10* 可愛い、可愛いっていうけど可愛いだけの女なんて本当にいるんだろうか?
違法な聖女の召喚で呼ばれた聖女。
女神学院高等部2年 天道宮 姫華
(てんどうみや ひめか)
彼女は、一般的な家庭と比べかなり裕福な家庭で育った少女だ。
父は、茶道の御曹司で母は社長令嬢の両親をもついわゆる、ご令嬢と言うやつで幼い頃から甘やかされてきた彼女は自分の暮らしをあたりまえのように感受していた。
彼女は、その家柄だけでなくその美貌でも有名で芸能界からのスカウトも多く、一時期は雑誌のモデルなど芸能界で活躍していたぐらいだ。
それだけではなく、家にはおかかえのシェフやメイドがおり、何よりも彼女自身が元モデルだからだろうか新作のブランドものを次から次へと買うことが趣味で家が常にブランド品で溢れかえっていた。
勿論、彼女のその行動をとめるものはなく、彼女は自分がしたい事をしたいように自由気ままに過ごしていた。
そんな彼女が唯一の自分の思いどうりにならない事は、勉強や運動をすることだった。
彼女は、勉強ができないのではなくやらないといった方がいいほど勉強はしなかった。また、自分があくせく働く姿が好きではなかったため、行事事にも殆ど参加せずさらに運動に関わる授業なども全て休んでいた。
そんな彼女の一番の自慢は自分の容姿や家柄などのステータス。自分と同じ土台にたっているイケメンのオトモダチ達だった。
逆に言えば容姿の整った女子や賢い女子、見た目が余り整っていない男子は余り好きではなかった。
また、あからさまにその事を態度に表す為、女友達が少なく周りから浮いた存在だった。
そんな彼女だからか中学では、女子から嫌がらせをされたこともあったが親の力を借りて倍にして返していた事から本人はあまり気にしておらず、逆にいい気味だと思っていた。
しかしそんな彼女にもどうしても許せない事があった。
それは、同級生の女が女神女学院の高等部に行くことになった事だ。彼女はそれだけはどうしても苛立ちが収まらなく悶々とした日々を過ごした。
この同級生が行く女神学院はエスカレーター式のいわゆるセレブ校であり、かつハイレベルな教育をうけられる事で有名な名門学校であり、この学院を出ているだけでもかなりのステータスがある。
しかし、この学院は定員数が少なくまたレベルもハイレベルなもののため彼女には入りたくても入れない場所だったのだ。
そんな彼女がこの学園に入れたのはずるをしたからだ。
彼女には双子の妹がおり、とても優秀だった。
しかし、彼女は病弱でとてもじゃないが学院に通える体力はなく学生生活に憧れを持ちながらも病室で勉学に励み日々を過ごしていた。時に両親に将来の夢を語り病気が治ったらと常に前向きな妹を姉の姫華はずっと煩わしく思っていた。
だが、姫華の成績では女神学院へは入れない。姫華はずっとこの学院に入りたかったのだが学力が足りないため今まで入れずにいた。
そんなときに気づいたのだ。妹を使おうと。妹は、いけない事だと思いつつも高校と言う所に行ってみたいが為にその申し出を受け、姫華は無事に女神学院に入学した。
そして、時は流れ高等部2年になった頃ある事件がおきた。
彼女の担任がこの学院をやめてしまったのだ。
彼女は、今までこの担任を脅して成績を誤魔化していた。が、それが出来なくなってしまって彼女は毎回学年でビリ。姫華はいつもどうやって担任の弱味を握ろうか必死だった。
ちなみに、そんな彼女の手足となって働いたのは彼女に恋をしている男子達だった。
この女神学院は女子高だが、特待生として別の敷地に新しく建設された一学年定員10人の秀才達だけが入れる男子だけのクラスにオトモダチを作り彼女はその輪を広げていった。
彼女が彼らにお願いをするだけで、彼女に惚れている彼らは頬を赤くそめ協力してくれた。それほど姫華の美貌は美しく前の中学でも、この学院の近くの高校でもファンクラブというものがあり、高校一のイケメンだろうが秀才だろうが彼女にかかればいちころだった。
しかし、彼らを使ってどんなに探っても嘘をでっち上げても担任は態度を崩さず、姫華のイライラはつのるばかりだった。そんなときだ違法な聖女の召喚でここにきたのは。
彼女は、心のなかで今自分が世界の中心だと思っている。自分は選ばれた存在。いつか王子さまと結婚して贅沢して暮らせると。
いや、自分の美貌ならば逆ハーレムを作って国を思うがままにできるのではとまで思っている。
Side 姫華
謁見室を出た後、スラッとしたメイドに部屋まで案内された。
部屋に案内されるまで、姫華の自宅よりも華やかで綺麗な世界が広がっており姫華は、まるで自分がこの城のお姫様になった気分だった。
うわぁー。廊下にあったお花本当に綺麗だったなぁー。
家の廊下には花なんていけたなかったし、本当にお姫様になった気分!!
