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鬼頭真琴の場合その2 19


第三十九節


「ということで、大出血サービス!あんたの女期間は10年にしまーす!」

「!!!!!」


 聞いていただけの橋場にも戦慄が走った。


「おま…10年って…」


 橋場が今16歳だから、10年後といえば26歳である。

 このおっさんが幾つなのか知らないが、仮に20だとしたら、男に戻った時には30歳ということだ。

 人生の中心部分…とまではいかないかも知れないが、かなりのウェイトを占めるであろう20代を女子高生からOLで過ごせというのか!?


「これでもサービスしたんだけどなー」


 明らかに楽しんでやがる。

 漆黒のセーラー服姿の少女の顔は青ざめ、絶望が広がっていた。

 男は誰しも一度は女になってみたいとか、女を経験してみたいなんてことを言うが、せいぜい「二泊三日レンタル」くらいの話だ。

 10年なんてもう完全に人生がねじ曲がっている。


「あれー?不満そうだねえ」

「いやその…」


 思わず橋場がフォローに入りそうになる。しかし、こいつに美夕が犯されていたとしたらどう思うか?殴り殺したくなっていたのではないか?と思って止めた。


「あーはいはい。それじゃあ20年にしてあげる」

「!!!!!!?!?!!!?!」


 聞いていた橋場の方が背筋に冷たいものがすべりおちた。


「あれー?まだ不満そうだわー」


 真琴の棒読み女言葉が臓腑をえぐる。


「じゃーこれが最後。タイムリミットは…い・っ・し・ょ・う・!」

「そっ!!?」

「どしたのー(棒読み)?そんなに嬉しい?女の子になれて?これから死ぬまでずっと女の子だよー?」

「お前…」



第四十節


 元・リーゼントに構っていた形の真琴が顔を上げて橋場の方を見る。


「何も不思議はないでしょ?条件を受け入れれば「戻らない」って選択肢だって取りうるんだから」

「そりゃそうだが…そんな条件、相手が飲まんだろ」

「ひでちゃんたちがやってる練習試合とか、普通のメタモルファイトだとそうだろうね」


 ケロッとして言う真琴。


「逆に言えば相手が納得しさえすればメタモル能力の「有効時間:一生」ってのもありなわけ」

「しかし…」


 そんな合意が成立する訳が無い。

 仮に口ではそう言わせたとしても、精神が拒否している以上「合意」ではない。そういう展開になるはずだ。


「言ったよね?あたしの能力。『条件設定に相手の合意が必要ない』って」

「あっ!」


 なんてことだ!そういうことなのか!


「ってことで続き」


 くるりとセーラー服美少女の方に振り返る真琴。


「まーこれから色々大変だと思うわ―。さっきも言ったけど冷え症とか便秘とか、月のものとか」


 もうシャレにならない。あのリーゼントはまるでメタモル能力を喰らった一般人みたいにここから先、ごく普通の女として一生を生きなくてはならないのだ。

 このバトルで手に入れたのはその見目麗しい美少女の肉体と…そしてよく似合っている制服くらいのものだ。


「毎朝のメイクとか、お肌の曲がり角とか、女同士の人間関係の大変さとか、男の身勝手さに振り回されたりとか…」

「あ…あ…」

「どしたの?青い顔しちゃって。折角の可愛い顔が台無しだよ?それとも何かな?今朝家を出る時にはこんな風になって帰って来るなんて想像もしてなかったかな?」


 そりゃそうだろ。

 メタモルファイターが自分の体質にどういう風に気付けるかは環境による。ただ、自分たちだけは戻れると言う安心感は確かにあるのだ。

 それが完全に覆されてしまった。



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