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鬼頭真琴の場合その2 13


第二十六節


「でもまあ、男を女にするからには…意味するところは一つだよね」

「…子供を産ませると」

「そゆこと」

「しかし…過酷な」

「あんただってファイト以外で随分男を女にしてきたんじゃないの?」

「それは…」

「図星でしょ」


 楽しそうに指摘する真琴。


「悪かったな」

「別に責めないよ。一般人相手には自衛でしか使えないんだから」

「それにしてもちょっとこの能力はヒドい。男が女にされるのは死ぬより辛い屈辱だぞ」

「まあ、そういうところはあるかもね。でもそれって人間の勝手な思い込みだよ」

「人間のって…」


 その場をくるくる回るように歩き出す真琴。


「文化的に男なるもの、女たるものの規範や美意識を育てるのは勝手だけど、生物学的に言えばその「機能」のみに注目せざるを得ないからね。さっきまで男だろうが子供産めるんならそんなの関係ないもん」

「し、しかし…」

「性交渉が気持ちいいのは、そうでもしないとその種が滅びちゃうからでしょ。全てはそういう都合で決まってんのよ」

「じゃあどうしてこの能力は服装まで変えるんだよ!意味ねえだろうが」


 ちょっと考えている真琴。


「あたしが設計した訳じゃないけど…まあ、直接的な意味は無いよ。うん」

「だよな」

「確かに男がスカート履いたりブラジャーするのは「変態」ってことになってるけど、煎じ詰めて言えば単なる布きれだからさあ。そんなもん小さな問題だって」


 似たような能書きをどこかで聞いた気がする。そうだ、斎賀だ。


「とはいえ、社会的な意味が付与されたってことなら、服装による「感じ方」だって違う訳で、最終的にはそれが「目的に適う」ってことなんじゃない?分かんないけど」

「…要は肉体的・生物学的だけじゃなく社会的・文化的に『女にされる』ことである種の快感を得させることが、生殖にも有利だったことか」

「まあ…そういうこと」

「脳内に女性ホルモンとか…詳しく分からんが、そういうものがドバドバ出ることで妊娠しやすくなると」

「推測よ推測。だって馬鹿馬鹿しいじゃないセーラー服とか。ほんの何十年の伝統しかない服装が何で人間が持つ「能力」の一部として備わってるってのよ」

「…スチュワーデスの制服使いのおっさんもいたぞ」

「あ、知ってる。飛田っちね」



第二十七節


「…知ってるんだ」

「メタモルファイト本番では戦ったことないけどね」

「だったらオレたち遊んでていいのかね」

「何が?」

「この能力は誰もが持ってる訳じゃない。ある種選ばれてるとか」

「いーんだって。出番があるなら誰か教えてくれるからさ」

「出番って…」

「こんな無茶な能力があったら大変…だって思ってるでしょ?」

「そりゃな」

「でも大丈夫。仮にこの能力を暴走させて、自分以外を全員メスにしちゃっても問題ありません」

「いや、大変だろ」

「メタモルファイターにはメタモル能力が効かないし、メタモルファイターは自分で自分を性転換出来ない…ってことは絶対に男は一定数残るじゃない」

「あっ!」


 そうか…そういえばそうだ。


「じゃあ、メタモルファイトってのは自然の摂理を持て遊ぶ許されない遊戯…なのか?

「そんなこと言ったらSMとかの変態プレイの皆さんもみんなそういうことになるね」」

「…かもな」

「そういうことが出来るのは人間だけだってずっと信じられてきたみたいだけど、この頃はアリも『戦争』することが分かってきたわ」

「戦争?」

「そう。同種族同士の殺し合い。まあ縄張り争いとか色々じゃない?戦争や同族殺しは人間の専売特許じゃないの。サルにも「ホモ」がいることが分かってちょっとした騒ぎになったわね」

「…なんじゃそりゃ?」

「要するに種の繁栄、存続に全く関係ない快楽だけを行うのもまた人間の専売特許じゃないってこと。これだけ数がいれば中には例外もあるわ」

「達観してるな」

「旧約聖書の聖オナンの話は知ってる?」

「何の話をしてんだよ」

「一時期凝ったんでね~自慢させてよ」

「言ってみろよ」

「ざっくり言うと人類初の膣外射精を行ったのがこの「聖オナン」だとされてるわけ。その後「そういう快楽に溺れるだけのことはしてはいかん」ってんで天罰で殺されちゃう」

「おいおい」

「キリスト教に限らないけど、性的に節制を求める教義ってのは「種の保存」に関係ない…ざっくり言えば「ひとりエッチ」は禁じてるわね」

「…どうコメントすりゃいいんだ?」


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