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勇くんと12人の嫁  作者: 夏目八尋
第一章
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第11話

 王国暦222年、女神と機械の月25日。天気晴れ。俺がこの世界にやって来てから3週間が経過した。


 ニワトリの鳴く声に目を覚まし、ベッドから起き上がり窓を開ける。来てすぐの頃より肌寒くなった空気を思いきり吸い込んで伸びをして、朝一番の声を出す。


「Good morning」


 ヒュリム国の言葉でおはようございます。毎日練習したおかげか、発音ももう問題ない。


「"おはようございます"、"こんにちは"、"こんばんは"」


 俺はこれまでに覚えたヒュリム語を一つ一つ口にしていく。


「"いただきます"、"ごちそうさまでした"、"美味しい"、"辛い"、"甘い"……えっと、苦いって、えーっと」


 朝起きてすぐにやる発声練習。早く言葉を覚えようと俺が自主的に始めたことだが、今ではすっかり身に馴染んで日課になってきた。


「まぁ、こんなところだな」


 一通り言い終えたところで頭も体もすっかり覚醒、寝間着から着替える。


「おはよう。元気に大きくなれよ?」


 桶に溜めた水で軽く顔を洗い、イチゴの苗に少しだけ水をやる。


「よし!」


 気合が入ったところで俺は部屋を出た。


「"おはよう"、イサム。"あなた" were "大声" as well as "ニワトリ" "今日"」

「"おはようございます"。えーっと、"大声"、"負けない"」

「"それ" "よい" "目覚まし"」

「はは」


 リビングに出て厨房のカルラさんと朝の挨拶。最近では彼女の言葉もところどころ分かるようになってきた。単語ひとつひとつが分かるたびに、話せる内容が、聞き取れる内容が増えていくのを最近は特に実感している。この調子で続けていけばいつか自分も彼女達と同じように、流暢に話が出来るようになるかもしれない。そんな希望が見えてきてますますやる気が沸いてくる。


「"ジョアンさんを手伝います"」

「"いってらっしゃい"」

「"いってきます"」


 両手指の数以上にこなしたやり取りを今日も重ねて、俺はジョアンさんの家を出る。目指すは彼が営んでいる農場だ。


「"おはよう"、"英雄さん"」

「"やあ、英雄さん"! "あなた" "とても働く" as well "今日"」

「"いいえ"、"俺は英雄ではない"!」

「ハハハ! "あなた" should give up」


 農場に向かう途中、畑の世話をしている村人達にからかわれる。あの日ジョルジュを救ったことはその日の内に村中に知れ渡り、その前の魔人種の強盗撃退の件も重なって、俺はキュリアスの村で英雄として一時期祭り上げられることになった。本当の英雄扱い自体は数日の内に収まったのだけれど、こうして今も英雄さんなんて呼んでは俺をからかうタネにされている。言われるこっちはこそばゆいやら恥ずかしいやらで頭がかゆくなってしまう。


 逃げるように駆け抜けて村の外れまで辿り着けば、そこがジョアンさんの管理する農場だ。さっきまで通ってきた一家経営の農地とは一線を画す広い開拓地、そこを雇った小作人達と共に世話している。


「"おはよう、イサム"」

「"おはようございます"」

「"おはよう"」

「"イサムさん、おはようございます"」


 農具置き場に来たところで農場の人達と合流する。この頃は収穫期で、畑いっぱいに実ったニンジンやジャガイモ、カボチャ等を獲ろうと大忙しだ。少し前までは小麦の収穫もあったから、それに比べれば落ち着いてきた方だと聞いて驚いたのも記憶に新しい。彼らのハードワークに俺も可能な範囲でお手伝いさせてもらっているが、手際やら何やらに学ぶことが多かった。