それに、王妃様のドレスもキラキラしてて綺麗だったなぁー。私もああゆうの着るのかなー。
「急な事で、色々とお疲れになっていると思いますので、今日はこちらの部屋でゆっくりお休みください。」
っと、危ない危ない。
「ねぇ、っと、今時間いいですか?聞きたい事があるんですけど。」
「はい、大丈夫でございます。」
「ええっと、確かさっきの話ではここは客室間?って言ってたけど私はこれからここに住むんですか?」
「その事に関しましては、私どもでははっきりした事はお答えできませんので、発言は控えさせていただきます。」
まっ、そっか。メイドなんかにわかるわけもないか。
「じゃあこれだけは教えてほしいんだけど、この国の王様の子供って何人いるんですか?」
ここは、大事よね。私のこれからにも関係あると思うし。
「はい。この国には王子様方が3名と王女様方が2名おられます。」
「王子が3人に王女が2人か。」
やっぱり、狙うのは第一王子が一番かなぁー。
でも、出来が悪くて第二王子が王様になる可能性だってあるしなぁー。
この前詠んでいた恋愛漫画もそんかなんじだったし。うぅーんどっちの男にもアピールしといた方がいいか。
いや、でも顔も大事だよね。やっぱりイケメンがいいなぁー。
もし不細工だったら宰相の息子とかでもいいかも。
「謁見室に王子はいましたか?」
「いいえ。そのようには聞いておりません。しかし謁見室には第一王女様がいらっしゃいました。」
まぁ。女の方はどうでもいいんだけどね。ぶっちゃけ王子と結婚してから横からぐちぐちいわれるのは嫌だし。
あっ、でも王女ってある意味じゃあ政治の道具?みたいなものだって恋愛小説に書いてあったし、他国にお嫁に行くのかな?そうしてくれると嬉しいんだけど。
あっ、どれも今一だったら隣国の王子とかでもいいかも!そう考えるとコネクション作った方がいいのかな!
でも、さっきの部屋には王子様いなかったんだー。残念。
「王子がどこにいるのかとかわかりますか?」
「いいえ。残念ながら、今は忙しい時期でして中々会う機会はないかもしれませんね。」
「そっ。そうなんだ。・・・。」
王子様達忙しいんだぁー。
どうしようかな。明日案内してくれるっていう、カールもかなりのイケメンだけど、でもやっぱ王子様がいいかなぁー。
何かお金いっぱい持ってそうなイメージだし、王子様って言うと多分イケメンだろうし。でもカールも結構かっこよかったなぁー。
声かけちゃおうかなぁー。
あーでも、こういう世界って多分貞操観念かたいよねー。
うぅーん。あんまり王子様の事聞くとガツガツしてると想われたりして情報もらえなさそうだし。先ずは情報収集かな?
