鬼頭真琴の場合その2 14
第二十八節
「これは人類の知恵な訳よ。規律で本能をコントロールして種の保存を保とうっていうね」
「はあ」
「言わんでも察しが付くと思うけど、この「聖オナン」が「オナニー」の語源ね」
「こいつもまさかその後の人類にそういう扱いを受けてるとは思わんだろうな」
「そーだね。ギロチン先生とかブルマ夫人みたいにまさかの人名由来っていう」
「そうなのか」
「うん。ちなみにブラジャーの発明者は男性ね。これ豆知識」
「いらねえよ」
ぎらっと真琴の視線が鋭くなる。
「まあ、えらく回り道したけどメタモルファイトの話」
「お、おう」
「結局のところ、相手を屈服させる手段として「相手を女にして性的に組み敷き、最終的には子供を産ませる」ってのが最上…って考え方は分かるわよね」
「…まあ、そういう風に考える奴もいるんだろうな」
「そう思わない?」
「いや…オレは別に普通に女相手でいいよ。どうしても子供欲しいかどうかなんてまだ実感が無いし」
「それはそれでいいわ。要するにメタモルファイター同士が行うメタモルファイトってのは、『相手を女にする』戦いな訳じゃない?」
「そうだ」
「そこには、本来なら相手の同意なんていらないのよ」
沈黙。
「…嫌がる相手を無理やり性転換して女にする戦いだと」
「そう」
少し考えている橋場。
確かにそういうところはあるかもしれない。
「きっと「掛け持ち出来ない」ルール…っていうか法則…を利用して気軽になったり戻ったりを繰り返してて、しまいにゃ「解除条件」なんてものまで「発見」して「女の子ライフを楽しむ」層まで出て来ちゃった」
「いけないってのか?」
「べつにいけなかないわ。でも、そういうことばっかり…条件決着とか…やってると、本来の戦い方を忘れちゃうわ」
「それが昨日の能力の説明とどう関係するんだ?」
第二十九節
「昨日ひでちゃんと対戦した時に」
「ひでちゃん…」
「ひでちゃんでいいよね?」
「…まあ」
「じゃあ続けるね。ひでちゃんと対戦した時に、あたしの方はすぐに戻してもらったけど、ひでちゃんの変身条件も解除条件も何も言わなかったよね?」
「ああ。お蔭でヒドい目に遭った」
「まあまあゴメンってば。…あれがメタモルファイトの本来の形」
しばし沈黙。
「…相手の同意なんていらないと」
「そーだよ。何度でも繰り返すけど、本来なら相手を相手の意思に反して無理やり女にする戦いなんだから」
「その上で犯すと」
「考え方として…ね」
「じゃあ何故女のメタモルファイターがいるんだ?相手の男を女にしても子供を作らせることも自分で作ることも出来ない」
「それはまた別の話だわね」
「しかし、相手の同意がいらないってことになったらムチャクチャにならないか?」
「それは精神的に抵抗すればいいでしょうが」
「…そっか」
「相手のメタモル能力そのものを跳ね返しちゃえばいいわけ。そういう「本来の勝敗」とは違うことをやりたいんだったら幾らでも特殊条件について話し合うといいわ」
「例えば?」
ふう、とため息をつく真琴。
「双方が合意さえしているんなら何でも受け入れるのがメタモルファイトだからさ。「勝った方がペナルティ」とか何だってありだよ」
「いやそれは…」
「普通は相手方が同意しないよね。だから成立する心配しなくていいんだけど、この頃は「ルール」マニアみたいなのが談合するからもお…」
橋場の脳裏に水木が浮かんだのは言うまでもない。あらゆる「形式」を悪用(?)して女子高生ライフを楽しんでやがる。
あいつならスチュワーデスの制服を誰よりも喜びそうだ。
「…多分そろそろ電話掛かってくる」
そういうのと橋場のスマートフォンが鳴り出すのが同時だった。




