鬼頭真琴の場合その2 26
第五十四節
「こいつは単なる冷やかしだよ」
「ひっどーいじゃなーい。にしても両手に花たあいいご身分で」
へらへらとマイペースに立ちあがってこっちに来るウー。
「うるせー。お前も戻っとけ。ウチの制服いつまでも着てんじゃねえよ」
「あーはいはい。あんたがたも対戦成立してあたしへのバリアってか。わーりましたよ」
セーラー服が変形し、一気に年を取る女。
何の変哲もない二十代の女の外出着みたいなのになる。
「悪かったね彼女さん」
「いーえ。お気になさらず」
さらりと流す美夕。もう目の前の男が女になったりセーラー服着たりチャイナドレス姿でスカートめくられることに慣れ始めたらしい。
「折角見かけたから挨拶してあげたのに…」
「どんな挨拶だよ」
美夕と真琴が顔を見合わせている。お互い「何じゃこりゃ」という表情だ。
「ひでちゃん。この人前の彼女とかじゃないよね」と、真琴。
「ンな訳があるか!」
「ま、そーか」
「信じるんだまことって」
呆れてみている美夕。
「うん。本人がそう言うからにはそうでしょ」
全く疑う積りも無いという表情だ。というより半分以上はメタモル能力者としてのフィーリングが事実を裏付けているだけなのだが。
「どーもそういう人じゃないと橋場くんとは付き合えないみたいだね」
「…あ…その…」
どう反論していいやら分からん。折角事態が落ち着いてきたところに突然のチャイナドレス姿に果ては背中をさすられて「あ…」である。
「今度こそあたし帰るから。お仲間同士好きなだけちちくりあってればいいんじゃん?」
「あーら最近のジョシコーセーって進んでるんだ」
「やかましい!」
「カノジョさーん!」これはウー。
第五十五節
「…もうカノジョじゃありません」
「あらそー。…もしかしてあたしのせい?」
全員がジト目で見ている。
「…しゃーない!じゃあ御馳走しよう!」
「えっ!?御馳走!?」
突然目が輝く真琴。
「今日は出血大サービス!お騒がせしたお詫びに2割増しの20%オフで!」
いえーい!とはしゃぐ真琴。
「…?事態が見えないんだけど?」
「言ってなかった?あたし、チャイナレストランのオーナーなの」
第五十六節
そこからの展開は早かった。
半個室に案内された三人は夕食が入らなくなりそうな御馳走を振る舞われたのだ。
といってもまあ、一皿一万円の高級食材とかではなく、山盛りでも一食分の値段のから揚げとかそういう庶民のB級グルメだが。
余りにもいろんなことがあって気持ちの整理もついていなかった美夕だったが、お腹が膨れるとともに機嫌が直って来ていた。
「おいしーねー!」
「…うん」
常にケラケラ話し始めるのは真琴である。
大皿持ってきたウーにまた接触されてチャイナドレスにさせられた橋場にももう怒らない。
アルコール度数が極小で未成年でも飲める炭酸飲料ですっかり出来上がった美夕が絡んできた。
「はーしばくぅん…綺麗…」
「お、おい…」
でかい尻がTバックなもんで殆ど素のままチャイナドレスの裏地に当たってするすると滑りそうだ。
「あたしこんな間近でチャイナさん見たの今日が初めてだわ…」
椅子をぴったりくっつけて手を伸ばして来る。
まるでコスプレしたコンパニオンにセクハラしてる地方公共団体のオヤジである。
「雑貨屋の天井から掛かってるチャイナとか見たことないんだ」
麻婆豆腐を白米で流し込みながら言う真琴。
「あんなのむしろおっさんとかしか買わないよ…ひっく。女子高生そんなお金ないし…ひっく」
なんか身体まで密着してくる。…ぶっちゃけ男女の姿で付き合った時もここまで濃密なスキンシップに至ったことないんだが…。
「ふ~ん…こんな感じなんだ…」
「ちょ!よせ…」
朱色の立体的な衣装によって浮き上がる綺麗な形の乳房を掌で撫でまわす女子高生。
「…?どうなってんのこの服?おっぱいの形してるわけ?」
「チャイナは基本が個人に合わせたオーダーメイドだよ。殆ど体型がそのまま出るから」
「詳しいな」
麻婆豆腐がカラかったのか冷たいウーロン茶をごくりと飲み干す真琴。
「メタモルファイターの知り合いにチャイナいたんだ。その子研究熱心だったから」