「じゃあ、聖女ってこの世界にどれぐらいいるんですか?」
「それは、はっきりとした数字は分かりかねますが、異世界から来たものやこの世界の聖女を合わせると少なくとも数万人~数十万人はいると思われます。」
「えっ。そんなにいるの。」
「はい。しかし実際問題としてそれでも聖女の数は少なく、怪我をした場合や病気の場合はポーションなどを用いて治療を行っています。さらに異世界の聖女は本当に少なく数十人いるのかどうかという程度です。両方を比べてみると、圧倒的にこの世界の聖女の方が多く存在します。」
「えっ。えっ?じゃあ、異世界から私が呼ばれたのは?」
意味わかんない。助ける人が多いのは大変だろうけど、そんなにいたら希少価値が薄くなっちゃう。何で聖女って私だけじゃあないの!異世界からの聖女も結構いるじゃん!
全然嬉しくないんだけど。
「その話は、もう少し落ち着いてから話があると思います。」
「じっ、じゃあ、この世界の聖女と異世界の聖女の違いは何?」
「はい。この世界の聖女とは傷を癒す者、呪いをとく者などをいいますがそれは傷も癒しかつ呪いもとける人と言う意味ではなく、どちらかまたは聖なる力に付随する能力を持つものと言う意味であり、また聖女と同様の力をもつ男性の方もいらっしゃいます。男性の場合聖人ともいいます。それらに比べ異世界の聖女は聖女の力全般が使えかつその質がこの世界の聖女よりも高い傾向にあります。」
「そっ、そうなんだー。」
私以外に聖女の力を使えるっていうのは最悪だけど、私は選ばれた人間。いわゆるチートって事ね。
結構気に入らないけどまぁ。仕方がないか。
そういえば、カールの他にもう一人案内役に選ばれたアー。?何だっけ名前か出てこない。
「そういえば、謁見室で私の案内役のカール様?の他にもう一人案内役をしていた黒髪の方はどういう名前でしたっけ?」
「・・・・彼は、カール様の兄上でアルフォード様という方です。」
「顔が似てないですね」
ここは、少し図々しく聞きつつ笑顔で誤魔化すか。
「・・・・・はい。異母兄弟ですので。」
あぁーなるほど。だから見た目があんなに違ったのか。
カールは金髪のやわらかい感じ?の髪色で顔立ちはとてもかっこいい。
※プラチナブロンドです。
身長も180㎝はあると思う。
それと比べてカールのお兄さんは黒髪で身長も160㎝位。カールと比べるとかなり小さい。
見た目は、カールはきりっとした王子様風イケメン顔で、兄のアルフォードは眠たそうな、つまらなさそうな雰囲気があるわんこ系?かな。顔はカール様とは似てないけどかなりのイケメンなんだよね。
顔だけでいくとアルフォードなんだけど、なんか男らしくないんだよね。
不真面目そうっていうか、自由奔放っていうか。何考えているのかさっぱりわかんないから、カール様の方が凛としててモテそう。
うぅーん。少しアタックしてみようかなー。
でも、せっかくならカールだけでなくて、兄さんのアルフォードともはなしてみたいなぁー。
「明日の案内の後にアルフォードさんにも会ってみたいんだけど、大丈夫だと思う?」
「私にはわかりかねますが、カール様もアルフォード様もとてもお忙しい方々なので多分難しいと思います。」
っち。
これも、私と一緒に来たあのおばさんのせいね。
もし、あのおばさんがいなかったら私がイケメン2人に案内をしてもらえてたはずなのに。
安そうなパジャマに異様な臭いとみすぼらしい容姿なくせして、男を指定してくるなんて。本当に図々しい。
※じっと見てただけです。
まぁ、いいわ。あの様子じゃあ聖女の仕事どころじゃないはずだし。
大体あんなおばさんの案内役なんてアルフォードも可哀想。
できれば少し慰めてあげたいなぁー。
というか、何で聖女の召喚にあんな紛い物がいるのぉー。もう。召喚するならちゃんとしなさいよね。
