
私は言われるがままに手を出し、アクマがその上に手をかざした。
「これで契約完了だ。早速なんか言ってみろ。」
「じゃあ、金だ、金。俺は金がほしい。」
そういうとスーツのポケットがズシッと重くなる。 お札だ!両ポケットに溢れんばかりの一万円札があった。
「う、嘘だろ。」私はアクマに礼を言い、急いで銀行に行き、借金を返し、溜まりにたまった家賃、滞納した税金等を一気に払った。
「あぁ愉快。こんな清々しい気持ちは初めてだ。」
私がお金も何度も願い事をした。豪邸を買い、キャバクラで遊び、好きなものを買い漁った。
そしたら、金目当ての女が集ってきたので、理想の女を願い、真の友情も願った。あぁ、幸せだ。神よ、本当にありがとう。
地位も名誉もすべて手に入れ、私は、一躍有名人になった。さまざまな所に、募金し、人から感謝されるなんて、日常茶飯事。誰もがs太郎様と土下座している。というかさせている。
アクマからあってから約一年。やりたいことは一通りやり、願い事をする頻度も減ってきた。そんなある日、アクマがやって来た。
「おい、最近願いが減っているぞ。もっと願え!」
「いやー、でももうやりたいことはないし、別に……」
「何を言っている。お前は、死ぬまで、願い続けるんだよ!」
「えっでも……」
「でも、ではない。さぁ、願いを言え!言わないなら、お前を死より辛い苦痛を与え続ける。」
「じゃ、じゃあ。……」
そこから地獄が始まった。願いを絞りだし、考え続けるという地獄を。
あれがほしい。これがほしい。世の中にあるものを常にねだり続ける。自分が、自分では無いようだ。
あぁ死にたい。辛い。「死にたい」と願うと、ただ痛みだけがやってくる。死にたい……
地獄がはじまってから何年、いや何十年たっただろうか。そんなことを考えずに、「願い」だけを考えていたある日、またアクマが来た。
「ど、どうか許してくれ。」
「おいおい、そんなもの人間。 私は、人間の欲を食べて生きる生物。だから、もっと欲を出せ、我の願いはそれだ。もし、できないのならば、死よりも辛……
「それでいい、それで良いから、私を解放してくれ。」
「そうか、愚かだな。人間の欲なんてそんなものなのか。じゃあな。」
そう告げ、私は次の人間を探すのだった。




