Tedious 1
5月の早朝。
日の出とともに起きる。
春でも朝の空気はまだ冷たい。
身支度をし、仕事の同僚と「おはようございます。」と挨拶を交わし合う。
俺の名はリシェル。
ここアルヴァイツ家の屋敷の使用人として雇われている。
ここにいる使用人は約20人ほどいる。
隣にいる14歳の双子、エメとメア。
兄の方がエメで、弟がメアだ。
二人とも瓜二つの容姿で見分けがつかない。
だが、性格は間逆なのだ。
エメは陽気でお調子者。
メアは静かで口数が少ない。
双子といっても、お互い別人である。
双子と丸1日一緒にいれば、すぐ見分けがつけられる。
俺も最初は全くわからなかったが、1日もあれば見分けられるようになった。
双子たちはお互いに今日の業務の確認をしている。
「リシェルは今日から、新しい仕事なんだよねー!」
エメがニコニコしながら聞いてきた。
「ああ。と言っても、いつもとさほど変わらないがな。」
「責任感がますます増したね〜!」
少し意地悪そうな顔になるエメ。
「....リシェルは頼りになるからな...。」
メアがまっすぐな目で俺を見る。
「ありがとうな。メア」
こくりとメアは頷いた。
「さーて!僕たちも今日の仕事やっていきますかー!」
エメははりきってメアを連れていき、業務にいった。
腕時計をみる。6時前
俺もそろそろ時間だな。
今日から新しい日常が始まり、新しい仕事が始まる。
俺の仕事はお嬢様の世話役であった。そしてお嬢様が今日から学校へ通うことになる。新しい仕事とはお嬢様の学校への送迎や学業のサポートが通常業務にプラスされたということだ。
お嬢様のスケジュールや送迎時間を確認する。業務より何よりお嬢様のほうを優先するのである。
お嬢様の制服、カバンを用意し、お嬢様の部屋へと向かう。
広い廊下の先、大きな扉をノックする。
コンコン
「お嬢様、おはようございます。」
「............」
返事は返ってこない。
コンコン、と再びノックをする。
「おはようございます。朝ですよ」
「...........」
まだ寝ている。確実に。
仕方がない。
「失礼致しますお嬢様。」
扉をあけて、静かに入る。