私の品格が下がっちゃう。
「では、お疲れだと思いますので、今日はゆっくり休んで下さい。明日の昼頃に案内をするとカール様から伝言を頂いてますので、よろしくお願いします。」
「はい。お願いします。」
はぁーあ。つまんないの。
「あれ?パーティーとかはないの?」
姫華はいつものようにメイドに声をかけて聞いたがメイドは何を言っているのか分からなかった。
姫華は、何かにつけてパーティーをするのが好きで、誰かに誉められたりプレゼントを貰ったりと日頃から何かにつけてパーティー(遊び)をしていたため何気なく聞いたのだが、メイドからすると何を言われているのか全くわからなかった。しかし、そんなことを顔には出さず、姫華に聞き返した。
「申し訳ありません。姫華様。本日そのようなものがあるとは伺ってはいないのですが、姫華様の国ではそういう風習があるのですか?」
「あー。せっかく異世界からの聖女が来たから手厚くもてなされるんだと思ってただけだから大丈夫です。ごめんなさいね。」
そっか、そういうのはないんだ。つまんないの。
それから姫華は一日部屋でだらだらと過ごしていた。
翌日。メイドに案内されて顔を洗い終えたとき、廊下から女の言い合いが聞こえてきた。
「エミリア様。お止めください。もうこのようなことは。」
「嫌よ。絶対に嫌。このままじゃ。このままじゃ。テオが死んじゃう。」
「しかし、」
姫華を案内していたメイドは第一王女がここにいることに驚いて一瞬止まってしまったがすぐさま、姫華をその場から遠ざけた。
その後。姫華は部屋に戻されメイドはすぐに部屋を出ていった。
なんなの。もう。
てか、あの女確かあのメイドが言ってた第一王女?ってことは、あの女に恩を売れば王子と私の仲をとりもってくれたりして。そして私は王子様と二人でいつまでも。・・・・ふふふ。
何か、誰かが死んじゃうとかなんとか言ってたけど、恋人?旦那?あっ、でも異世界の小説でたしか、結婚する年齢は私の世界と違って結構早いみたいだったし、旦那かな?
じゃあ、未亡人になりたくないからあんなに叫んでたのかな?
あっ、そっか傷物だと貰い手のレベルが下がるからか。なーるー。
コンコンッ。
それから、さっきのメイドが来て、謁見室に呼ばれた。そこで私は先程見た第一王女の様子の訳とその王女の婚約者についての説明をうけていた。
違法な聖女の召喚の犠牲になったこと、今なお命が危ない状態な事、そして治そうとしたりすると自分も死んでしまうかもしれないことなどを悲痛そうな顔で王は話していた。
てか、王子はいないのかなぁー?
あっ、あそこにカールとアルフォードがいる。やっぱり2人とも格好いい。
それにここに呼ばれるって事はかなりの有望株なんじゃあない?
滑り止めに落としとこうかなー。
「こんなみっともない所を見せてしまって申し訳ない。だが、できればこの事は内密にしてほしい。」
「はい。」
ここから見ててもよくわかるぐらい目の下に隈を作ってみっともない。婚約者なら傷物にもならなかったんだからさっさと新しい男のところにいけよ。
姫華はこんな状態からどうやって王子と自分の仲を第一王女とりもってくれるのか一生懸命考えていた。
今ここには、カールやカールのお兄さんのアルフォードの他にも第一王女や王様、王妃様などの最初の謁見時の時のような顔ぶれがそろっていた。
「姫華どの、だからエミリアの婚約者殿を治そうとするのはリスクが高いため、なるべくやめてほしい。」
「はい。わかりました。」
いや、やらないでしょ普通。
何か、死んじゃうとか言ってたし。
でも、じゃあどうやってこの王女に恩を売ろうかな。
二人でお話とか?
今は、話しかけない方がいいのかな?
そうして、私は謁見室を後にした。