「"今日" "私達" "収穫" "ここからここ"」

「"はい"」

「"私達" "感謝" "あなたの助け"」

「"どういたしまして"」


 俺が現在ヒュリム語の勉強をしているというのは村の皆も知るところ。それもあって皆積極的に俺へと話しかけてきてくれる。朝一の収穫作業の途中も調子や今日の天気について等、単純で簡単な会話をしてくれて、おかげでリスニングの能力もメキメキと上達中である。物覚えに関しては普通程度の実力だと思っていたが、最近は今まで生きてきた中でも特に良い状態になっている気がする。環境が人を変えるというのは本当なんだと実感した。


「イサムー!」

「お」


 じゃがいも畑を一区画収穫しきった辺りでお迎えが来た。ジョルジュだ。農道から畑に駆け下りてきて畝の間を迷わず直進してくる。農家の子供の足腰は順調に鍛えられているようで将来安泰だ。


「"朝ごはん"!」

「"了解。ジョアンさーん"!」

「"分かったー"! 」


 ジョルジュが来れば本日朝の作業はお終いだ。俺とジョアンさんは彼に連れられてカルラさんの待つ家に帰る。居候の身にはありがた過ぎるご厚意を今日もいただく。


「"ごちそうさまでした"」

「イサム! "今日も本を読んであげる"!」


 食事を終えたところですぐさまジョルジュがやって来て、俺の服の裾を掴んでぐいぐいと引っ張ってくる。あの日以降、ジョルジュは特に俺に心を開いてくれている。彼には年の近い友達が居らず、同性の村人は上は7歳差下は4歳差と上に甘えるには忙しく、下とじゃれ合うには強さに差があるといった状況にあった。そこにきて外から来て自由な時間がある俺というのは、彼にとってようやく見つけられた同性の遊び相手というわけだ。


「"僕がイサムの先生"!」

「はい」


 村の子供達の教育機関である私塾が休みの日はほぼ必ずジョルジュに遊び相手を申し付けられる。塾の先生からの入れ知恵もあり、今の彼はもっぱら先生役をして俺にヒュリム語を教えてくれる。絵本を題材にした言葉と文字の授業は思っていた以上に効果的で、その甲斐あってか楽しく言語を学ぶことが出来ている。ジョルジュ曰く塾の先生の教えた通りにやっているらしいが、俺はそこから感じる教育レベルの高さに目を見張った。


「"勇者は魔王を前に言いました"」

「えーっと……"今回も貴方を倒す"」

「"違う"」

「え、じゃあ。文脈から……"今回こそ"?」

「"正解"!」

「おー」


 楽しい授業は今日も昼ご飯の時間まで続いた。


   ※      ※      ※


 パンにベーコンを乗せた軽い昼食を済ませてから、俺はジョアンさんの手伝いに行くと言うジョルジュと別れた。午後からはもう一人の先生にお世話になる。

 その人物の家の前に立ち木の扉をノックする。ほどなくしてその人物が姿を現した。


「"こんにちは。イサムさん"」

「"こんにちは。シルク先生"」


 俺を笑顔で迎えてくれたのは、来た当日から縁のある女性の一人、シルクだった。致命的にこの世界の常識が欠けている俺は、彼女の提案もあってこの世界についてのあれこれを今日までほぼほぼ毎日学ばせてもらっている。実家が鍛冶屋で、家を継がない彼女には時間があったのが大きかった。

 今日までに教えてもらった中では特にゼニー、お金関係の知識が助かっている。


 ここから回想。


「ゼニーは世界中で使用されている共通の貨幣で、1ゼニー銅貨、10ゼニー銅貨、100ゼニー札、1000ゼニー札、10000ゼニー札があります」

(1000ゼニー札に描かれている人の顔が野口英世にしか見えない)

