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謎の少女の場合 02


第四節


 もしも元に戻れたならば遅刻しない様にと場所を確保せんとして来てしまったが、これではどうにもならん。

 ポシェットを探る…と、なんと携帯電話が出てきた。


 …オレのだ。


 一体どういう論理になってんだこれは。全く良く分からん。

 ともかく、連絡手段が見つかったのは有り難い。


 といっても電話する訳にはいかない。声もまるで変わってしまっている。

 こういう時の為に人類の英知であるメールがあるのだ。


 分厚い手袋をしていなくて幸いだ。さっさと取り出すと大急ぎで打ち始める。


『ゴメン!どうしても外せない用が入ったんで今日のデートは中止!』


 大急ぎで送信する。


 ふう、とその場で肩を落とした。

 コスプレ美少女だけあって、アニメの中の登場人物みたいに透き通ったプラスチックみたいな可愛らしさである。

 見ようによってはそれこそ17歳の女の子が着ていてすら痛々しい衣装がギリギリ可愛らしく映る。


 すぐに携帯が振動した。

 …ものの数秒じゃないか。早いな。


 周囲の視線が明らかに集まりつつあったし、大砲みたいなカメラを首から下げた太めのチェックシャツ軍団がこちらをちらちら見ながらひそひそ話しているのが気色悪いが、構っていられない。


 メール画面を開く。


『外せない用って何?』


 ぞっとした。

 文面がシンプルな時ほど恐ろしい。


 画面から抜け出してきたみたいな美少女が眉間にしわを寄せてうんうん悩んでいる構図はなんとも異様だ。いっそこの肉体ならば魔法少女みたいなのじゃなくて、妖精のお姫様みたいなコスチュームの方が似合っているんだが、当の本人である橋場にそんなことが分かるはずもない。


 するとメール画面がかき消えて「着信中」表示になった。


 美夕からだ。



第五節


 絶体絶命だ。

 ここで出たら喋らなくてはならんが、普通に女声なのだ。どう考えても「浮気現場」そのものでこんな電話に出た日には修羅場である。


 かといってメールしてるのに電話の着信を無視するのも不自然だ。

 仕方なく受信と同時に叩き切る。


「…」


 これはあれだ。大人でも会議中に着信音を誤魔化すためにやるやつだ。


 大急ぎでメールを打ち返す。


『いまはでんわはむりあとで』


 …変換の手間も惜しい…感じになったと思うがどうか。


 一瞬の間があってまた電話が掛かってきた。


 天を仰ぐ美少女。


 その時だった。


 デコラティブに膨らんだ魔法少女のコスチュームの肩に、強めの力でボン!と手が置かれた。


「…すいません」


 いや~な予感がして衣装をなびかせながら振り返る。


 そこには青筋を立てている潮崎美夕が可愛らしいデートルックで仁王立ちしていた。



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