第2話:自殺?他殺?不可解な 密室殺人事件
春の太陽が、暖かく照りつける。俺は、大学敷地内のベンチに腰を下ろして、物思いに耽っている。
あの事件が起きてから、約1週間が経っていた。彼女は今、何をしているだろう?
元気にしているだろうか?彼女の涙を思い出し、胸を締め付けられる。
そういえば最近、あの喫茶店にも行ってないな・・・。彼女の顔を見に寄ってみるのも、悪くはない。 そんな事を考えながら、ボーッとしていると不意に、後ろから声を、掛けられた。
驚いた俺は、1瞬遅れて後ろを振り向いた。そこには、見慣れた顔があった。祐輔だ。「よっ!何辛気臭い顔してんだよ。」祐輔は何時もの調子で言った。 「お前は、能天気で、ホントにいいねぇ〜」俺は、冷やかしのつもりで言ったが、祐輔は気付かないらしく、
「そういやさ〜」と話の話題を変えた。
「今日の新聞見たぜ」
「新聞?」 「何だ?知らないのか?」
「何か、面白い記事でも載ってたか?」
「俺としては、面白いかな」と言って変な笑みを溢しながら、俺に新聞を渡してきた。
その新聞の見出しには、こう書かれてあった。1週間前に起きた、偽造誘拐事件を見事解決!平成のシャーロックホームズ誕生か!という見出しだった。写真まである。
いつの間に撮ったことやら・・・新聞を見終わったと思ったのか、すかさず祐輔が、口を挟む。
「すげぇ〜じゃん。大学生で事件解決するなんて」
「そうか?」「そうだよ。大学の中じゃ評判になってるぜ。先生だって、浮かれてるんだからな。」
「どうせ、大学の事しか考えてないよ。あの人達は・・・」
そんな会話が続いていたが、大学のチャイムが、鳴り響いた。「おっといけねぇ、授業が始まっちまう。行くぞ」
「おう」俺は返事をして、ベンチから腰を上げて、その場を離れた。教室に着いた俺たちは、自分の席に着いた。先生が入ってくるなり話始めた。
その内容は、今日このクラスに転校生が、来るというものだった。
「少し遅れたが、転校生を紹介する。入りなさい。」そう言うと、1人の少女が、教室に入って来た。入ってきた女の子の名前は、 【藤咲葵】という名前だ。クラスの皆は、おおはしゃぎ・・・・殆どはしゃいでいるのが、男なのだが・・・先生が一通り説明し終わった後に、彼女に自己紹介するように促した。
彼女は、一呼吸置いた後に、喋りだした。
「初めまして、【藤咲葵】っていいます。皆と馴染めるか分からないけど、仲良くなれるように努力するから、これから宜しくね。」そう言って、彼女の自己紹介は、終了した。そして昼休み、彼女の席の周りには、男を中心として、集まっている。色々質問されているみたいだ。『既にクラスに馴染んでるし・・・』そう思った。
大学が終わり、俺はそのまま、行き付けの喫茶店に、顔を出した。席に着いて、直ぐに彼女を探した。
やはり、あの事件の時のショックが大きすぎて、バイトまで辞めてしまったのだろうか?
