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謎の少女の場合 04


第九節


「おやおや?そういうことを言っていいのかな?」


 立ち上がったリーゼントが美夕に歩み寄り、橋場の方を見ながらナイフをちらつかせる。


「…」


 今の橋場は視線だけで人を殺せそうだった。


「怖い顔しても駄目だぜ。一般人相手ならともかく、メタモルファイター同士だ」


「何が望みだ」


「バトル了承しろ」


 …何てことだ。こいつもバトルマニアか。


「…人質とられた状態でまともに試合になんぞならんだろうが」


 遂に自らがメタモルファイターであることを認めてしまった。


「俺がまともに試合すると思ってんのかよ」


 リーゼントの下卑た表情が歪んだ。


「あんだと?」


「お前らみたいに、スポーツマンみてーなフェアプレイで「試合」なんぞやってる奴らは虫唾が走るんだよ!人質がいる状態で…しかも事情を知らん一般人の彼女の前でいたぶってやるぜ!了承しろ!」


「テメエ馬鹿か。了承するとでも思ってんのか」


「するね。しなかったらどうなるかお仲間なら分かるもんな?」


 ナイフをひらひらさせるリーゼント。

 美夕は恐怖のあまり固まってしまって一言も発することが出来ない。

 両手を頭上に掲げる様に持ち上げられ、手首を縛りつけられて吊るされるような形になっている。


 折角のデートの一張羅は、汚れてはいないが若干乱れていた。


「心配すんな。何もしてねえよ」


 その意味するところは明らかだった。


「貴様…」


「俺を怒らせるなよ?ちょっと手が滑れば…」


 位置取りが悪すぎる。メタモルファイター同士ともなれば人質を取った方が絶対優位だ。


「安心しろ。ナイフで切り刻むよりもお前の醜態を見せつけてやる方がずっと興奮するんでな」


「このゲス野郎…」



第十節


 カラカラと音がして橋場の腕が吊り上げられて行く。


「…本当に美夕は解放するんだろうな?」

「男に二言はねえよ」


 今は皮肉にしか聞こえない。


 両手を万歳するかの様に頭の上に組まれる形となる。両方の手首を縛りつけて上に吊っている。

 散らかった廃工場は天井の梁の多くが剥き出しになっており、どこにでも引っ掛けることが可能だ。

 橋場は丁度、美夕の目の前に正面から向かい合う様に配置された。


「…橋場…くん」


「…すまん」


 としか言いようが無かった。ここでメタモルファイターから逃れられなかった美夕を責めることなど出来ようか。


「本当に解放するんだな?」


「しつけえな。これからやること以上に興奮することなんてねえよ。目標が達成できればそれ以上なんぞねえって」


「…」


「そう怖い顔するな。案外気持ちいいかもしれんぞ?…バトル了承するな」


「…いいだろう」


「そうか、それなら…ほれ」


 両手をつりあげられた橋場のお腹を正面から(すく)い上げる様に(てのひら)でタッチするリーゼント。

 すぐにそこからどき、美夕が正面から橋場を見られるようにしてやる。


「う…っ!…あああっ!」


 早くも橋場の身体に異常が現れた。


「み、見るな!美夕!見ないでくれ!」


「ひゃーっはっはっは!見ろよ見ろよ!『彼氏の晴れ姿』をよお!!」


 橋場の両肩の幅がぐぐぐ…と縮んでいく…両手を吊り上げられた状態ではそれは良く視認できないが、次の変化は明確過ぎた。


 むく…むくむくむくっ!と成長する橋場の形のいいバスト…乳房。


「あああっ!」



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