「100ゼニー札はゼニー札、1000ゼニー札はヒデヨ札、10000ゼニー札は王札とそれぞれ呼ばれてたりもして……」


 本当にヒデヨだった。


「ヒデヨ・エバーグリーン。ゼニーの生みの親ゼニー・バンク氏の友人で、彼と共に非常に複製困難な魔法印刷技術を編み出した稀代の魔法使いですよ」


 野口さんに負けず劣らずすごい人だった。

 回想終わり。


 とまあ、このような感じで一つ一つこの世界の常識について彼女から学ばせてもらっている。ちょくちょく神様の遊び心のようなものが見えて驚きの連続だ。


「さぁ、それじゃあ始めましょうか」


 シルクの家の裏庭、対話の法術を使って会話出来るようになったシルクが授業開始を宣言する。


「今日はいよいよ、魔法について勉強しますよ」

「おおー!」


 彼女から杖を準備して外に出ると聞いた時から期待していたが、いよいよこの時が来た!


「こほん。それじゃあ魔法マギテックについて教えますね」

「よろしくお願いします」


 シルク先生の魔法教室だ。


「まず、魔法とは。二つの大きな術系統を総称したもののことです。それぞれ魔術マギウスと、法術テックスと呼ばれています」

「法術はシルクが俺とこうして淀みなく話せるようになる対話の術とか、怪我を治してくれたりした奴だよな」


 初日から大層お世話になっている。


「はい。主立っては後者の方が法術らしいと言われるものです。対話の法術は、自分で言うのもなんですけど使い手が少ないんですよ」


 そう言ってお澄まし顔のシルクはちょっとだけ誇らしげだ。


「魔術ですけれど、こちらはデモンの自称兵士さんが使ってましたね」

「あー、あの火の玉がボーンってなる奴」

「それですね。魔術は主に破壊に繋がる術が多く扱われる魔法の系統になります」

「なるほど」


 魔人種は魔術の扱いが得意だと言われたことを思い出す。あれは典型的なパターンだったわけだ。


「これら魔術と法術は一纏めにこそされていますが、それは発動に至るプロセスが同じというだけで、実際はその素地から大きく異なります」

「素地?」


 確か、加工とかされる前の自然な状態の物のことだったっけ。


「はい。二つの術は、いずれも世界を構成する基本的な物を活用します。それはこの世界のどこにでもある二大元素、マナとケイオスです」

「ああー、神話に出てきた神様の名前だな」

「ですね。名前の由来も創造の女神マナと、破壊神ケイオスからいただいています」


 それ以外でもどこかで聞いた気がするんだが、どこだったろうか。思い出せない。


「マナはこの世界の創造の力を、ケイオスはこの世界の破壊の力をそれぞれ司る元素であると定義されています。そして魔法は、私達の体内に存在するこれら二つの元素を素にして行使される術のことを差すわけです」

「じゃあ、法術がマナの力を使って使う魔法で、魔術がケイオスの力を使う魔法ってわけか」


 なるほどなぁ、なんて頷いている俺だったが、シルクが妙に温かい視線を向けていることに気がついた。


「そう思いますよね?」


 あ、シルクが悪い顔している。


「実は法術に使う素がケイオスで、魔術に使う素がマナなんです」

「あべこべなんだな」

「あべこべなんです」


 面白いですよね。なんて言って笑う彼女の表情は小悪魔で天使だった。


「破壊を司る元素であるケイオスを創造の力に変換して行使する。それが法術。反対に創造を司る元素であるマナを破壊の力に変換して行使する。それが魔術です」

「ややこしいな。ケイオスで魔術を、マナで法術をドカーンって使えないのか?」

「そんなことが出来たら魔法の定義が根本から揺らいじゃいますね」

「複雑なんだな」


 ややこしいが、そういうものなんだろうと納得しておく。それよりも話を前に進めたくて、俺は言葉を続ける。


「で、どうやったら魔法って使えるようになるんだ?」

「魔法を行使するには三つの段階が必要です。第一に素地となるマナ、あるいはケイオスを用意する。第二に行使したい力の明確なイメージを持つ。第三にそれらを行使するという意志を何らかの形で示す。この三段階を経て魔法は発動します。詳しく説明しますね?」