諦めかけたその時、元気の良い声が、聞こえた。『何処かで、聞いた事のある声だ。』そう思って、声がした方に目を向けた。『居た。』彼女が、元気良く接客をしている最中だった。『良かった、元気みたいだ。』俺の視線に気付き、彼女は
「あっ」と声をあげ、俺の元に駆け足で、近寄ってきた。最初に言葉を発したのは、【美紀】だった。
「久しぶりだね」いつもの笑顔だ。俺も笑顔で、
「久しぶり」と答えた。
「あの事件、解決してくれて、ありがと」
「いいよ。そんな事は・・・でも、俺が事件を解決するとは、思わなかったな」
「えぇ〜っ自信満々で、俺に任せとけって言ったのは、何処の誰だっけ?」
「俺、そんな事言ったっけ?」
「あぁ〜、また惚けちゃって〜」彼女は、腹を抱えて笑っていた。元気になって、ホント良かった。そういう話をしていた時に、喫茶店に1人の女の子が、入ってきた。
その女の子というのは、今日大学に転校して来た女の子・・・【藤咲葵】だった。【藤咲】は俺の姿に気付き、駆け足で近寄ってきた。
「大学に居た人だよね?」
いきなり妙な質問をする。
「大学に居るって言うか、生徒なんだけど・・・」
すると今度は、【美紀】が口を挟む。 「誰?」
「俺が通ってる大学の生徒だよ。今日、転校してきたんだ。」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「初めまして、【藤咲葵】って言います。宜しくね」
「こちらこそ、宜しく」2人は既に、打ち解けている。さすが、女の子・・・。
話もそこそこに俺は、家に帰った。1つ不思議なのは、何故か【藤咲】が、俺の後についてきているということ・・・
「何で着いてくんの?」
「へ? だって私、このマンションに住んでるから」そう言って、彼女が指差した方を向いた。俺は、驚いた。
彼女が住んでいるというマンションは、俺が住んでいる場所だからだ。しかも部屋も、隣同士だ・・・。 『マジかよ』俺は、心の中でそう思った。翌日、マンションが妙に騒がしかった。俺は外に出て、様子を伺った。
警察が忙しなく、動き回っている。何事かと思った俺は、近くに居た人に、聞いてみた。
「何かあったんすか?」
「この部屋の人が、自殺したみたいよ」そう言うと、部屋の方を指差した。
俺は部屋の中を、覗いてみた。やはり、オッサンも居る。
「確かに、自殺みたいだな」後ろから視線を感じた俺は、振り向いた。【藤咲】が立っていた。俺は驚いて、扉に頭をぶつけてしまった。
その音に、警官全員が振り向いた。勿論、オッサンも・・・
「何かあったの?」藤咲が、声を、発した。
「事件だろ?俺には、関係ないけど・・・」そう言ってその場から、立ち去ろうとした俺の襟を、オッサンが掴んで現場に、引きずっていく。
「は、離せよ」俺は無駄だと思ったが、それでも、些細な抵抗を試みた。
「お前にも事件に協力してもらうぞ」 やはり、抵抗は無駄だった・・・。
「何で一般人を事件に巻き込む?」 「何が一般人だ。以前、誘拐事件を解決したじゃないか」 「あれは訳があったから、仕方なく事件を解決したんだよ。今回の事件は、関係ないだろ」そう言ったものの、オッサンも引かなかった。
結局、事件に協力する事になってしまった。気付いたら、藤咲が、隣に居た。
「誰だ?この子」
「俺の知り合い」説明するのが面倒臭かった俺は、適当に言った。するとやはり、オッサンが冷やかしてきた。
「何だ、前の彼女から乗り換えたのか?」俺の隣に居た藤咲が、剥きになって聞いてきた。
「前の彼女って誰なの?」
「何だ、お前まで・・・別にあの子は彼女でも何でもないよ」
「ホントか〜?」 「ホントなの〜?」2人が同時に喋った。こいつらは・・・。俺は、溜め息を、吐いた。早速俺は、事件の状況をオッサンから聞いた。
「で、どんな状況?」
「亡くなっているのは、小説家の【長谷川友造】年齢は58歳死因は頸動脈圧迫による窒息死。首を吊って亡くなっているのを管理人が発見し、警察に通報した。」
