鬼頭真琴の場合その2 27
第五十七節
メタモルファイターの多くが男なのだが、男は多くの場合女よりも主に実用性が無い方向に向かって凝り性なので、自分の能力の衣装に詳しくなったのだろう。
橋場はセーラー服に詳しくないし、調べようとも思わないが。
「たまにテレビとかで安物のチャイナ着てずん胴曝す女優さん出て来るけどあんなのぜんっぜん駄目だね」
「はあ」
「“チャイナ三倍段”って言ってね。チャイナ着た女の人は三割増しで綺麗に見えるもんなの!でも安物のペラッペラずん胴チャイナは三割減でブスに見せるから!」
何を力説しとるのやら。
どうも鬼頭真琴にとってはあくまでも女物は眺めるものであって、自分で着たりするものではないらしい。益々男の子みたいである。
「ふ~ん、あっそ…」
ぴったり張り付いた美夕の体温が伝わってきそうだ。
おっぱいに飽きたのか今度はお腹のあたりをすりすりしている。
「ちょ、ちょっと…やめてくれって」
「あんでよ?いいじゃない減るもんじゃ無し…」
「ほれこちょこちょこちょ」
「ぁあっ!」
思わず声が出てしまった。
もう脇腹まで入ってるんじゃないかと言うほど深いスリットから見えている素肌…ふともも…の肌色部分を美夕がこちょこちょしてきたのだ!
「すっごーい。メイクまでちゃんとしてる」
「ち、近いよ!近い!」
「いいじゃん。女の子同士なんだし」
目の前に毛穴の一つ一つまで見えそうなほど美夕の顔が近づいている。あんな僅かなアルコール成分ですっかり酔っぱらったらしく顔が赤らんでいる。
「こんなイヤリングしたことないわー」
ちり…とぶら下がったイヤリングを撫で、その振動が耳たぶに伝わってくる。
「よせ…って」
『失礼しまーす』
扉が開くのと橋場が元に戻るのは同じタイミングだった。
ほぼ同じ大胆スタイルの『チャイナさん』がデザートを運んで来たのである。
第五十八節
「うーい!食った食ったあ」
「…大丈夫だったのかな…あんなに食べて」
「でも、ちゃんと規定料金払ったぞ」
三人で繁華街を駅に向かって歩いている。
「あのお店の店員さんって…元・男の人ってこと?」酔いが抜けてきた美夕。
「全員じゃないらしいけどね」
「…ホントにそうなの?あたし冗談で言ったんだけど」
「土地持ちのメタモルファイターにはそういう人結構いるみたいだよ。やっぱ後処理に困るから」
「後処理って…」
ドン引きしている美夕。
「…橋場くん頼まれてバイトとかしてないでしょうね?」
「するか!」
「あ、いいかも。あたしやってみようかなー」
一斉に振り向く二人。
「…チャイナ好きなんだ?やっぱメタモルファイターだから?」
「メタモルファイター関係ないよ。あたしこれでも生まれつき女だからちょっと露出の多いコスプレだと思えばいいし…ってか調理のバイトだってあんだよ?」
「はあ」
「美夕もバイトしたら?」もう呼び捨てにしている。
「何であたしが!」
「あたし女装得意じゃないけど、美夕なら似合ってると思うよ」
生粋の女が「女装」というのも違和感があるが…。
「嫌だよ。あんなカッコ…それこそ橋場くんの方が似合ってるわ」
「あのなあ…」
「ま、それ様にカスタマイズされたメタモル能力の変身後に生身の女が対抗するのは大変だけどさ。単なるバイトだよ?そりゃ露出度はちょっと多いけどハンバーガー屋だの牛丼屋だのと変わんないって。それに…」
「…それに?」
「まかないはうま~い中華三昧!これはおいしいね!」