「お願いします」

「まず第一の段階。素地の用意ですが、基本的には自身の体内に存在するマナとケイオス、これらを使用します」

「世界のどこにでもあるってわけだから、自分の中にもあるわけだ」

「特にそれら物体の中にあるマナとケイオスを纏めて、マテリアルと私達は呼称しています。魔法用語ですね」


 マテリアル。なるほど俺らの言語で言うところのMPのMだ。俄然想像しやすくなった。


「マテリアルの内自分が扱う術の素地を意識して、そこから行使する術のイメージを高めていきます」


 お手本を示すように、シルクが杖を持たない左手を前に掲げる。その手の平から、少しずつ光が出現し始める。


「弾けろ、衝撃フォース!」


 シルクがそう声に出し彼女の手の平に集まっていた光が消えた次の瞬間。


 ドンッ!


「おっ」


 手の平の向いた先に植えられていた木が大きく軋み、揺れ、葉っぱを落とした。


「不可視の衝撃を生み出す法術です。今みたいに詠唱や動作を用いて最後は術を発動させます」

「おおー」


 シルクの実演が分かりやすくて、俺は素直に賞賛の拍手をしていた。


「すごいなやっぱり。マテリアル、か」


 自分の中にも今の芸当をするための力があるのか。その答えはすぐに返ってきた。


「もちろん、イサムさんの中にもあります。これについては、その質を自分で確かめることも出来ますよ」

「来た!」


 ついに自分が魔法に触れる瞬間が来たかと心が色めき立つ。


「私達人類や動物、魔物や道具、植物、あらゆる物が内包しているマテリアル。私達を形作る存在の原点、自身の中に在るそれを強くイメージすることで、体内のマナとケイオスのどちらか割合の多い物を知覚することが出来るんです。これがそのままイサムさんが魔術と法術いずれに向いているかという話にもなります」


 そう言ってシルクが静かに瞑想を始める。俺もそれに倣って目を閉じ、意識を集中させ始めた。


「貴方の心の奥深くにある純粋な力を訪ねて下さい。それは自然と形になって、貴方の瞼の裏に姿を現すはずです」

「……」


 自分の中の力のイメージ、存在の原点。深く、深く集中する。


「マナを内包する割合が高ければ女神マナが、ケイオスを内包する割合が高ければ破壊神ケイオスがその姿を現します」


 シルクの言葉を耳に入れながら、俺は自分の中にある力のイメージを組み立てていく。そして完成したそのイメージは、


『はーい、イサム君。頑張ってる?』


 みたいな感じでにこやかに手を振っている龍の神様だった。


「えっ」


 龍の神様が弾けて消える。思わず目を開けてしまっていた。


「どうでした? 慈愛に満ち光を纏った女神の姿が見えましたか? それとも荒々しく嘶く巨大な竜の姿を見ましたか?」

「えっと」


 答えを求められて、俺は困ってしまった。残念ながら俺はそのどっちも見ていない。


「ちょっと待ってくれ」

「はい」


 イメージし直す。慈愛に満ち光を纏った女神を想像する。が、


『はーい』

「次」


 イメージし直す。荒々しく嘶く巨大な竜を想像する。今度は、


『はーい』


 駄目だった。


「初めてご覧になったと思いますし、びっくりしてしまうのも無理はないですよ」


 分かっていますとうんうん頷くシルク。確かにびっくりはしているがそのびっくりする原因が違う。


(これは、聞くべきだよな……)


 正直自分のイメージが間違いだった気しかしないんだが、俺はシルクに自分が見た物が頭に角を持ち巫女服を着た人だったと正直に伝えた。流石にこの世界に来る前に会った神様だとは言えなかった。


「え」


 案の定変な顔をされた。


「角って鹿の角みたいな、ですか?」

「そうそう」

「わぁ……」


 シルクの口がぽかーんっと開かれた。が、すぐさまその瞳を輝かせ俺の肩をガシッと掴むと、興奮した様子で話し始める。


「イサムさん、すごい!」

「え?」

「龍の巫女を見るなんて、魔法使いの才能があるかも!」

「龍の巫女?」

「ひゃー、やっぱりイサムさんってすごい!」

「あの」

「すごい!」

「はい!」


 対格差もあって彼女が肩を叩くとそれなりに痛い!