「じゃあ〜自殺なんじゃないんすか?」
「少しは真面目に考えろ」
「別に、好きで事件に首を突っ込んでる訳じゃないし・・・」
すると、隣に居た藤咲が、口を挟んできた。
「ねぇ〜ホントに自殺なのかな?」 「はぁ〜?現に首吊って、亡くなってたんだぜ?それのドコが自殺じゃないんだよ?」
「それは解らないけど・・・」藤咲は、困ったように俯いてしまった。
ちょっと言い過ぎたかと思った俺は、謝ろうとした・・・が、ある事に気付いた。
俺は、床に座り込んで、あるものを見ていた。カーペットに付いたシミだ。それを見た瞬間、電流が走った。
もしかしたら・・・・
「藤咲」呼ばれた【藤崎】は、キョトンとした顔で俺を見た。
「もしかするとお前の推理、当たっているかもしれないぜ」
現場に居る全員がざわついた。「お、おいおい。さっきお前自信が自殺だって言ったじゃないか」 「考えが変ったんだよ」こいつ、シレッとした態度で言いやがって。
「それにもう1つ気になる事があるんだ」
「気になる事?」藤咲が、口を開いて言った。
「あぁ、さっきこの部屋に入った時から気になってたんだけど、部屋の温度が異常に高いんだ」 「そう言えばそうだな」
「で、さっき調べたんだけど、タイマーで、セットされているみたいなんだ。今は、暖房のスイッチが切れてるみたいだけどな」
「じゃあ、何らかのトリックがあるという事か」
「まっ、そう言う事。恐らくは、殺人だろうな」
「でも一体誰が、【長谷川】さんを殺したんだ。」「それを捜すのが、刑事であるオッサンの役目だろ?」
「くっ、こいつは・・・」袴田は拳を握り締めたが、振り上げる事はしなかった。
コイツには、事件を解決する力があるからな・・・事件が解決したら、思いっきりぶん殴ってやる。 俺は、現場を歩き回った。何か他に気になる事が、あると思ったからだ。
だが、他に気になる事が、見付からない・・・。俺は途方に、暮れていた。
その時俺はふと気になり、オッサンに聞いた。
「なぁ オッサン」
「何だ?」 「この部屋の入り口はどうだった?」
「ん? 入り口?」
「密室だったかって聞いてんだよ。」 「だったらそう言え」
「文句ばかり言ってないで、実際はどうなんだよ?」
「管理人が発見した時は、ドアには鍵が掛かっていたと証言している。」
「成る程・・・じゃあやっぱり、この事件は、密室殺人か」
「そうなると、益々解らなくなる。一体犯人は、殺害した後はどうやってこの部屋から、出ていったんだ?」考えてはみたものの、袴田の頭では限界がある。次第に袴田自身も頭が、混乱してきたようだ。
藤森は、冷静になり、言葉を発した。 「この部屋に入ったのは?」聞かれた袴田は、直ぐには反応出来なかった。
「聞いてんの?オッサン」
「へ?な、何だ」
「やっぱり聞いてなかった。だから、この部屋に入った人物は、管理人の他に誰がいるんだよ?」 「あぁ、その事か。それはまだ捜査中だ。」
「たっく、仕事が遅いのは、何時もの事か」
『くっ、またコイツは余計な事を・・・・』そう思ったが、言葉には出さなかった。オッサンが言うには、死亡推定時刻は昼の12時32分という事だ。・・・と言う事は、殺されたのは、それ以前の時刻という事になる。
俺はコメカミを左手の指で押さえ、もう一度事件を整理してみた。
「被害者を発見したのは、このマンションの管理人。扉には鍵が掛かっており、部屋はすごく暑かった。被害者が吊るされていた下の床には、何かを溢したようなシミが付いていた。何らからのトリックを使って、犯人は密室を作り出し被害者を殺害した。」そのトリックとは一体・・・。俺が考えを巡らせてる時に、警官が1人と眼鏡を掛けた男性と、髪を後ろで結んでいる長身の男が2人入ってきた。
2人共編集社の社員という事だ。オッサンが2人に近づき、話を聞いている。2人の話によると、先に【長谷川】さんと会っていたのは眼鏡を掛けた男性、その次に髪を後ろで結んでいる長身の男性。
