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エピローグ 君がいない世界

 報告書。

 白の禍津消滅確認について。

 白の禍津が人工災厄である黒の禍津と共に消滅。もとより、災厄と真逆の霊力で作られた黒の禍津にしかできないような方法による。

 扱いにくい性格である黒がどうして自らも消滅するような方法をとったのかは不明。

 あの白が大人しく消滅したのかも不明。封印されているとはいえ何かしらの抵抗はできたはずであるとこちら側では判断している。

 これにて、人工災厄は消滅。現時点での大災厄対策は0となった。

 次の大災厄に向けて動き始めなければならない。

 次の人工災厄を作るのか、それとも別の手段をとるのかは判断できずにいる。


 白が放った絶炎の処理も完了。

 延焼範囲を捕縛縄で囲み、被害も最小限に抑えることができた。


 また、失った霊脈も戻っており、関東地区は今まで通りの生活が戻っている。

 住民の被害もほとんどなく、死人は出ていない。

 霊印もおさまり、すでに白の危機は去ったと判断できるだろう。


 規律に背いた白木善行に対する処理はまだ不明。

 白を消滅させた陽山師として、また、陽山師に未来を奪われた陽山師として扱うこととする。


 黒木悪業の行方は不明。









 あっくんお元気ですか。私は元気です。

 何やら私が眠っている間にたくさんのことがあったみたいで、私もついていくだけで精一杯です。


 あの後、すぐに速水さんとあっくんのお父さんの悪性さんが霊山に向かったみたいです。それでもあっくんの姿は見当たらなくて、善くんもとても驚いていました。

 善くんはそのあとすぐに陽山師の人に連れていかれてしまったけど、どうやら色々と考慮してくれて重い処罰にはならないかもしれないとのことでした。

 あっくんも安心だね。


 私たちの住む街は本当にそんな騒ぎがあったのか、というぐらいに元通りです。

 中には今回のことを一切知らない子もいて、本当に陽山師って影の役者みたいでかっこいいなって思いました。私もずっと寝てたのでよくわからないんだけどね。


 まだ善くんは事情聴取中みたいですけど、直に学校に通えるのではないか、と言われています。私はもうすでに学校に通い始めていつも通りの日々です。

 いつも通りの。

 いつも、通りの。


「…やだ…やだよ…あっくん…」


 真中中はペンを置き、涙をぬぐった。

 様々な陽山師の活躍により、被害は最小限で大災厄を止めることができた。しかし、それは傷跡がない、というわけではない。

 こうして戻ってこなくなった人を嘆く人だっているのだ。


 真中は一度頬を叩く。

 あっくんの救ってくれた世界で、いつまでも泣いてちゃだめだよね!強くそう思う。

 

 いつも通りに戻ったわけではあるが、何もかもが元通りというわけでにはいかない。

 白木善行のとった行動により、白木の陽山師の地位が黒木よりも下になったという噂も聞く。またそれと同時期に黒木の当主であった悪性が当主を譲り、行方をくらませたとも聞く。

 速水、技山、力野はいつも通り、日々鍛錬ではあるものの、時折寂しそうな顔をしていた。

 悪意はずっと泣きっぱなしで、あんなに泣いた悪意お姉ちゃんを見たのは初めてかもしれない、なんて真中は泣きはらした目で見ていた。


 悪業の霊山一体化。

 悪業自身が霊脈となり、今もこの地区の平和を守っている。その代償がいまだ。人としては生きれず、そもそも生きているのか死んでいるのかさえわからない。

 空気と同じなのだ。

 霊力そのものとなってしまった悪業をもとに戻す方法は今のところない、と言える。もし、仮にあったとして悪業をそこから助け出すことは同時に霊脈の破壊を意味する。

 手を出すことができない、そんな問題だった。

 なにより一番の問題は、次に大災厄がきたときにどうするのか、ということである。霊印を消すためには霊脈を破壊するしかない。そしてまた代わりの生贄を用意して霊脈を作るのだろうか。


(そんなこと絶対にさせない)


 真中はペンを握る。

 真中は今陽山師の勉強をしているところだった。自分の身はある程度自分で守りたいという考え方から基本や護身術を学んでいる最中である。

 憑かれやすい体質をなんとか自分でカバーできるようになるのが目標だ。

 そしてあっくんを取り戻す。


 真中は今日も手紙を書く。

 悪業はきっと読むことができないだろう手紙を。

 出す宛てのない手紙がまた1つ増えた。

 机の隅にその手紙を置く。


「まだ、あっくんに好きって言ってない…伝えたいことだってたくさんある…だから待ってて」


 近くにあった護符ホルダーをとり、今日も真中は鍛錬へ向かうのだった。







 とある一室。

 和室と呼ばれるであろうその部屋に1人座布団に座って本を読んでいる人物がいた。

 現在、事情聴取中の善行である。

 いつものように勉強中だった。事情聴取とはいえ、軽いものだ。外を出歩く自由だってある。もう少しで学校にも通えるとのことだったが、そんなことは善行にはどうでもよいことだった。


「待っていて、あっくん。今度は俺が君を救う番だ」


 大きな決意を胸に1人の陽山師が立ち上がる。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

続きがありそうな終わり方ですが、第一部完結です。

続きを書くようなことがあれば、またよろしくお願いします。

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