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君と出会う運命は真実に続く道  作者: 氷結みかん
壱ノ幕ー昔から変わってないと思うけれどー
5/8

第4話~出来ること、出来ないこと~

初めに。

今話の投稿が二日ほど遅れましたこと平に謝罪いたします。居るかどうかは分かりませぬがお待ちいただいた皆様には御礼と共に申し上げます。


それでは本編をどうぞ。

 目覚めて教会を出たときには既に陽は落ち見上げれば満天の星空が広がっていた。日中は平和なこの街道も夜には半魔物化した野犬等が出没するらしい。とはいってもよほど大きな群れにでも出くわさない限りは駆け出しの冒険者や旅人であっても危機に陥る方が難しいらしい。


「知識として知ってるだけの経験ゼロな俺にとっちゃ十分脅威だっての。」


 足早に街へ戻った俺は幸い何とも遭遇しなかった。

 しかし街の東門まで戻ってきたところでその歩を止めた。例の野犬と思われる遠吠えが近付いてくる。無視して街に入ってしまえば追ってくることは無いだろうけど俺は情報が欲しかった。


「俺に出来ることと出来ないことか。」


 鞄から短剣を取り出し鞘から抜く。調理用の包丁を分厚くして長さを倍にした。その程度の剣だ、あくまで護身用レベルのそれを構え門を背にして待つ。少しでもやばそうなら脱兎の如くだ。




 やがて追ってきたであろう野犬、仮に魔犬とでもしておこう。そいつは俺に敵意があると悟ったのか低い唸り声をあげて少しずつ距離を詰めてくる。所詮強い犬程度の相手に情けないことながら滅茶苦茶怖い。


「駆け出しとかいっても冒険者ってすげぇな。」


 素直にそう思った。最低でもこんなのがわんさかいるところに乗り込んで宝を探したり依頼をこなしたりするんだなと。


「Gaaaaaaaaaaaa!!」


 睨み合いに痺れを切らしたのか魔犬は数歩の助走から雄叫びをあげまっすぐに飛び掛かってきた。


「取り敢えず。1発食らっとけ!!」


 流石に予想していた動きだったので冷静に右へ二歩。元々立っていた場所を魔犬の発達した爪が薙いでいく。直後にがら空きの横っ腹に力任せに短剣を叩き込む。柔らかな腹に短剣がズブズブと突き刺さる嫌悪感たっぷりの感触の後に骨にぶつかるガチンッという衝撃。バキンと言う嫌な音と共に根元から折れた刀身が刺さったまま横からの衝撃で地面を転がった魔犬は二三度痙攣して絶命した。脳が情報を整理する前に生々しい感触の残った手から否応なしに理解させられる。俺は今命を奪ったんだということを。


「今晩は肉は食えないな。」


 そう呟いた俺は冷や汗を拭い街の門を潜った。



 自由討伐(フリークエスト) 魔犬一頭の討伐 了












 翌朝、お釈迦にしてしまった短剣の変わりを探そうと朝早くから商業区画を練り歩いていた。折れて刀身の無くなった短剣は命を奪っている事を忘れないための戒め兼御守りとして捨てずに持ち歩くことにした。


「平均的な筋力しかないし大振りのは使えないし、かといって東国伝来の刀も技術がなくて巧く扱え無さそうだよなー。」


 取り回しのしやすさを重視してカットラス、予備兼作業用としてのマチェット。斬撃が通らなかったときの保険としてメイスを購入した。防具に関しては動きの阻害を抑えた堅革(ハードレザー)ベストを選んだ。戦争や大規模討伐に行くわけでもないので十分だろうと踏んだ。追加で傷薬や包帯、サラシ等の応急処置(ファーストエイド)の道具を揃えて酒場へと足を運んだ。


「おうあんちゃん。教会行ってきたんだってな?」


 店主のオヤジは相変わらず元気良いな。ゲラスのおっさんと良い勝負だ。


「何処からそんな情報仕入れて来るんだよ。それよか依頼掲示板(クエストボード)は奥のアレで良いのか?」


「あってるぜ。ただあくまで街の酒場で扱えるレベルのしか無いけどな。稼ぎの良い依頼なら町役場の裏手にある紹介所に行くんだな。」


「こっちので良いんだよ。右も左もわかんねぇナガレがいきなり国営管轄依頼(オフィシャルクエスト)なんて受けねぇよ。民間で十分。」


 そう返して依頼の表示されている大型ディスプレイに歩み寄った。難易度分けされている見出しにタッチして初心者向け依頼をピックアップしていく。詳しい危険度、目的地、収集アイテム、討伐目標の数などを見比べて自分のタブレットに情報を打ち込んでいく。


「これにするか。」


【常設依頼:海蛞蝓(シースラッグ)の尾集め】

 傷薬の原料となる海蛞蝓の尾を買い取っています数量は最低10本から。

 依頼主:ルーシア商会薬剤部門


 ポートルーシア南西の海岸にある洞窟、

 通称【海鳴りの洞窟】に出現する低ランク魔物(モンスター)の素材集めだ、規定数に達していれば上限がないので戦い慣れに使うにはもってこいだろう。

 携帯端末(パーソナルデバイス)を掲示板に接続して受諾手続きを済ませる。


「オヤジ、取り敢えず何か活力が付く(モン)頼む。」


「はいよぉ!ガッツリ肉も野菜も摂れる名物のルーシアサンドだ、持っていける様に包んであるぜ。」


「ありがとう、助かるよ。」


 南大陸の海岸線に広く生息する海牛のステーキとたっぷりの野菜を厚切りのパンに挟んだ名物料理ルーシアサンド。これで食料も十分だな。さ、出掛けよう。


「いってくるぜオヤジ!帰ったらまた飲みに来るからよく冷えたエール頼むぜ?」


「任しときな!心配は要らねえと思うが気ぃつけてな。」


 こうして意気揚々と海鳴りの洞窟へ向かった。







「さぁみんな、いよいよ僕らの旅の始まりだ。気合いを入れよう。」


 同時刻、紹介所から国営管轄依頼を受けた4人組の冒険者が同じ海鳴りの洞窟へ向かっていることなど俺に知る由はなかった。

4話でございました。

今作品では同話数内での1つの単語に対するルビ振りは最初の一回しか行っていないのですが読みづらいから全部ルビ振ってくれ等の指摘がございましたらお気軽に感想欄の一言にでも添えていただければと思います。(姑息な感想稼ぎではありません⬅)


次回第5話は今日か明日の投稿になります。

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