表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1「不死身?」

人は皆等しく『命』が与えられている。その命とは等しく尊くとても大切な物と言える。

まぁ、人によって価値感は違うだろうが、大半の人間が大切だと思っているであろう。


だが、その命には期限があり、いつまででもあるわけではない。期限がどうとか言うよりも、事故や病気。そして、自殺、いづれかの行為によっても、人は命を落とす。


それ以外にも命を落とす行為、いわば、死に方なんてものはいくらでもある。


ではもし、その命が...永遠に在れば...

もし、事故も病気も自殺でも死ねないとしたら...


人は、羨ましいと感じるだろうか。



■■■


「いのちー! ごはんー」

「うぃー」

布団から顔だけを出し、返事をする。


布団から脱出し、制服が収納されているタンスを開け、慣れた手つきで黙々と着替える。


そして、部屋を後にし家の一階にあるリビングへと足を運ぶ。


机の上に(いろど)られた、ごく一般的な朝食を一口一口胃に入れる。


そして、いつものように目にする、親同士の喧嘩。

『全く...飽きずに毎日毎日頑張るなー』

と、心の中で呟く。


「おい。お袋、親父、止めろって!」

いつもの事だ。この台詞も何回目だろうか。

「お前は黙ってろ!」

そんなことを言って、俺を突き飛ばす。

『止めるんだ。止めるんだ...今はキレるな』

親父をまじで殴ろうとする自分を止める。


はぁー...俺は鞄を持ち、学校へと向かう。


俺の名前は伊野いのち。私立横見ケ丘高等学校の2年生。


特質するものもなく、成績は中の上。と言ったところだろう。


友達、彼女ともにいない極がつくほどのぼっちである。


ちなみに学校では、【結界神(けっかいしん)】なんて異名が付けらている。名の通り、結界が張ってあるくらい、近寄り難い。あるいは異彩なオーラで包まれている。なんて理由が、由来だろう。

くだらない。が、存在を多くの生徒が認知している。悪くわない。


あっと言う間に学校に到着する。

校門を通り玄関へと向かう...が、そこには生徒会長である姉と、副会長である妹、が服装検査をしている。


2人は俺を冷たい目で凝視した後、服装検査へと視線を戻す。


2人はこの学校の希望。秩序と規則を正し、全校生徒を未来へと導く、いわば天使である。


故に、【エンジェルシスター】の異名を持ち合わせる。


名の通り、才色兼備(さいしょくけんび)で、秀才。エンジェルのように美しく神々しい。そんな理由が由来だろう。


ちなみに、この2人からは嫌われている。

ほんど話さないし、ほんとんど顔を合わせない。そんな感じだ。


家族にして、真逆。当然、他からの目は厳しい。



玄関に着き、上履きに履き替える。そして、目に入った、掲示板のある記事。


ーーー3年美人生徒会長『伊野いのり』。1年美人副会長『伊野いのみ』による、勉強講習会。開催予定!ーーー



なんて記事だった。くだらんな。


教室に入り、椅子に腰掛ける。




気付くと放課後。

はぁー...1日が早い。



そんなことを呟きながら、家へと帰る。

「はぁー...」



「ただいまー」

いつもはお袋が『おかえりー』と返答してくれるのに、今日は返答がない。

それに加え、やけに静かだ。


もう、姉と妹は帰ってきているはずだ。なんせ、靴があるからだ。


「ん?」

ふと、親父の靴が目に入った。

「今日は早いなー」

と、独り言。


とにかく俺は、靴を脱ぎ、リビングへと向かう。

そして、ドアノブを回し、引く。


「.........」

そこには、お袋、親父、姉、妹が家族勢揃いで静かに立っている。

妹と姉に関しては、とても不安そうな顔をしている。


親父は椅子に座り、酒を飲んでいる。


状況がつかめない俺は、問う。

「どうかしたの?」

「......」

誰も喋らない。



いきなり、親父が立ち上がり、料理台の棚の中からなにかを取り出す。

「っ!?」

「お、おい! 親父! なにすんだ」

親父は、棚から、長めの果物ナイフを取り出していた。

親父はお袋の所へと徐々に接近する。

皆、呆然と立ち尽くす。

姉と妹に関しては、もう泣き出しそうだ。


親父はニタっと顔を綻ばせ、お袋へと突進する。


「やめろーーーーーー!」

気づいたら、お袋をかばっていた。

ナイフが俺に刺さろうとする一瞬に、手を翳す。

ありえない激痛が手のひらに走り、心臓が刻む律動が加速する。


俺の手は、完全に果物ナイフが貫通していた。

親父は果物ナイフを抜き、俺に飛びかかろうとする。

俺も、痛みを堪え、親父に飛びかかる。


「クソ親父がーーー!」

力で押し切り、床に押し倒す。

そして、何度も殴る。

「なにやってんだよ! てめーの奥さんだろーがぁーー!」


親父の反撃タイムへと移行する。

次は、俺が押し倒され、何度も何度も果物ナイフで、俺の腹を刺した。これは、死んだな。

部屋は血で染まる。朦朧とする意識の中、姉と妹とお袋の表情が目に入る。



...なんで...泣いてんだ?



...病...院?

色鮮やかな、夏空が目に入る。

まるで、悪夢でも見ていたかのように、体のどこも痛くない。

体を見ると、傷一つ付いていない。

頭に『?』が浮かぶ。



「おー。起きたかね」

担当の医師だろう。

「あのー。俺はなぜ、病院に?」

本当に悪夢かもしれないと確認をとる。

「...君は、ナイフで刺されて、入院したんだよ」

深刻そうに話す医師。

「じゃあ、なぜ...傷がないし、死んでないんですか? 確か、俺は何回もナイフに刺されましたよ」

取り乱して、問う。

「確かに、君の体は酷いことになっていた。内臓はめちゃくちゃだし、体はボロボロだった......」

「じゃあなぜ?」

「......君は......不死身なんだよ」




「え?」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