マンションに言った理由は、1人は小説の〆切が今日だった為原稿を受け取りに来たとの事。長身の男性は、【長谷川】さんに借金をしていたが、お金の用意が間に合わなかった為に、もう少し待ってくれるように頼みに行ったとの事だった。
一通り話を聞いた袴田は、2人に聞いた。先ずは、眼鏡を掛けた男性。
「原稿を取りに行ったのは、何時の事ですか?」
「確か・・・10時56分位だと思いましたけど」
「小説の〆切に間に合ったんですか?」
「それが・・・色々と御託を並べて、結局間に合わなかったんです。」
「何時も【長谷川】さんは、〆切を守らないんですか?」
「昔はそんな事は無かったんですが・・・小説が売れ出した途端に、〆切の期日を守らなくなって・・・」
「成る程。そうですか、有り難う御座います。じゃあ、次は貴方」袴田はそう言うと、長身の男性の方を見た。
「貴方は何時頃にこのマンションに来たんですか?」
「俺は、11時24分位にここに来たけど」
「借金の返済が間に合わず、もう少し待ってくれと頼みに来た・・・そういう事ですね?」袴田は、もう一度聞いた。
「そうです。」袴田はもう一度彼らにお礼を言って、真治に近付いて来て小言で俺に話しかけてきた。
「で、何か解ったか?」
「直ぐに解る訳ないだろう」
俺は、オッサンに冷たい視線を投げ掛けた。重苦しい空気が漂っている現場から、逃げるようにして外に出た。空気を大きく、口を開けて吸い込む。もう一度俺は、事件について考えてみた。
「容疑者は2人、共に動機はあり、アリバイもない。 だとしたら、この2人の内どちらかが犯人という事になる。でも・・・肝心のトリックが解けない」犯人は、どうやって【長谷川】さんを殺害し、密室を造り出したというのか・・・? カーペットに付いたシミ、暑すぎる部屋・・・。待てよ、
「もしかしたら」真治はそう呟き、また現場に戻っていった。
俺は殺害現場の中央に立ち、眉間に左手の指を添えて考えた。考えた瞬間閃いた。
『そういう事か・・・これで2つの謎が解けた。』だが、最大の難問が残っている・・・。そう。それは、密室という謎だった。真治は現場の中を動き回った。
「おい、何やってんだ?」オッサンから声を掛けられたが、聞こえないフリをして、捜した。『見つけた』そう。俺が捜していたのは、この部屋の鍵だった。タンスに入っている。
『この鍵を使ってドアの鍵を締め、また同じ場所に戻すのは、不可能だな。』『どうやって密室を造り出した・・・』そう考えた時に、1つの可能性を見出だした。それは・・・管理人が犯人という説だった。管理人が犯人ならば、鍵を締める事も簡単に出来る。だがそれには1つ問題がある。管理人には、アリバイがあるという事だ。
それを崩さない限り、管理人を犯人と断言するのは難しい。
そのアリバイというのは、【長谷川】さんが殺害された時刻、管理人は美容院に行っていたと言う。確認も既に、取れている。そう考え諦めかけたその時、俺が、考えたトリックとアリバイが一致した・・・。
あの方法を使えば、その場に居なくても、犯行は可能だ。全てのパズルのピースが今、1つになった。
謎を解いた俺は、現場に居る皆を周りに集めた。勿論、容疑者である2人と管理人も・・・。皆を俺の周りに集めた矢先、オッサンが口を開いた。
「おいおい、皆を集めて何しようってんだ?」
「何言ってんだよ。これから、皆に事件の真相を話すんじゃないか。そもそも、一番真相を知りたがっていたのは、紛れもない。オッサンだろ」
「な、何?解ったのか・・・犯人が」 「解らなかったら皆を集めたりなんかしないよ」
そう言って俺は、一息置いた後に、皆の顔を見回して、真相を口にした。「今回起きた事件は、時間差トリックを使ったものです。」
「時間差?」
「そう、時間差です。この場に居なくても【長谷川】さんを殺害する事は可能なんです。」
