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鬼頭真琴の場合その2 12


第二十四節


 走りながら会話する橋場と真琴。まるで忍者だ。


「この頃メタモルファイトの解析が進んで来てね。対戦中に行われた『同意』による条件決着と解除条件が余りにもハバを効かせてるのね」

「ああ」

「確かにメタモルファイトってのは、恐らくは純粋な自衛のための能力だった「メタモル能力」を持ち合ってる者同士のお遊びだったわけ」

「そうか」


 信号を避け、人気のない道を目立たない様に疾走する。


「だから何よりもまずは、「メタモル能力の発揮と受け入れ」の両方を同意する必要があったのね」

「ああ」

「でもそれがこの頃は行き過ぎて、下手すると複雑怪奇な条件の論理の騙し合いみたいなことになって来てるわけよ」

「騙し合い?」

「そう。条件設定もハンディも全部お互いの同意の元に行われる訳だけど、そこで「勘違いしやすい、嘘ではない」条件を相手に飲ませられれば一方的に優位になるでしょ?」

「…まあ」

「純粋にスポーツとしてメタモルファイトやってんならそれでいいかもしれないけど、基本的にこの能力って「相手を屈服させる」ためのものなの」

「…そうだな」


 橋場たちも最初はそうやってプレイしていた。

 だからメタモルファイトの最後はキャットファイトになり、時には見た目がレズプレイみたいなことにもなっていた。しかし、一方的になったならば「男が女を組み敷く」構図になるものではある。例えその「女」が元・男だったとしてもだ。


「あくまであたしの予想だけど、多分この能力って生き残るために必要だったんじゃないかな」

「生き残るため?」

「そうそう」

「相手を女にすることがか?」

「相手っていうか、小さな集団の中ではオスが多くてメスが少ないと子孫を増やしにくいでしょ?」

「…そうだな」

「オットセイの群なんてあれだけメスがいるのにオス一匹だけだもん。それでも種としては存続してる」

「何か壮大な話になってきたな」



第二十五節


「クマノミは知ってるよね?」

「いや、知らない」

「珍しい生態を持つ魚でね、集団の中にメスが少ないと思ったらオスの一匹が性転換してメスになるの」

「は?」

「ビックリするよね」

「それは…男が女になるってことだよな?」

「まあ、魚には申し訳ないんだけど生物学の用語を使うと「下等生物」に相当するから、人間よりもずっと造りは単純なんで人間と全く同じに考える訳にはいかないと思うけど」


 そんな魚もあったのか。


「つまり、メタモル能力は種…もしかしたら小集団の雌雄…オスメス…比率が種の存続に危機的な数になって来た時に発動して、メスを増やすための能力なんじゃないかなって」

「そんな馬鹿な」

「男女が逆の例になっちゃうけど、第二次世界大戦の直後、ヨーロッパのとある国でこんなことが起こったらしいの」

「はあ」

「若い男性が戦争の兵隊に取られまくり、しかも戦死しまくったのね」

「ほお」


 この話が何の関係があるのだろう。


「つまり、必然的に男女比で言うと女ばっかり多くて男が余りいなかったの」

「…ふん」

「すると不思議なことにその国ではしばらくの間生まれる赤ちゃんが男ばっかりだったんだって」

「え…」

「単なる偶然の可能性もあるけど、そういうこともあるわけ」

「ちょっと待てよ」


 立ち止まる橋場。


「それじゃ何か?メタモル能力で「男を女にする」ことには大いなる意思が関係してる正しいことだっていうのか?」

「うんにゃ」

「でもお前そういう意味だよな」

「そう言い切っちゃうとオカルトになっちゃうでしょ」


 実際問題オレたちがやってるのはオカルトどころかセクシャルコメディ以下だがな…とは言わないでおいた。



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