鬼頭真琴の場合その2 01
第五章 鬼頭真琴の場合 その2
第一節
同じクラスなんだが、帰り道が一緒にならないこともある。
橋場英男は歩いていた。
この頃考え込むことが多くなっている。
そう、遂にバレてしまったのだ。しかも、ある意味一番バレて欲しくなかった相手に。
『付き合ってた彼女にお互いに性転換させ、女装させあうバトルの常習者だと知られる…かあ』
改めて文字にすると強烈だ。
とはいえ、こちらは好きでやってる訳じゃない。
中には戦いを求めて放浪してるみたいなのもいるみたいだが、こちとら求められて仕方なくだ。
それに、この間のは美夕を助けるために身体を…ほぼそのまんまの意味で…張ったのだ。
あのままだったらそれこそ「男の尊厳」も何も無くなる一歩手前だったのである。
「よっ!」
また「少年みたいな恰好」をした少女が現れた。
鬼頭真琴である。
「…何だよ」
「そんなに嫌そうな雰囲気出さないでよ」
「そういう訳じゃねーけど」
すたすた駅に向かって歩く橋場。少し遅れてついてくる真琴。
「どうだったのよ?この間の話は」
「一応何とか続いてる」
「苦労掛かるね?どお?あたしと付き合っちゃうのは?」
まだその話は続いているらしい。
「…先約あったから」
「もしも出会うのが先だったら?」
「…どうかな」
「まーたまた!本当に恰好いいわあんた」
「どうしてそんなに強い?」
単刀直入に訊いてみた。
「だから言ってんじゃん。何でか分からないけどムッチャ強くてさ」
「…ま、スポーツとか囲碁将棋だとそういうのがいるとか聞いたことあるけど…メタモルファイトもスポーツみたいなもんだから、あんたみたいなのもいるってことか」
「難しいことは分からんけど、そうなんじゃないの?」
こんな人間もいるのか。
第二節
「ときどきあんたらが羨ましくなるよ」
「…それって女がってこと?」
「いや、女のメタモルファイターがってこと。しかもあんたみたいに強ければ」
「ん~どうかなあ」
一応考え込む振りみたいなことはする真琴。
「まー男が女にされるのに比べれば女は女にされるのにリスク少ないからね。失うものが無いっていうか」
「そうだよ」
「でも、それこそこっちだって好きで女のメタモルファイターやってる訳でもないんだけどね」
それはそうだろう。
想像してみようと思ったんだが、「元から自分が女だったら」という前提が難しすぎる。しかも相手だけ変える能力だ。
女に女にされて女装させられる男…それを見ている女の自分…やっぱり分からん。
「敵がいなくてつまらんだろ」
「別にそんなことも無いよ。楽しい。色々」
「そうかな」
「囲碁将棋って言ってたけど、囲碁だって置き石するし、将棋だって駒落ちするでしょ?」
「…詳しいな…っていうか、もしかして自分でハンデつけて戦ってるのか?」
「そうだけど?」
…これはもうレベルが違う。全く。
「あんたの能力は俺と全く同じだな」
「へ?あんたもセーラーなんだ」
「それも真っ黒な冬服」
「へえ」
「生地も分厚くて裏地びっしりの」
「へー奇遇だねえ」
細かいデザインまで完全に同じなのかどうかまでは分からんが、方向性としてほぼ完全一致だ。
「随分からかわれたよ。今時セーラーかって」
「んなこと言ってもねえ。あたしだって折角ならもっとヘンテコな恰好がよかったよ。セーラーってあんまり見かけないけど、街中でも家の中でもどこでもギリギリ不自然じゃないボーダーラインじゃん?そこがつまらないよね」
「つまらないって…」
思わず失笑してしまう橋場。
「鬼頭ってズボンが多いよな」
「スカート嫌いなんだ」
「制服は?」
「うち、制服ないの。私立だから」
一応こいつも学生ではあるんだな。




