ミザンスロープ:死人は便意を催さない
私の名前は、「ともえ」
ここで13歳という短い時間で知ったこととか思ったことを書き綴ろうと思う。
今回の話題は前回に引き続きまた食べ物の話でごめんなさい。
月に1回くらいこの隔離された地下施設で「御馳走」が出ることがある。
でもその御馳走は灰色で四角いゼリーで凄く見た目が悪い。
職員さんの話によると、この灰色の四角いゼリーは「高機能栄養食」とかなんとかで
見た目は悪いけど食べると体にいいし甘くて美味しいそうなんです。
私は「この灰色のゼリーは何からできてるの?」と聞くと
職員さんは、プランクトンとか海の雑多な魚のなんたらかんたらとか良く判らない説明でのらりくらりと私の疑問をかわしている感じがした。
多分原材料を言ってしまうと吐きそうになるからかもしれない。それとも私がまだ子供なので説明が理解できないか。
それで灰色のケーキの味なんだけど、確かに甘い。凄く甘い。
でもこの甘さは職員さん曰くローカロリーで太らないらしい。
御馳走というよりもお菓子と言った方がいいかもしれない。
同じ施設の子供たちもみんな喜んで食べているんだけど、1人だけ口にしない男の子が居た。
私はその子にそっと声をかけてみた。
「食べないの?私もあまり好みの味じゃないけど」
その子が答えた。
「これは甘いキャラメル味とコーラのミックス味なんだけど、キャラメルとコーラの甘さは人間の死体の甘さと同じなんだ、これはきっと不要な人間が原材料なんだ」
私はギョッとした。
まさかそんな共食いみたいな事、させないよね。そう信じたい。
でもこの施設は私の居る区域も私と同じような欠損を持った子供たちが移動したりする。
それは<奉仕活動>の成績によるもので、あまり成績の良くない子は下のランクの区域に移動させられる。
私は自分の体をこの施設の研究活動に差し出しているので<奉仕活動>の成績は常にトップだからずっとここに居る。
プラスチック(この施設で使われる通貨)も沢山貰っている。
けれどそうでない子はトイレを泣きながら掃除したりした挙句、気が狂って大声で何かを叫ぶようになり
即座に別の区域に移されたりそういう子が多い。
だからこの施設では友達というのができにくい。
その子はいう。
「人間が一番余っているんだ、古い映画で観たことがある。未来の食事は人間を原材料にするっていうのがあったんだ、それと同じなんだ」
「…それは映画のお話なんでしょ?現実にそんな惨いことありえるかしら?」
私は考えてみた。
そうしたら何となく答えが見えてきた。
「人間より余っている原材料があるとしたら、人間の排泄物じゃないかしら?」
多分これが答えだと思う。
この答えを聞いたらみんな吐くと思う。
だから職員さんも話を胡麻化していたんだというのも納得がいく。
あとこの子が言った言葉で引っかかる所があって
「キャラメルとコーラの甘さは人間の死体の甘さ」という言葉。
死体ってどういうにおいがするんだろう?
その子の言った例えの言葉が気になった。
そして次の日にはその子は別の場所に移送されていた。謎だけを残して。