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鬼頭真琴の場合その2 18


第三十七節


「…フェイリス女学院の制服着せられた」

「それってもしかして…」

「知ってるの?」

「ああ。多分知ってる」

「へー、フェイリスのねえ」

「興味あるのか?」

「うんにゃ。可愛い女子の制服なんて見る分にはともかく着たいなんて思わないよ」

「…まんま男のセリフだ」

「そっか…って、サイズも多分入らないし」

「それも男だって」

「えー、だってあたしタッパがあるからいつも標準サイズ無理なんだよ」


 …確かに女子にしては背が高いが細身だし、探せばそれくらいの身長の女子の制服くらいありそうな気がする。


「…それも男子の心配だな」

「…あー確かにそうだね」

「で?他には?てか着せられたってことはその試合負けたんだな?」


 頷くセーラー服。


 そりゃそうだ。見るだけで触ってるのと同じ効果を発揮できるのだ。人質も取らずに勝てる訳が無い。

 というか恐らく人質を取っても勝てない。

 離れた場所からコントロールされてしまうからだ。


「その個人を知ってるんだ」

「ああ。特殊系で、試合が成立しちまえば相手を見てるだけで触ってるのと同じ効果がある」

「へええ!面白いね!」

「面白くねえよ!えらい目に遭った」

「ってことはひでちゃんもフェイリスの制服着たんだ?」

「…まあな」


 なるほどこれは恥ずかしい。男同士ならどこか『共犯意識』で流すことも出来そうだが、男女となると羞恥プレイに近い。


「へーほー」

「…想像してる?」

「うん、してる」

「そろそろストップしてもらっていい?」

「わかった。いいよ」にこにこ。

「で?他にはどんな?」

「…女子の制服ばかり…だよ…」


 どうやらこれ以上の情報は引き出せそうにない。



第三十八節


「ひでちゃん、こいつからも情報取ろうとしてるでしょ?」

「まあな」

「多分余り期待出来ないと思うよ」

「…だな」

「システム的な深みなんて追及してないだろうし、周辺情報なんて知る由も無いんじゃない?」

「…それでたどり着いたのが人質作戦かよ…」

「卑劣漢だね」


 楽しそうに言う真琴。

 確かにこいつを放置しておくのは危険かも知れない。

 自衛のための発動しか基本は出来ないから一般人にメタモル能力をかけまくることは確かに出来ないが、圧倒的な暴力で周囲を屈服させることは可能だ。

 恐らくそういう活動をしようとしていたんだろうが、すぐさま「メタモルファイター同士」の戦いになってしまって一方的に勝てる戦いが(ほとん)ど体験できなかったのだろう。

 その意味では、戦闘力とメタモル能力を封印することは合理的で理に適っている。


「…能力だけ奪うことって出来ないかな」

「女の子にしちゃうのは気の毒だってこと?」

「…良く分からない」

「ま、確かにやってやれなかないとは思うよ」

「そうなのか?」

「試したことは無いけどね。ただ、基本的には相手を女にするのが能力のメインだから。着替えとコントロールはオマケ。だからコントロールだけ効かせた状態ってのはかなり無理してると思う。不自然だから」

「なるほど」


 何だかんだ言っても結構システムに詳しくなっている真琴なのだった。


「…興味は無いけど一応聞きたい」

「身体は男のままで着てる服だけ女物にして“女装”状態に出来るかってんでしょ?」


 不意を衝かれた。


「…」

「図星だね。そういう追求したことないけど多分出来ないと思う」

「そっか」


 こいつが知らないし出来ないってんじゃ多分出来ないんだろう。橋場も「身体 → 服」の順や「身体・服同時」は何度も経験しているが、服だけ先行したことは無い。一度だけ例外があるとすれば対飛田戦で乳房とブラジャーだけさせられた時くらいだ。



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