鬼頭真琴の場合その2 11
第二十一節
実はあの後、身体は元に戻らなかった。
いや、一生戻らないとかそんな話じゃない。気合を入れても…要は通常の手順では戻らなかったってことだ。
修復不可能な有様になった修羅場となってしまったため、今度は部屋をしっかり施錠して元に戻らんと奮戦したのだがどうにもならなかったのだ。
疲れ果てた橋場はそのまま横になって寝てしまった。
せめてセーラー服よりも過ごしやすい恰好で眠れば良かったんだろうが、そんなことも思いつかないほど疲労困憊になっていたのだ。
そのまま一時間ほど爆睡した後、母親の夕食の合図で起こされた。
布団の中で「覚醒」し、このまま戻らなかったらどうしよう!と頭を抱えてみると…そこには慣れ親しんだ髪型の「頭」があったのだ。
ガバリと跳ね起きると…下半身の涼しさも、胸の重さも、纏わり付く髪の鬱陶しさも無い。
…男に戻っていた…。
第二十二節
同じクラスなので同じ教室にいるのだが、美夕は近づこうとするとぷいと視線をそらしてしまう。
必死に話しかけようとするが、走って逃げてしまう。
今度こそ本当に振られてしまったのだろうか。
幸か不幸か、美夕は橋場に対して女装趣味の変態だとか、三日と開けず女装してるとか…変態はともかく事実も含まれるんだが…そういう噂を周囲にばら撒いたりはしなかった。
ただただ無視するだけである。
橋場と美夕が付き合っていることは周囲は良く知っていたが、良くある男女関係のケンカとしか思われていなかった。
第二十三節
「…という訳なんだ」
「いや…そりゃホントに悪いことしちゃったねえ」
また帰り際である。
訪ねてきた鬼頭と帰路を同じくする橋場。
そろそろ目撃例も多発する頃だろう。なし崩しってことになってしまうのかなあ…と橋場は思った。
「ということでこれ返すよ」
紙袋を差し出して来る。
「あ、これ。いいのに」
「いや、高いだろ。もらえんよ」
「…高く見える?」
「…見える」
「やっぱり男の子だね~。安物だよこれ」
「それでもだ。安いってんならそっちでなんなりとしてくれ。女のきょうだいもいない男がこんなもん持ってたら問題だ」
「ま、そりゃそうか」
「実際に付けたりはしてないから大丈夫」
「一回くらい気にしないのに…。ま、じゃあもらっとくわ」
紙袋を受け取った。
「あの能力は何なんだ?遅れて発動ってことでいいんだよな」
「まー迷惑掛けちゃったからお代は無しで教えるね」
「頼む」
ふと立ち止まる鬼頭。
「…どうした?」
「…実戦訓練で教えてもいいかな?」




