朝原 至の場合 04
第七節
「…何だって?」
「お兄ちゃん、メタモル・ファイターでしょ?」
余りにも屈託なく言う。
「…キミもそうなの?」
「うん」
これまで色んな対戦相手と戦ってきたが、「子供」というのは盲点だった。しかも「男の子」だ。
「今まで戦ったことは…あるよね」
「そりゃあるよ。みんなその心配するんだね」
そりゃするに決まっている。
いい年こいた者同士のメタモル・ファイトに関してはお互い覚悟の上だから構わない。
いつもつるんでる橋場や武林相手なら、相手を女の肉体に性転換させ、女子高生の制服を着せることに躊躇いは無い。
だが、年端もいかない「男の子」ということになると流石に躊躇せざるを得ない。
そんなことが倫理的に許されるのだろうか?
「大丈夫。心配いらないから」
「…でもなあ」
思わず自分がこれくらいの年だった時のことを思い出す斎賀。
そりゃ人並みに女の人の身体に興味は…余り無かった。
それよりも変身ヒーローとか怪獣、乗り物とかだ。「綺麗なお姉ちゃん」「可愛い女の子」への興味はまだ湧かなかった。
試したことは無いが、恐らくこの子相手にメタモル能力を発動したならば、「十六~十八歳の女の子」に一時的になるはずだ。つまり、現在の年齢より大幅に上昇することになる。
身長だって伸びるだろうし、身体も…だ。
「「押し相撲」しようよ」
「押し相撲?」
「そう、お互いに向かい合って立って、触っていいのは相手の掌だけ、その場を一歩でも動いたら負け」
掃除の時間などに行われる物凄くカジュアルな格闘技…スポーツである。
「三本先取。先に三本取った方の勝ち。どう?」
「…」
確かに非常に健全な勝負方法だ。
完全に最後まで行くということになったら、年端もいかない「男の子」を「女子校生の身体」に性転換させ、パンティを履かせ、ブラジャーを装着し、スリップを身にまとわせてスカートをめくったりおっぱいを揉んだりすることになってしまう。
流石にそれは問題だ。
だが、「押し相撲」なら問題は無い。
第八節
「メタモル能力はいつ使うんだ?」
「押し相撲と一緒に」
「…変身決着じゃないんだよな?」
「変身してもしてなくても押し相撲で勝った方が勝ち」
考えている斎賀。
「解除条件は?」
「別に。終わったらそれまで、ただしどっちかが三本勝って終わるまでは戻れない」
「一本目か二本目で変身しちゃってたとしても、そのまま継続ってことか」
「そーそー」
なるほど、この場合は相手にメタモル能力を掛けるのは試合中の「有利に運べる」条件の内の1つでしかないってことか。
「相手の掌以外を触ったら反則ってことだよな?」
「うん。仮にそれでその場を動いたとしてもノーカウント。反則だからメタモル状態は解除してもらう」
「前の試合から既に変身してたら?」
「そこから仕切り直しってだけ」
なるほど、面白いかも知れない。
「分かった。受けよう」
「そう来なくっちゃ。でも一つだけ条件を加えさせて」
「…なんだよ」
「普通の押し相撲は掌しか触れないけど、手首から先を掴んだりするのもありで」
「手首から先を掴む?」
「でないとボクに不利すぎるから」
…確かに、身長が倍ほども違う。「押し相撲」はほぼ同じ身長でないと成立しにくかろう。せめてある程度の年齢以上同士でないと。
「掴んでいいのは手首から先だけだな?」
「うん、腕を掴んだりしたら反則。一本取られた扱いでいいよ」
「ああ。始めよう」
手首から先ってことなら、相手が掴もうとしてきても引いてしまえばいい。余り条件は変わらない。
「もう一つだけいい?」
「今度は何だ。後から付け加え続けるのはずるいぞ」
「ゴメンゴメン。ごほうびのこと」
「ごほうび??」




