第0章 『死神と女神』
……私は何処で道を間違えたのだろう。
……周囲は血と硝煙の匂いで満たされている。
……視界は黒煙のせいでほぼゼロに近い。
「はは………私の運も……もう尽きたか……。」
長銃を抱え、乾いた笑い声を上げる……。
身体中に銃創がある上、残弾数は二発。死は確定したようなものだ。
意識も少しずつ薄れてきている。
「……はぁ、やっと終わりか。」
傭兵稼業を始めて10年。
『死神』などと呼ばれ、無茶な任務に行き続けたツケがこれか。
スラムに生まれ、生き残る為に暗部の技術を覚え、殺しで金を稼いだ。
……そして、紛争地帯で死にかけている。
………これならスラム暮らしの方が長生きできたのではないか?
「あ……ぁ………最後……くらい………平和……だったら………なぁ………。」
視界が暗転すると同時に、声が聞こえた。
『迷える子羊よ。……我が下へ来なさい。』
………。
………………。
……………………………。
「……ん?」
気が付くと真っ白な空間にいた。
「な………何だここは……ッ!?」
「貴方たちの概念でいうところの、天国と言ったところでしょう。」
突然後ろから声をかけられる。
「……誰だ?」
後ろにいたのは、金髪碧眼の美女だった。翼とかあるから……多分女神か何か。
「……私はレティ。まあ、女神みたいなものでオッケーですよ。死神さん。」
「は、はあ。……私は死んだってことでいいですかね?」
「はい。」
………確認したら現実突きつけられるな。
「ところで、私は何故女神様と対面しているのでしょう?」
「……そうですね。理由を説明しましょう。」
そして、レティ(気軽に呼んでと言われたので)に状況を説明してもらった。
レティ曰く、私の人生は予定より酷いものだったらしい。
レティの仕事である『運命の歪』の除去が上手くいっていなかったらしい。
私の周囲に歪が溜まったせいで本来の運命ではなかったということか。
「そこで、私からお詫びも兼ねて提案があるのです。」
「提案?」
「………ラノベって読みます?」
「………………………へ?よ、読まないけど………。」
「所謂、転生ってやつですね。記憶を保ったままの。」
「は、はあ。」
「あ、もちろん生きやすいように補正もかけておきますので……。」
まあ、それなら…………。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
「はい。……何か希望はありますか?」
「ん~……平和であれば良いですよ。」
「了解です!何かあったら名前で呼んでください。答えますので。」
「あっ……最後に、どんな世界ですか?」
「中世チックなので。良い人生を~♪」
レティの笑顔に見送られながら、目を閉じた………。