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朝原 至の場合 07


第十三節


「あ…あ…あああ…」


 目の前に自分の手をかざしてみる斎賀。ぐんぐんと縮まって行く。


「これ…お前の…」

「そそ。メタモル能力ね。ボクにだってあるってみんな忘れてるんだよね~」


 ナチュラルなボクっ子だが、萌えている場合ではない。

 確かに多くの場合は、男から同年代の女になるので体格は縮小することになる。手や指先も同様だ。しかし、これは幾らなんでも縮み過ぎだ。


 ふと振り仰いでみると、周囲の建物が巨大化している。


「…っっ!?!」


 違う!そうじゃない!自分の身体が縮んでるんだ!!


「こりゃあ綺麗に決まったね」


 遥かに上の方から澄んだ声が降ってくる。

 ショートカットのブレザーを着た美少女が冷たく見下ろしている…様に見えた。


「え…あ…ああああああっ!?」


 変化は一度に起きた。いや、気が付かなかったのかも知れない。


 脚が涼しい。


 見下ろすとスカートを履かされていた。

 いや、スカートそのものは…認めたくないが…しょっちゅう履かされていて、ぶっちゃけもう慣れ始めている。

 問題は、それが恐ろしく小ぶりなものであるということだ。


「これ…もしかして…幼稚園の…」

「年少組の制服ね。女子の」


 斎賀は幼稚園の女子生徒にされていた。



第十四節


「あ…ああ…あ…」

「続けよっか。押し相撲」


 先ほどとお互いに性別は反対になっていた…男と男だったものが、女と女になっていた…ものの、身長もまたお互いの立場を入れ替えていた。


 な、何てことだ…これまでメタモルファイトによる性別変化、服装変化は副次的な効果しか生まないと思っていた。

 それこそ、生まれてこの方十数年以上を男として生きてきて、いきなり女に性転換され、女装させられたならば心理的な動揺は大変なものだが、メタモルファイターとしてキャリアを積めば、それは些細な変化になっていくものだった。


 先日橋場の前に現れたという陽気な関西人は、お互いの服装ギミックまで使って「変身後」までに戦いのエリアを拡大する方針を取って来ていた。

 だが、それはとりもなおさず「変身」…性転換、女体化・女装化…が単なるきっかけか要素の一つでしかなくなっていたということでもある。


 だが、文字通り「変身させる」ことを「武器」として使いうる能力と言うのは存在していたのだ。


「はい定位置に立って―」

「…はい」


 しかも「押し相撲」だ。

 恐らく幼女になってしまっていても、メタモルファイターだから戦闘力は保持していることだろう。だが、押し相撲というのは力任せでは全く勝てない競技だ。


 …完璧だ。なんて狡猾…いや、緻密な作戦を立てて実行しやがるんだこいつは…。



 遥か上の方を見上げながら行わなければならず、しかも自分よりも遥かに上の技能を持つ相手との押し相撲など、勝負は見えていた。

 たちまち二本目を取られてしまう。後一本で負けだ。


 斎賀の明晰な頭脳だとハッキリ分かる。

 何をどうやっても負けだ。勝てない。

 …今回は練習試合みたいなものだったから良かったが、これがガチの真剣勝負で、もっとヤバいものが賭けられていたとしたら…大変なことになる。

 確かにメタモルファイターならば並外れた戦闘力は持っているが、メタモルファイター同士だと体格差はそのままハンディにしかならない。

 体重が全く違う相手との戦闘など考えたくも無い。パンチ力から馬力まで何もかも全く違うのだ。ボクシングがあれほどまでに細かく体重差で階級を分けているのは伊達や酔狂ではないのだ。


「ほい!」

「あっ!」


 隙をついて両手の手首から先を持って吊り上げられてしまう。


「ああああああーっ!」


 思わず幼女が泣く様な声を上げて足をじたばたさせてしまう。


「言ったよね?手首から先を持つのはありだって」


 もう完敗だった。



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