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鬼頭真琴の場合その2 07


第十三節


 橋場は勘付いた。まさか!あれをやりやがったのか!


 女性的な仕草で両手で口を押える橋場…漆黒の生地に純白の三本ライン、真紅のスカーフのセーラー服姿…。


「…っ!!」

「…今度は何よ。そういう仕草やめなさいってば!気持ち悪い!」


 やっぱり理解してくれてない…が、今はそれは問題ではない。


「…んー、んー、んー!」


 ×を作ったり、ぺこりとお辞儀をして謝意を表明したりとジェスチャーをする橋場。


「何?何なの?喋んなさいよ!言ってくれなきゃ分かんない!」


 ヒステリー気味になってくる美夕。最初に出会ったころはもっと可愛く見えてたんだが…。


「んー!んー!」


 長い髪を振り乱して首を振る橋場。「喋れない」ことをアピールしている。


「はぁ?何で喋れないのよ。さっきまで見苦しく喋ってたでしょうが!」


 “見苦しく”余計だが、恐らく間違いない。


「んーっふ?」


 “喋ってもいいのか?”と言外に匂わせる。


「ったり前でしょうが!いいから喋れ!」


「多分…あたしの…!!!」

 バッ!と両手で口を塞ぐ橋場。可愛い。


「…あたし?あたしって言った?橋場くん」


 仕方ない、観念する。


「だからさあ…口調まで女に変えられちまったんだよ」


 …と、脳内では発言した。だが実際に口を衝いて出たのはこうだった。


「…喋り方も女の子にされちゃった…の」


 文字で書くとオカマみたいに読めるかも知れないが、そこは読者の皆さんは精一杯の知識を動員して可愛らしい声を当てて頂きたい。

 その上、上目使いの小動物みたいな…ではやり過ぎなんだが、それの目一杯控え目な挙動だ。一言で言うと物凄く可愛い。


「…はぁ?」


 もうチンピラみたいになっている美夕。


「良く分かんない。もう一度言ってもらえる?」


 カツアゲしてるレディースの女みたいだ。可愛らしい勝負服が台無しである。



第十四節


「だから…こんな喋り方したくないんだけど…口から出ると勝手に女言葉になってるのよ…ゴメン」


 ちなみに脳内では「だから!こんな喋り方したくねえけど、口から出ると勝手に女言葉になってんだよ!…すまん」である。


 次の瞬間だった。

 いきなりドスドス!と大きな足音をさせて近づいてくる美夕。殴りかかられるのかと思って一瞬目を閉じて身を固くする橋場。

 だが次の瞬間、下腹部に大きく風が吹き込んだ!


「きゃあああああああーっ!」


 アコーディオンみたいに広がったロングのプリーツスカートが舞いあがり、素脚の肌色とスリップの白さ、そして刺繍に縁どられたパンティが見せつけられた。


「何が『きゃー!』よ!男のクセにスカートめくられて黄色い声上げてんじゃないわよ!もおいい!あんたは一生そうやって女やってなさいよ!」


 ドスドス!とやはり大きな足音をさせ、破壊せんばかりにドアを叩きつけて美夕は部屋を出て行った。


「待って!」


 こんな声しか出せないが、思わず走り寄る。

 けたたましい音をさせて子供部屋のすぐそばにある階段を下りていく美夕の足音がする。


 続いて部屋を出ようとして一瞬立ち止まった!

 ぶわり!とその挙動にスカートが大きく揺れる。


 …この格好で追いかけるのか!?


 誰がどう見ても制服の女子高生だ。幸い、このデザインのクラシックなセーラー服はウチの高校のデザインそのままだからこの辺をうろつくぶんには目立たないが、それこそ一旦ウチを出たら戻ってこられないぞ?


 今は両親が出かけているからいいが、帰って来たらどうする?

 美夕を追いかけるのは簡単だが、この姿で両親が自分だと気付いてくれるわけも無い。

 そうなると家に上げてもらえるか微妙になってくる。


 ウチの両親はまだ美夕と付き合ってることを公にはしてないのは幸いだが、今の自分に当たる「クラスメートの女の子」として部屋に上がる以上、その説明が必要になってくる。

 まさか能力で性転換して女子の制服着てたんだ!と正直に言う訳にもいかん。つーか信じてもらえないだろう。


 そうだ!メール!携帯電話だ!


 慌てて部屋の中に取って返す橋場。

 くるりと方向転換すると同時にスカートが「ふわり」と丸く舞い上がる。


「…」


 なんかいちいちドキドキするな…。



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