「な、何だと?」オッサンが口をパクパクさせながら、大声を上げた。
俺は無視して、話を先に進めた。
「まず、そのトリックに必要な物は大きい氷と、エアコンだ。その2つを使えば、この場に居なくても犯行は可能です。」
「そのトリックは何だ?」
「簡単な事だよ。まず、【長谷川】さんをクロロホルムか何らかの薬品を使って眠らせ、ワッカを作ってあるロープを首に巻き付ける。その後で、予め用意してあった氷を【長谷川】さんの足元に置き、立たせた。そして暖房のスイッチを入れ、タイマーをセットした。」
「それがどんなトリックだってんだ?」
「まだ解りませんか?暖房がついているという事は、早く氷を溶かせる為・・・」
「!?」
「解ったみたいですね。そう、氷が溶ければ【長谷川】さんの首は徐々にロープに食い込む。そうして、【長谷川】さんを殺害したんです。」
「成る程・・・ちょっと待て、じゃあ密室はどうなんだ?一番苦労してたじゃないか」
「密室か・・・確かに、一見不可能に見えたが実はそうじゃない。犯人は、密室を造り出す必要は、無かったんですよ。」
「へ?そうなの・・・」藤咲も声を上げた。
「あぁ、そうだ。だって鍵は、犯人が持ってるんだから」
「何だと?じゃあ合鍵でも作って・・・」その言葉を、藤森が遮った。 「合鍵を作る必要なんて無いんですよ。」そして、一呼吸つき、犯人の名前を口にした。
「そう、この事件の犯人は・・・・このマンションの管理人である貴方です。【杉山】さん」周りに居る皆がざわついた。
「犯人は、管理人なのか・・・しかし」その先の言葉を遮って、俺は話した。
「確かに他の2人にはアリバイが無く、管理人にはアリバイがある。だが、さっきも説明したように、あのトリックを使えばアリバイがあったとしても、犯行は可能なんですよ。」
そこで管理人が、重い口を開いた。 「何故私が犯人だと?確かに、君が言うようにさっきのトリックを使えばアリバイがあったとしても、ここの住人を殺せるかもしれない。だが、そんな事を言うんだったら、アリバイの無い彼らにも出来るんじゃないのかな?」
「確かに彼らにも、あのトリックを使えば犯行は可能だ。しかし、1つだけ彼らには出来ない事があるんですよ。」
「出来ない事?」オッサンが、言った。
「あぁ、それは・・・この部屋を密室にするという事だよ。さっき調べたが、この部屋の鍵は、タンスの一番上の引き出しに入っていた。扉には、何も仕掛けた痕は無い。だとすると、残る方法はただ1つ・・・。貴方が持っているここの鍵を使って、ドアの鍵を締めた。それしかありませんからね」
そう言い終わった瞬間、管理人は崩れ落ちてしまった。そして泣きながら、こう述べた。 「許せなかったんだ。アイツは、私の娘を階段から突き落として、殺したんだ。奴を、酔わせて聞いてみたら、全部白状したよ。」そう言って俯いた。
「だつたら何故、警察に行かなかった?」
「・・・自分の手で、娘の仇を打ちたかったんだ・・・」
「死んでいい人間なんて、この世には居ないんですよ。例え、それがどんな人間であっても・・・」そして、管理人は警官と共に、その場を去った。現場には、沈黙が流れる。その沈黙を断ち切るかのようにして、袴田が口を開いた。
「しかし、どうして密室の謎が解った?」
「あんなの、密室でもなんでもない。ただ、トリックをセットした後に、自分が持っていた鍵を使って締めただけの事だろ」
「じゃあ、お前が現場をうろついていたのは?」
「この部屋の鍵を探す為・・・鍵の位置で事件の犯人やトリックが異なってくるからな」
「全く、大した奴だよ。お前は」そう言って、オッサンは俺の背中を叩いた。俺は、むせかえった。かくして、このトリックを使った事件を見事解決させた訳だが・・・もう一生事件に関わりたくはないと思う真治だった。だがこの先も、事件に関わっていく事に真治は、まだ知るよしもなかった・・・。