プロローグ
白木と黒木という一族は生まれながらにして陽山師の才能があった。
陽山師とは、目に見えぬ災厄の類を時には封印し、時には倒して平和を守る。そういう職である。
人間は体の中に霊力と呼ばれる不思議なエネルギーをもっている。普通は弱いもので身体に影響を与えることは少ない。稀に目のあたりの霊力が強く、見えないものが見える霊感を持つ人間もいるがそれでもうっすらと見える程度だ。災厄を見るためにはより強い霊力を必要とする。
白木も黒木も生まれてくる人間は霊力の強さに長けていた。自分で霊力をコントロールし、足に集めることで足の速さを増したり、腕に集めて腕力を強めたり様々なことができた。
そして何よりも災厄を見ることができるそれが一番特別だ。
時代は変わり、現代。
今も陽山師はひっそりと活動を続けている。お世話になる人間はお世話になり、知らない人間は一生知らないまま終わる不思議な職。
それは今もなお、動き続けていた。
「全く、黒木の初代様は自分で霊力をコントロールできたというが・・・今ではそれができぬ。陽山師の長が唯一その才能があるが長だけでは戦いきれん。故に長の霊力を込めた護符が必要になるわけだ」
真っ黒な装束だった。袴のようではあるが、体にフィットしており、動きやすいように足や腕にぴったりと袖や裾がくっついている。より洗練された忍者のような恰好だった。
そんな恰好に身を包んだ男は今日もこうして小言を呟いている。
「長の力になりたい気持ちはわかるっすけど、今は目の前のことに集中してくださいね、悪性さん」
「わかっている、速水」
悪性と呼ばれたその男は速水と呼ばれた男を見ずにそのまま目の前のものに目を向けた。
そこにいるのは巨大な鯨。
ここがいくら山奥とはいえど山に鯨がいるとなるとさすがに騒ぎになるはずだが、そうはならない。まわりの人間には見えていないのだ。
これが災厄。
動物の形をしているが引き起こす災害は大きく、町1つなくすことだって可能なほどの力を秘めている。
その災厄を今、50人ほどの陽山師で囲んでいた。
全員がお札のようなものを持っており、そこからでている巨大なヒモが鯨を拘束しているのだ。
鯨は動けない。苦しそうに呻いている。
「つーかなんで毎回山なんすかね。海とかにも行きたいんですが」
「茶化すな。それはお前もわかっているだろう。陽山師の名前の由来。力の源である霊脈は山にあることが多く、災厄に狙われやすいのだ」
そういうと静かに鯨を見る。
「これだけ巨大な災厄・・・時代によっては神と崇められていてもおかしくはない」
「でも今はありえないっすね。だってこいつら迷惑でしょ」
「ああ・・・・・そうだ」
悪性は力強く頷く。
「捕縛では足りぬ。1つ1つの災厄を完全に消さなくては」
陽山師は昔より有名になったと思う。それは陽山師がこのようなでかい災厄ではなく、個人的な悩みのような小さい災厄をも扱うようになったからだ。
一時期巷ではうさんくさいなんでも屋と言われていたみたいだが、その仕事ぶりにそのような陰口は必然的に少なくなっていっている。
そして1年と少し前。この地域を襲った災厄。その爪跡がまだ残っているからでもあるだろう。
よろしくお願いします。