「学園でも一人くらいしか居ませんでしたよ!」

「そうなんだ?」

「うわー!」

「痛い痛い」


 何も聞ける雰囲気じゃない。俺は彼女が正気に戻るまでされるがままになることを覚悟した。


「ごめんなさい」


 3分で戻ってきた。


「龍の巫女は一説によるとマナとケイオスの娘であると語られる存在で、体内のマナとケイオスの割合がほぼ等しい人が見ることの出来る力のイメージとして現れます。つまり魔術にも法術にも適正があるってことなので、両方を修めた魔法使い(マギテック・マスター)になるための大きな助けになる才能だと言われているんですよ。っていうか、その手の才能がないとまず魔法使いになりたいなんて考えたりもしません。一万人に一人もいないすごい才能なんですよ」

「へぇ……」


 ここまで熱く語られると悪い気はしない。ついでにこの世界におけるあの神様の位置取りもなんとなく把握出来た。そういえばあの神様、自分のことをマナ・ケイオスって名乗ってた。今更思い出したが、あの神様がこの世界を創造したんだからなるほど納得だった。存在の原点は、そりゃあ彼女である。


「……というか、本当に知らないんですね」

「え?」


 不意に呟かれたシルクの言葉に反応してしまった。彼女はこちらをじっと見つめると、改めて問いかけてくる。


「自分の中にある力をイメージすること。これはヒュリムの子供なら誰でもよくやる遊びみたいに親しみ深いものです。その上その年でお金についても知らないで、そのくせ旅人を名乗って……イサムさんは何者なんですか?」


「……」


 彼女の疑わしげな視線と問いに、俺は何も返すことが出来ない。正直に話したところで信じてもらえる気がしない。なまじ信じられたら信じられたで碌なことにならない気がする。だから、黙っていることしか出来ない。


「だんまり、ですか」

「……」

「本当のことは、話せませんか?」


 その問いかけからは、怒りではなく悲しみを感じてしまって。


「あ、その……俺は」

「……」

「話して、信じてもらえる自信がないんだ」


 勢いで開いた口からは、もう正直に気持ちを打ち明けるしかなかった。


「そうですか」


 俺の言葉にシルクはほんの少しの間俯いて、けれどすぐにまた俺を真っ直ぐに見つめて微笑む。


「いつか話せる時が来たら、話してもらえると嬉しいです」

「! ああ……きっと」

「それじゃあお話の続きをしますね。次は人物の持つマテリアルの総量に関して……」


 何事もなかったかのように話を再開するシルク。彼女は本当にどこまでも真摯で、親切だ。それにどれだけ、救われているか。


(彼女のために出来ることがあるなら、何だってやろう)


 この恩には必ず報いるんだと、深く深く心に刻んで。

 だから俺は、自分から一歩を踏み出す。


「シルク、一つ頼みたいことがあるんだけどいいかな?」

「……耗が激しいと疲労が、はい? 何でしょう?」

「実は……」


   ※      ※      ※


 俺はシルクと共に彼女の元を訪れていた。


「ほら、あそこに」


 シルクの指差す先、飼料用に集められた藁の山に彼女は寝転んでいる。


「言っておきますけど、素直に受けてくれるとはあんまり思えません」

「なんとなくだけどそれ分かる。でも、きっと大丈夫」


 俺はゆっくりと彼女に近づいて、その前に立つ。


「んー?」


 眠たげな目をこすりながら彼女、アルカが俺を見下ろす。


「アルカ」


 俺は意を決して口を開いた。


「"俺に剣を教えてくれ"」

「"やだ、面倒臭い"」


 アルカは俺の願いを一刀両断した。

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