第2話~港町ポートルーシアの賑やかな夜~
晩の投稿は間に合わなかったのでこんな時間になりましたー。書いて分割して修正して投稿。地道にやっていきます。
「おう、乃奏のぼーず。これで荷降ろしは終わりだ。あんがとな。僅かなもんだが取っときな。」
「おいゲラスのおっさん、金なんか受け取れねぇって。乗車賃変わりに仕事手伝うって話だったろ。」
関所で荷のチェックを受け街に入りゲラスに割り当てられた露店へ荷物を降ろした時には半分ほど海に没した夕陽が街を真っ赤に染めていた。
俺とゲラスはすっかり打ち解けていて互いにおっさん、ぼーずと呼び会う仲になっていた。
「良いから取っとけ、年長者の優しさは素直に受け取っときな!俺は半月ほどは此処で商売してっからなんかあったら顔見せに来いや。」
と、いつものように豪快に笑われては突き返すことも出来なかった。
「ありがとうおっさん、またその内会おうぜ!」
「おう、ぼーずも元気でやれよ!」
こうしてゲラスと別れた俺は賑わい始めた夜の街に足を運んだ。仕事を終えたであろう漁師や商人、正装を弛めた公員が足早に行き交う飲食街や晩の買い付けで主婦のごった返す商店街を一回りしこの街一番のでかい酒場へとやって来た。
因みにゲラスのおっさんは午前中には商人同士での取引、午後は自分の露店の営業、夕方には早じまいして梯子酒に興じるのだとか。
「よぉあんちゃん、今日はなんにすんだ?麦でもワインでも蒸留酒でもうちは最高だぜ?」
酒場に入るや否や店主の景気の良い声が飛んでくる。
「麦だ、お薦めの上面発酵ビールをくれ。」
空いてるカウンターに腰掛け酒と肴の串焼き肉を注文する。ひとりでに出た注文は記憶にはないが俺のお気に入りなのだろう。
「はいよ、エールと串焼きお待ち!」
混雑時で回転が早まっているためか幾らも待たずに注文が出てくる。焼けた肉の香ばしい匂いに喉が鳴り堪らずにかぶりつく。濃厚な肉汁が溢れだし身体中が狂喜の悲鳴をあげているかのようだ。口いっぱいに頬張った肉を冷えたエールで一気に喉奥へと流し込む。幸福感に包まれた体がぶるりと震えようやく此処で一呼吸挟んだ。どうやら息をするのも忘れていたようだ。
「あんちゃん良い食いっぷりだねぇ!」
ふと視線を向けると店主のオヤジが満足そうな表情で話し掛けてきていた。腕に自信のある料理人の様だ。
「あぁ、今日はやけ食いやけ酒だ、何の因果かナガレの仲間入りしちまったみたいでな。」
軽口を叩きながらジョッキを煽る。
「そいつは災難だねぇ。どうだい?物は試しに岬の協会にでもいって託宣を受けてきなよ。」
オヤジは俺から空のジョッキを受け取ると追加のエールを注ぎながらそんな提案をしてくる。
「協会?」
何も頭に浮かばない事を考えると全く触れたことのない情報なのかはたまた刷り込まれ感覚自体が気のせいだったのか?なんにせよ拾える情報は拾っておこう。
「あぁ、なんでも一向に無くなる気配のないナガレ現象を重く見た十三国至天議会が各国に出した御触れがあってな。方法はその国によって違うがナガレの影響を受けた奴らの所謂人生相談を無償で行ってるって話だ。本来は自分の出生国でやるのが一番だって話だがナガレの影響度合いによっては自分の出生が何処なのかが分からないってこともあるからどこの国で受けても何種類受けても良いって話だぜ。」
「それでアレクシアで受けられるのが協会の託宣か。」
「協会っつってもアレクシアは自由信奉の国だから本来は協会なんぞ無かったんだがな。託宣をくださるのが女神アレクシア=フィーリス様だって言うんである程度の体裁を整える必要があったって話だ。」
十三国至天議会に女神様か。情報は頭に浮かぶが女神様の方については具体的な物じゃないな、神話や伝承の類いか。
【十三国至天議会】
この世の十二種族十三ヶ国の頂点が集う世界会議であり過半数七ヶ国以上の同意を以て開催される。参加者は十三ヶ国の最高責任者及び大臣、それと賢人と呼ばれる十二種族の賢者達だ。
「女神様自ら託宣を下さるなんてえらく景気の良い話だな。」
「まぁ、女神様もこの事態を憂いていらっしゃるのだろう。ありがたい話だ。」
と、オヤジは笑っていた。
「御馳走様、折角だから明日にでも協会へ行ってみるよ。」
「おう、岬の協会は街の東門から街道沿いに行けばあるぜ。毎度あり!」
会計を済ませた俺は店を出ると飲み食いの間に魔力充填してもらっていたタブレットを立ち上げポートルーシアの情報ネットワークにアクセスする。直近のニュースや天候をチェックし近場の空き宿を確保した。流石交易の要所と言うだけあって相当な数の宿があった。仲にはどこの豪商が使うんだよって位の高級宿もあったが俺には生涯無縁の場所なんだろう。
「おぉー。乃奏ぼーずじゃねぇかぁぁ。」
「おっさん?うわっ、酒くっさ!飲み過ぎだろ。」
顔には出ていないがワントーン上がった声のゲラスに呼び止められた。なんでも今回は予想以上に市場規模が大きくぼろ儲けが期待できるから前祝いなのだという。
「じゃあな、程々にしねぇと仕事に響くぞ。」
「おっと逃がさねぇぞ?今日はとことん付き合ってもらうぞ。俺に見つかっちまった不幸を呪うんだな。ガッハッハッハ。」
「勘弁してくれよ・・・・。」
酔っ払いほど面倒なことは早々ないのでとっとと宿に帰って寝ようかと踵を返す俺だったが案の定取っ捕まり明け方までばか騒ぎに付き合わされた。
案の定翌日の俺は二日酔いに苦しめられ昼過ぎまで宿で惰眠を貪っているのだった。
第2話でした。
中世的なお決まり世界と現代的な文明進度を織り混ぜると何処を落としどころにするかすごい迷いますねぇ。
章終わりの幕間で解説とか資料公開しようと思っているので興味ある方は気長にお待ちくださいなー。
次回第3話は本日中の投稿予定です。